スザク・ルーベンスと言う人物について<スザク視点>
他キャラ視点が苦手な方ごめんなさい。結構出てきます(汗
生まれてから自分が正しく評価されたことなどなかった。
もしかしたらあったのかもしれないが、自分ではわからない。
黒髪と言うだけで全てにおいて優遇され、期待された。
だから、
イキグルシカッタ。
皇太子で黒髪、だから全てのことは、出来て当たり前。実際にやり遂げても。
さすが”皇太子”
さすが”黒髪持ち”
自分の実力として、認めて貰ったことがあるだろうか?
10歳になる前、正式な皇帝の指名があると聞いていたが、それは叶わなかった。帝位継承者二位の兄に命を狙われたからだ。毒殺で自分の代わり死んだのは仲良くしていた使用人の子ども、犯人は判明したが黒幕までは掴めなかった。“怪しい”だけでは証拠がないため表立って罪を問えない、大切な黒髪の男児の命を守るため、留学と言う形で隣国に身を潜めることが決定した。
今思えば、その判断は正しかった。
甘やかされて育って来た自分を気づくことが出来たからだ。隣国で黒髪の子はないがしろにされ、疎まれた。最初は、尊敬されないことが初めてで心地良かった。でもすぐに、辛くなった。自分を見る目が違い過ぎて。どんなことをしても、身分だけで褒めているというのがわかり、祖国とそんなに変わらない。それどころか、上辺だけの言葉や人々の陰口が酷い分、祖国の方がマシだと思えた。人の価値観で、自分というものがこんなにもあやふやにされてしまうことに、怒りさえ覚えた。
案内役と言う、優男に興味本意で聞いた自分と同じ境遇の存在。身寄りを預けている侯爵家を筆頭に子爵家に至るまで貴族の人物は調査済みだ、元々、知っていたと言えば知っていたが、実物がいると聞くと感慨深い。
「あぁ、ダリアのこと?僕の妹みたいな感じだけど…んー、普通の子だよ」
事も無げに告がれた事実に驚く。
まさかこんな身近なところに。
そして告げられた内容に。
この国では髪が黒い、それだけでいじめの対象にされてしまうのに、普通のままいられるのだろうか?
「お前が黒髪持ちか」
気になって、探してしまった。歩き回っているうちに、案内役の少年とはぐれてしまったが目的が見つかったので良しとしよう。
明らかに彼女の髪色でわかっていたが、声を聞いてみたかった。
「貴方も黒髪でしょ?」
平坦な声、ぴくりと長い睫が動く、読んでいた本から、気だるげにこちらへ視線が移り、濃いグレーの瞳が露わとなった。それだけで少したじろぐ。
黒髪というだけで良くも悪くも騒がれて生きてきた。こんなにも人に関心を持たれなかったことはない。
「それが俺のアイデンティティーだからな」
「残念ね、私もよ」
肩をすくめる彼女の髪は腰まで長い。漆黒に近い其れに感動すら、覚えた。
隠すこともなくさらけ出すのは暴挙とも言えるし、勇気にも見える。何の後ろめたさを持たない彼女に興味が湧いた。
「お前、名前は?」
「人の名前を聞く前に名乗るのが礼儀でしょ」
あぁ、確かに。ちょっと浮かれていたのかもしれない。名乗っていないことに、言われて気づく。そして指摘に頷いた。礼儀は大事だ。
「スザク・ルーベンスだ。呼び捨てで構わない」
「私はダリア・ヴィンセントよ」
「ダリア…良い名前だな」
「それはどうも」
皇帝ダリア。自分の家の庭先に咲く花だ。母もよく愛でていた。
「花の名だな。確か花言葉は、華麗」
「…正解。博識なのね」
皇帝と名のつく花のように、目鼻立ちがはっきりとした顔は、色彩がカラフルであったなら絶世の美少女として引く手あまただっただろう。いや、変なフィルターで見なければ彼女は美しい。きっと生まれてから色々あったはずだ。それなのに、人の目を恐れず話す。背筋を伸ばし、何のためらいもなく対面する堂々した様は見ていて好ましい。
「その名はお前にふさわしい」
「…そうかしら?」
いきなり馴れ馴れしくしすぎたか。首を傾げた彼女は不審を抱いているようだった。
「ダリア!」
「ガイ」
二人だけの世界に、亀裂が入る。見るからに嬉しそうな笑みを浮かべた彼女に、あぁ、そういうことか、と勘が働いた。
そんな表情をさせるアイツがずるいと思ったが、アイツ自身は気づいていない。
「そんな訳でよろしくな、ダリア」
これからのことを考えて、朗らかに笑った。久しぶりのことだ。
鬱憤とした退屈な日々は終わりを告げる。
2015/2/20
誤字訂正しました!
自分でもびっくりな間違いでした。
ご報告ありがとうございます(*´∀`)
2015/3/31
台詞を訂正しました!
ご報告、ありがとうございます(*´ω`*)