思い出の日々ーIFー
例えばガイが私を選んでくれたとして。
それはとても喜ばしいことで。
ずっと願っていたことで。
だからこそ、私は。
その手を掴むことは出来なかっただろう。
私は守られていた。
ガイに、ヴィンセント家に、その後ろ盾がなければ学園にも通えなかっただろうし、この歳まで生きていたのかもわからない。
私は黒髪で、忌み嫌われていて、それはこの国の常識で。
ガイが私を選んだ瞬間から、頭がおかしいと指を差され、優しい彼が悪意に満ちた瞳に晒されるのだ。
私が言われるのは良い、どんなことだって我慢できる。
でも、私のせいでガイやヴィンセント家が理不尽な評価を下されるのは耐えられない。
私を引き取った時だって、酷い噂が飛び交ったらしい。
由緒正しいヴィンセント家にいったいどれだけの迷惑をかけるのか。
考えただけで頭が痛くなる。
気にしない、と彼らは言うだろう。
でも、何より私が、私を許せない。
感謝しきれないほどの恩を受け取っておいて、仇で返すなんて…。
そんな真似は、出来ない。
だから、ガイの選択は間違っていない。
光の属性の彼女を迎えれば、侯爵家は安泰だ。
私が望んだ結果でもある。
なのに…、どうしてこんなにも心が悲鳴を上げるの?
まるで、生まれたての赤ん坊のように。
溢れ出る悲しみを涙に変えて。
初恋を終わらせるために。
あえて失恋するってわかっていても、実際失恋するのはツラいよねって話。
2015/2/24
誤字修正。
ご報告いただき、ありがとうございます(*´ω`*)
助かりますっ!