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思い出の日々―イレギュラーイベント―<スザク視点>

ブクマ、評価、感想等ありがとうございます(*´ω`*)

嬉しいですっ!




夏の暑さもやわらぎ、過ごしやすい季節になっていた。吹いてくる風は爽やかさを滲ませ、朝晩になると肌寒くなる。

渡り廊下から色付いた葉を眺めながら、ふと足を止めた。




さすがの自分も、苛めの現場を見て放っておくほどの薄情ではない。足早に、廊下から見えた現場に向かう。


「何をしているんだ?」


ただ問いかける、その言葉を責められていると感じたのか。赤髪を縦ロールにした少女がばつの悪そうな顔をした。それは周りにいた数人の少女も変わらない。


「なんでもありませんわ!皆さん、行きましょうっ」


そそくさと立ち去るのをあえて止めなかった。別に一対一ならば文句もなかったが、自分側だけ仲間を従えるのは卑怯だ。

言いたいことがあるなら、本人同士で直接言えば良いのに。まぁ、そう思ってもお嬢様にはできないか、と一人納得する。


「どうしてガイと一緒じゃないんだ?」


誰もいなくなったことを確認してから、話しかけた。

ブレザーもチェック柄のスカートも汚れておらず、どこも怪我をしていないダリアを見て胸を撫で下ろす。

人気のない裏庭に連れ込まれたのか呼び出されたのかわからないが、不用心だろう。


「サクラが生徒会室に行くから、ガイがついていったの」

「お前を置いて?」

「…えぇ」


最近のアイツはおかしい、あからさまにサクラのことを気にかける。それはまぁ、仕方のないことかもしれないが。だからと言ってダリアのことを忘れて良い理由にならない。

庶子だから気に入らないとサクラに詰め寄る人より、黒髪持ちの存在を否定する人の方が陰湿で危険なのだ。断罪をする理由がある者はどこまでも残虐になれる。自分の正義を振りかざし、正当化するのだ。何かあってからじゃ遅い。何度か忠告したが、この分だと意味がなかった。

目の前にいるダリアは、あの日・・・からどこか元気がなさそうだった。


「私は…スザクが呼んでいるって言われたから」

「なるほど」


スザク自身は理事長室に用事があったのだが、その後に二人が出掛け、珍しくダリアが一人なのをチャンスだと思った輩がいたということか。


「俺がお前を呼び出すことはないと思え。何かあるなら、俺が迎えに行くからな」


我ながらスゴい台詞だな、と思ったが取消も出来ないので無表情を貫いた。ダリアは神妙に頷く、とりあえずそれで良い、今は。


「さきほどの令嬢はエレコム家だな。ヴィンセント侯爵に言って対処してもらうと良い」

「必要ないわ」

「必要ない?」

「言いたい人には言わせとけば良いもの」

「おそらくその態度が気にくわないんだと思うぞ」


人のことを言えた義理はないが、歯牙にもかけないその様子を見て、余計にエスカレートしていくんじゃないか。特にプライドが高そうなお嬢様は、自分の言葉に影響されない存在なんていないと思っているだろう。


「そうね。でもこんなことでいちいち反応していたら、きりが無いでしょ。スザクだって同じじゃない?」

「同じじゃないさ。明らかに俺よりお前の方が狙われてるだろ」

「それは男女の差かしら?もしくは血筋の違い?私、元々は子爵家だから」

「お前は・・・差別する者を憎んだりしないのか?」


思い込みで行動して、勝手に見下してくる人達を。

誰だって日々蔑まれたら、嫌になるし、やめて欲しいと思うだろう。何故、こんなことをするんだと相手を恨むことだって、普通のことだ。

同じ黒髪持ちでも、ダリアに対しての風当たりの方が強い。それは女で、元は子爵の家の出で、それなのに侯爵家のガイと仲が良いせいだ。わかりやすい理由に、苦笑を禁じ得ないが彼女は飄々としている。


「さぁ、全く無いとは言い切れないかもしれないけど」

「けど?」






「どんなに嫌われたって、どんなに見下されたって私の価値は変わらないもの」




ふわり、と黒髪が秋風で舞う。

そうやって笑う少女は、どこまでも清々しい。

あぁ、こんなにも美しいのに、何故、皆知ろうともしないのか。


「人は弱いから、きっと自分より下の人を作りたいのよ。その気持ちはわからないでもないし」

「だからと言って、許されることではないがな」

「まぁ、ね。それもそうだけど、正論をぶつけても余計ややこしくなりそうじゃない?」

「そうだな。…なるべく一人になるな。ガイか俺といろ」

「えぇ、遠慮なくそうさせて貰うわ。スザク、ありがとう」


素直にお礼を言われるのは初めてだ、自分に向けて微笑んでいるダリアを見続けられず、歩き出した。


「気にするな」


どうせ、短い付き合いになる、なんだかんだアイツはダリアを捨て切れないだろう。今はただ浮かれているだけ。冷静になればわかる、ダリアの高貴な魂に惹かれない者などいない。

自分の価値に自信を持つことができる人はどれだけいるだろう。どんなに恵まれた環境でも、どこか懐疑的になったり、卑屈になったり、誰かを羨んだり、それが人間だと思っていた。

なのに。




誰よりも侮蔑される存在がこんなにも気高くいられるのか。




イレギュラーイベントなのはヒロインちゃんでないから。

サクラは常にガイと一緒なので、いじめられる隙がありません(笑

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