思い出の日々―失恋―<スザク視点>
教室に行けば、見慣れた後ろ姿が一つ。
窓の外を眺めている少女は何を見ているのか、自分にはわかっていた。
どうして目立つ場所を選んだのか、ガイを責めてやりたかった。
もしかして見せつけたいのか、ダリアを傷つけたいのかと。
震える小さな肩を抱きして、慰めて、愛を囁けば惚れてくれるだろうか。
我ながら自分の考えに反吐が出る、そんなチープなことをして手に入れて満足なのか?
自分が欲しいのはか弱い少女ではない、穢れを知らない高潔なダリア・ヴィンセントそのものだ。
「珍しいことがあるものだな。お前が泣くところなんて、一生見ることないと思っていたのに。」
声を掛けると勢い良く振り返る、その頬には隠し切れない涙の跡。
潤んだ瞳を真っ直ぐに、スザクに注ぐ。その表情に思わず、口角が上がる。折れないその心ごと愛でていたい。
「涙目でそんな表情をしたところで、男を煽るだけだぞ」
「…っ!」
「行こうじゃないか。黒髪のお前に、この国は生きにくい」
賭けの結果に、内心ほくそ笑む。彼女の手を掴んで、抵抗がなくてホッとした。強く、そして優しく歩き出す。
「留学など無意味だと思っていたが、これほど面白い結果になるとはな」
そうなって欲しくないと思っていたのも事実。
どうしても手に入れたかった未来なのも事実。
「安心しろ。悪いようにはしない」
言葉にならないのか、意思の強い眼差しだけで返事をされた。
泣かれるより、睨まれた方が良いスザク様。
どえむですねw