十八話「剣の正体とお風呂」
「おーい!大丈夫か!」
遠くから声が聞こえる。カイさんとニアさんだった。こちらにやって来る。
「大丈夫でしたか、皆さん?」
心配そうにニアさんが聞いてくる。
「あ〜はい!大丈夫でしたよ!ご覧の通り誰の怪我も無く剣も取り返せました!」
「おお、すごいな。本当に良かった剣が戻ってきて。君達も無事で。本当にありがとう」
そんなに大したことはやってないのでお礼を言われるのはアレだったがまぁーありがたく頂戴することにした。そして、俺はカイさんに取り返した剣を渡す。
「多額な依頼金を出してまで取り返したかった剣、そして、剣の内部に込められた異様な魔力、その剣には何か隠されてるんですか?」
俺はカイさんに剣を渡してずっと疑問に思っていた事を聞いた。見た目は普通なのに剣に魔力が込められている。普通の剣は魔力が込められていても使用者が意図的に解放するものだ。なのにこの剣は常に魔力を放っている様に思える。しかし、ずっと魔力を放出しているせいか少しずつ魔力は失われている様に感じる。多分、奴らもこの異様な魔力を察してこの剣を奪ったのだろう。しかし、少しずつ魔力を失っていることに気づきあっさり返したって所か。
「コレは…もう剣の魔力が失われつつあるな…覚悟を決めるしか」
カイさんが渡された剣を触りながら何かブツブツ言っている。覚悟って何の覚悟だ?俺が疑問に思っているとカイさんがニアさんにその剣を渡そうとする。
「え?えっーと…」
ニアさんはとても困っている。それはそうだ女の人なのに剣をプレゼントされているのだから…。
「頼む!受け取ってくれ!」
真剣な表情でカイさんは言う。俺たちは止めようとしたがその顔を見てそれをやめた。ニアさんも諦めてその剣を手に取る。
「まさか…剣をプレゼントされるなんて…なんか複雑だなぁ…それに重いし…」
はは。それはそうですよね。いくら鍛冶職人と言ってもわざわざ剣をプレゼントしなくても…誰もが思ったその瞬間ー。
キュイィィン!!
突如ニアさんが手にしてる剣が光り始める。
その剣は光を覆いながら魔力を放出する。無数の文字列が羅列している。それは一種の華やかなショーのようでやがてその光は集約して輝きを失う。一つの美しいものを残して。
「な、なんだったんだ」
俺たちは疑問に思っているとあることに気づく。
「あ!ニアさんの指に何かついてる!」
ティアラがそう言うので俺はニアさんの手を見る。すると、一つの輝きを放っている指輪があった。そこで俺は初めてこの状況を察した。
「あのカイ、コレってもしかして…」
「ずっと言おうと思っていたんだ…でもキッカケが無くて…。サプライズとしてこの指輪に変形する剣を作ったんだ…。」
俺は今、すごい場面に遭遇しているのかもしれない。見てるこっちがドキドキするわ!
