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思い出の日々―失恋の後で―


「安心しろ。悪いようにはしない」





いつものように、にやりと笑う黒の瞳に、紛れもない寂寥が含まれていて。

どうしたんだろうと気になったが、込み上げてくる切なさに言葉を失う。

初恋は実らないと言う前世の知識が有り難い、私だけではないんだと思えるから。

この世界『マジック・スクール~初恋☆物語~』の乙女ゲーム上では、サブタイトルに入っているためか、“初恋は実るもの”みたいな世論になっている。そう簡単にいかないのが恋なのにね。って言うか、ヒロインに選ばれなかった人達の初恋はどうなるんだ?制作者に問い詰めたい。

ツンとする鼻に、溢れ出てくる涙をどうにか抑えようと堪えるがそれでも無理だった。

幸いにも空いている方の右手で目元を隠し、出てしまった涙は頬に零れる前にこすり取る。本来なら、優しくしないといけない目元だが、今日だけは許して欲しい。


「まずは報告だな、お前のご両親に」

「・・・な、んの?」

「決まっているだろ?婚約の話だ」


震えそうな声を叱咤して、平静を装う。既に色々アウトだが、振り向かず歩き続ける男が騙されてくれることを願って。


「俺のものになるということは、そういうことだ」


相変わらず、俺様な台詞だ。そのくせ、苦しそうに言わないで欲しい。

きっと顔をしかめているんだろうな、と簡単に想像できた形相に、ちょっと可笑しくて笑ってしまう。


「これでうるさい大臣達も納得するだろ」

「次期皇帝陛下は、色々大変なのね」

「・・・そのうち、お前も大変になる」


あぁ、だから。そんな辛そうな声をしないで欲しい。

私にとって、最善の逃げ道だ。

それを示してくれている、自分が悪者になることで。

わかっているから、感謝は伝えない。今はまだ。


すぅ、改めて息を吸う。今度こそ、声が震えませんように。


「あら、私は平気に決まっているでしょう?未来の皇帝、スザク様がついているんですもの。それとも何、小娘一人守れないのかしら?」


目の前にある、背中に向かい、挑戦的な眼差しを向ける。


「馬鹿にするな。俺のものに誰も手出しをさせない」

「じゃあ、シン国に行っても安心ね!」




何の文句もないじゃない、そう可愛げもなく告げるとスザクは歩みを止め、振り向く。



ふっと肩の力を抜いた微笑み。



それは誰でも無い、何のしがらみを持たないスザク・ルーベンスの表情。












いつの間にか、泣き止んでいる自分がいた。



ついに過去編終了です。

色々語られない過去もありますが、時間の関係上これにて(笑)



ブクマ、感想等ありがとうございます(*´ω`*)

本日(2/25)夜、更新二回行います。

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