思い出の日々―とある夏の夜―
サクサク時間は過ぎています。
脳内イベントで補充をお願いします・・・!
なんだか、自信が持てなくなってきた。
私は私だと思ってきたのに、突然違う人の人生を送ってきたのではないのか?と疑問を抱く。
そして何より、怖かった。二人の邪魔をすると、もしかしたらゲームのダリア・ヴィンセントのように苛めをしたり、見下したり、するようになってしまうんじゃないか。 自分が自分で無くなってしまんじゃないか。
全てを思い出した日から、漠然とした不安が生まれ、育っていく。
でも心のどこかで、ガイはダリアを選んでくれるんじゃないかと、無条件に信じている自分がいる。
一緒にいた期間がそもそも違う。ガイが何を好きで何が嫌いで、何を見て何で泣くのか、知っているのは自分。あんな出会ったばかりの主人公に負けるわけがないと。
それと同時に、既に諦めている自分もいる。恋を知らない少年にあっさりと頬を赤くさせた、ゲームの主人公に勝てるわけがないと。
何かしなくては、このままではガイは彼女のものになってしまう。焦るのは意識だけで、身体は動かない。
「どうしたの?ダリア、具合悪い?」
「ううん、大丈夫だよ」
部屋に一人、椅子に座って窓の外を眺めていた。気づくと日が暮れていて、思ったより時間が過ぎていたらしい。
夏なので風通しをよくするために開けっ放しだった扉、そこから顔を覗かせるガイ。心配だと、真摯な瞳は告げている。懸念を否定すると、明るく笑った。
「良かった。誰かに苛められたら、ちゃんと言うんだよ」
あの日と同じ、朗らかな彼を見ていると、変なことで悩んでいるのがバカらしくなる。
「ガイったら、私もう子供じゃないのよ」
「何言っているんだよ、ヴィンセント家のお姫様に何かあってからじゃ遅いからな」
「心配症ね」
「ダリアもサクラも、本当につらいときは自分から頼ってくれないからな」
ちくり、と痛む胸は、まだ彼を慕っている証拠。それに安堵する。
ちゃんと、私は、彼が好きなのだ。
両親を失った彼女に取って、ガイは命よりも大切な存在だったのに。
それを穢された気がして。