「あの、良かったらお、俺と…」
カイさんはためて深呼吸をする。俺は心の中で頑張れ!とエールを送る。
「結婚してください!!」
ついに言ったー!!やばい心臓がバクバクするわ。返事はと、ニアさんに注目が集まる。
「は、はい…」
彼女は泣きながらそう答えた。それを聞いた瞬間ー。耳からお祝いのBGMが流れてくるような、そんな幸せムードが全開となり辺りを包んだ。
「キャ〜! キャ〜!」
返事を聞いた瞬間ティアラとエリーがキャーキャーと騒ぐ。いや、興奮するのはわかるけどお前らなぁ…
「あの、おめでとうございます。カイさん、ティアラさん」
「お、おめでとう二人とも」
ハルとクレアが早速二人にお祝いの言葉を言う。珍しくクレアも顔を赤く染めている。
「カイさん、ニアさん、本当におめでとうございます。」
俺からもお祝いの言葉を言っといた。
「いやいや、本当に皆さんのお陰です。剣を取り戻してくれてありがとう。」
「まさか、剣が結婚指輪に変わるなんて〜、本当カイってば昔から本当ロマンチストな所あるよねー。でも本当にありがとね。」
「ヒュー、ヒュー!」
ニアさんがそう言うとティアラとエリーがまた騒ぐ。まぁーこんな時ぐらいはいいのかもしれないな。
幸せムードを堪能した後俺たちは一旦カイさんの家に戻る。
*****
「にしても私達、これからどうする?」
「もう遅いし泊まって行きなさいよ、ねぇーカイ。」
「ん?あっ、そうだな。泊まっていけよ。それに泊まるなら秘湯を紹介するぞ」
「本当ですか!泊まります!てかもしかしてその秘湯肌にいいとかありますか?」
カイさんが言うとみんな秘湯にあっさり食いついた。まぁー俺もその秘湯とやらに興味はある。主に混浴かどうか。いやまぁーここ重要。俺たちはカイさんとニアさんに連れられて秘湯に行く。
*****
カポーン。 風呂に着いた。
「じゃあゆっくりしていってねー」
カイさんとニアさんはそう言って家に戻ってしまった。
「ふぅー。」 俺はゆっくりと風呂に浸かった。にしてもいい湯だなぁー。夜の星と言う景色も堪能しつつの湯は最高であった。ちなみに言うと混浴であったが俺は大きい岩石を挟んで奥の方へ追いやられてしまった。
「あ〜やっぱりハルっち大きいね〜お姉さんに見せてみなさい。」
「ちょ、やめてよエリー」
「う、みんな結構あって私、悲しい…」
「大丈夫よ、ティアラ。私も昔、小さくてからかわれたから、まだ諦める時期じゃ…」
「う〜、だよね。クレア〜、クレア〜」
「ちょ、ティアラ、抱きつかないでよ…」
と、距離はある程度あるが。結構楽しそうな声が聞こえてくる。やめて!俺を誘惑するのはやめて!俺はなんとか理性を保つが一方で覗いちゃいなよと悪魔の囁きも聞こえてくる。いっちゃいます?皆さん。
って俺は誰に聞いてんだよ!よく考えろ俺よ。ここでいかなければ永久にチャンスは巡ってこない。じゃあいつ行くのか?今でしょ!いや、古いよ!俺は自分でツッコミ初めてしまうほど冷静さを失っていた。しかし、俺も男よ。アレは男にとっての楽園。コレは行くしかない。作りましょ、俺だけのハーレムを。よし、レツゴ!! 覚悟を決めた俺はとりあえず覗きぽいんとを探す。すると、いい感じに女子達との距離も近い所に岩がある。あそこにバレないように行ければ覗きほうだいだ。俺はすぐさま潜水をしてそこの地点まで泳ぐ。
ブクブク。俺は泳いで向こうの岩石まで向かう。はずだったが、場所を見失ってしまった。いかん、コレはまずい。しかし、ここで起き上がる訳もいかない。俺は一か八か適当に泳ぐ。そしてここだ! 俺は起き上がる。
女子達の中心にいました。 テヘッ!
「キャ〜!!!」
その瞬間ー。女子達が一斉に悲鳴をあげる。
「あはは〜、覗きとはいい度胸ですね〜セナっちよ」
後ろには悪魔がいた。顔は笑ってるけど心は笑っていない。やばいコレ、詰んだ。
「この変態ー!!」
ティアラが投げつけたのが俺の顔面に直撃する。それからと言うもののひどい目にあった。最後はタオルで首を絞められる。
もう許してくれー!!!
