表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無題  作者: 莢蒾
1/2

ページ1

 日記。

 すなわち、日々の記録。日常生活で行ったこと、感じたことをしたため、形にして残しておくもの。

 東南の村『ダンダリニ』では、村で成人と認められる十三の歳の子らに、成人の証として日記を与える風習があった。

 この地にしか生息しないダンダ牛の革から表紙を作り、丈夫で破れにくい、ミナヤシの木を削いだ紙を束ねて本にする。

 日記は、代々家族間で受け継がれていくもので、男子なら父親から、女子なら母親から、親の綴り続けてきた日記を受け取る。

 親の手で、本の紐を解いて一度バラしたものに、新たに紙を重ねて再び綴じたものを子に渡すのだ。

 親はそれ以後、日記をつけることはなく、また、つけることも許されない。子が成人を迎えた時、親は日記ではなく、今度は自身の心に日々を刻むようになるのだ。

 親から子へ、そしてまたその子へ。

 そうして受け継がれていくその本は、時を重ねるごと、太く厚くなっていく。そして、それこそ、一族の歴史の重みとされている。

 しかし本は、ある一定の厚みからそれ以上増すことは無い。

 日記を綴ってきた者が死した時、その者の残したぶんの日記だけを共に棺に入れ、葬るからである。

 その行為には、歩み生きてきた日々を、その者へと還す意味合いがある。

 日記を手にした頃からを振り返り、幸せを誇り、苦しみや悲しみの経験を受け入れて、心安らかに眠れるようにと、葬儀の際には必ず行われた。

 生まれ、文字を学び、日記を手にし、日々を綴るようになり、子を産み、見守り、死して一生と向かい合う。

 それが一族の古くからの習わしであった。

 そんなこの村で、今年は四人の子らが十三を迎える。

 長老家の一人娘のリスティ。薬屋の長女パパラ。牛飼いの長男、ノドック。

 そして、村一番の腕と評される医者夫婦の末娘ーージェシカ。

 これは、成人となり、それぞれの日記を手に入れた彼女らの、日々を追う物語である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