14話
結果から言うと部屋からアッサリと出られた。
それはもう拍子抜け、ってぐらいに。
なんせ窓には鉄格子だったものでどうやれば出れるのかそれはもう凄く悩んだわけ。
「ドアからでればいいじゃん」
そう言ってエリュがアッサリとドアを開くまでは。
こーいう場合、ドアにも鍵がかかっているもんなんじゃないの?
鍵かけ忘れたの? それとも人間はドアを開ける知恵すらないと?
失礼な!
仮に人間を侮っての事なのだとしたらそのおかげで出れたわけだから怒るところではないのだけども。
ムカムカしつつも私とエリュははぐれないように手を繋いで部屋からでた。
長い廊下を誰にも会わないようにゆっくりと警戒しながら歩を進める。
途中、人の気配を感じたら近くの部屋に入ってやり過ごした。
その部屋に入るのも危険だと思うけどそんな事考える余裕、今の私達にはない。
目先の危機を乗り越える事で手一杯なのだ。
幸いにもそのあたりの部屋はハゲワシさんのコレクション部屋だらけだったらしい。
つまりペットのお部屋。
最初に隠れた部屋には鳥人の部屋だった。
扉を開けた瞬間に色とりどりの羽根を持つ鳥人が一斉にこちらを見て動きをとめた。
同じ鳥人種でありながら、ハゲワシさんとは全く違う生き物のように見目麗しい鳥人達は私達には全く興味がないらしい。
すぐに私達から視線を外すとゆったりとくつろいだり羽根のお手入れをしたり。
次に隠れた部屋は虎人の部屋だった。
幸い鎖で繋がれていた為襲われずにすんだけど。
美しい虎人の女性はまさに猫なで声で私達を誘いだした。
「かわいい子達。ねえ、私、退屈しているの。一緒におしゃべりしましょうよ。ね? ほら、もっとこちらにいらっしゃいな」
微笑を浮かべた彼女の口元から鋭い牙が覗いた。
エリュが首を振り、私も頷くとさっさとその部屋を後にする。
「なによ! 待ちなさいよ! 一口ぐらい味見させてくれたっていいじゃないのよ! 耳だけでも……」
彼女の声を無視して私たちは進む。
途中、アクアリウムのような魚人の部屋を通りすぎたり、可愛らしい犬人の子供の部屋へと通り過ぎたりしつつ。
まるで何らかの力が手助けをしてくれているみたいに、意外にも私達はアッサリと外に出る扉へとたどり着く事が出来たのだ。
おかしい、こんなに簡単に出られるはずがない。
しかし。
鳥人も犬人も、鎖で繋がれた虎人以外は、部屋に鍵もなく鎖で繋がれているわけでもないにも関わらず、部屋の外に全く興味がないようだった。
今の生活に満足してるわけではないだろう無気力な瞳、だけど、外に出る程の何かを――自由を――求めるよりも尚、安定した生活に慣れてしまっている事をハゲワシさんは知っているのだろう。
鍵は必要ないのか……。
そう気づいた。
誰もが自由を求めるわけではない、帰りたい場所があるわけでもない。
危険な外よりも、ドアの中は単調だけども安全だ。
だだっぴろ庭を一応木の陰に隠れながら進む。
そして。やっと本当の『外』だ!