俺は天に向かってそう叫んだ。皆の衆よ覗きダメ、ゼッタイ。 痛い目見るからまじで。
*****
それから俺たちはカイさんに家に戻る。
「ってどうしたんだ?お前、その傷?」
「ああ、カイさん、これには色々あってですねー。聞かないで下さい。」
「あっ!皆さん!帰りましたか。夕食の準備できたので、座って下さい。」
わ、忘れてたー。泊まるってことは夕食もご馳走になるんじゃないかー。くそ、風呂に続いてまたもや試練が…俺たちは言われるがままに食卓スペースに行く。
「いっただきまーす」
そう言い。覚悟を決めて食べようとする。相変わらずクレアは淡々と食べている。すると、横で食べていたカイさんが机に突っ伏す。
「う、嘘だろ?」
カイさんがそう呟く。おいおい、机に突っ伏すほどの威力(不味さ)だったのか?ちょ、まじで勘弁ですわ。するとカイさんが顔を上げて呟く。
「う、うまい。」
まじですか?俺はカイさんの言葉を信じてパクリと食べる…。 フツーに美味い。てかめっさ美味い。どんなってんだこれ?
「ごめんなさい〜。砂糖きれちゃて…だから今回の料理あんまり美味しくないかも…」
「いや、これめっちゃ美味いぞニア。もう調味料なしの方がいいと思うぞ。な?皆んな」
カイさんにそう振られて、俺たちは全力でそのことを肯定する。すると、考えを改めたのかもう、調味料を入れないとニアさんが言った。良かったねカイさん。これで美味しい料理は保障されたよ。てか、調味料入れなきゃめちゃくちゃ美味いな。俺はその後お代わりをしてしまった。
*****
夕食を食べた後、俺たちは大きい部屋に連れられてそこに布団を敷いて五人で寝ていた。
「ねぇーみんな、起きてる〜?」
「どうしたんだー?エリー」
「いやぁーなんか楽しかったなーって思ってさ〜、皆んなも思わない?」
「確かに、なんだかんだ楽しかったよね」
「うん、僕も楽しかったなぁー」
「そうね。私も楽しめたかな」
「セナっちはー?」
「あー。すげェ楽しかった」
「覗きがですか?」
「ちげーよ、ただフツーに楽しかったって意味。まさか、仲間と冒険するのがこんなに楽しいと思わなかったよ。多分、この五人だから、こんなにも楽しいのかなぁ…」
「なるほどねぇー。てかセナっち、なかなか恥ずかしいこと言うなぁ〜」
「それねぇー」
「うるせぇ、お前ら。」
「僕もセナ君の言ってることはわかるけどなぁー」
「もう、明日早く起きて街に戻るんだから寝ましょうよ。」
クレアがそう言うと皆んな寝る体制に入ってしまった。
俺はその後、寝ようとしたがなかなか寝付けなかった。今日の冒険、俺は本当に楽しかったと思えた。そして、この五人でこれからも頑張りたいと思っている。それと同時に俺はこの仲間達を失いたくないと思っていることに気がついた。大切な物を作ってしまったから。しかし、本当に平和は続くのだろうか。どうしても不安が募る。辺りは暗くてこんな時はマイナス思考になってしまう。俺は不安をかき消そうと無理やり寝た。
*****
朝食を済ませた俺たちはカイさんの家を後にしようとしていた。
「ではでは〜、カイさん、ニアさん、お世話になりました〜。」
「本当に皆さんありがとね。」
「実はもう少し鍛冶修行積んだらメイビスで鍛冶屋を開こうと思ってるんだ、その時はよろしな。ひいきするからさー」
「そうなんですか?楽しみにしときます。」
「二人ともー仲良くねー!」
「ティアラちゃん、ありがとね。皆さんもこれから、冒険頑張って下さい。」
「はい。僕達も頑張ります。」
お互いに励ましあっていると、ちょうど馬車が来た。俺たちはそれに乗り、カイさんとニアさんに最後の別れを言う。
「本当にありがとうございました!」
俺たちはギリギリまでカイさんとニアさんに見送られて俺たちは街に戻った。初のギルドクエスト。俺たちは依頼をなんとか達成することができた。
二章完結です。 三章は新展開and急展開です。 感想などなどお待ちしてます。