ライヒェ
2話
部隊長と呼ばれた男はおそらく40代半ば、戦歴も豊富なのであろう。
戦場なれしている彼は今何を考えているのだろうか
恐らく得体の知れない物への恐怖だろう。
サガ達は彼が何をしてきたか知らない。
彼がどんな経験をしどんな人生を歩んできたかなど。
確実に言えることとしては
「おー、いてえ」
肺を貫通して生き延びた人間を彼は知らないだろう
サガというその人間の傷口からは確かに血が流れていた。
なのに何故。疑問という思考が彼に恐怖を植え付けていた。
「なっ………」
手はナイフを握っていた拳をゆるめ膝は震え歯は鳴り、体は後退していた。
「おら。」
その二言と共に突き刺さったナイフを引っこ抜いた。
ナイフから零れ落ちる水滴。硬く冷たいフラティスという材質の地面に跳ねるや否や、時間を巻き戻したかのように赤い水滴は彼の胸の穴に吸い込まれていった。
「イナシ、時間は」
「18秒」
先程まで刺さっていたナイフのポイント部分を人差し指と中指で挟み恐怖で腰を着いている男にグリップ部分を突き付ける。
「あんたらの上に誰がいるかしんねーが、言っときな」
半ば、男に同情の意を込めて強く言い放った。
「部下にはしっかり情報を伝えろってな。」
ほぼ18秒ジャスト、怯える男を置いて四人の体は転送された。
転送プログラムの説明を飛ばしていた。
この装置は基点となるプログラム発生装置(20cm程の大きさ。トギが腕に付けている)と発生装置から送られる命令を受け移転させる転送装置(20mm程の大きさ。今回はピンタイプを使用。アザマとイナシは服に付けてたが何故かトギはピアスの様に耳につけていたな)
の二つに分けられる。
発生装置に場所を入力すれば入力先に転送装置を装着した人間の体を分子レベルでスキャンし設定先で再構築される。
構築された後、残った体は分子破壊されバラバラに消え去る。
要はなんちゃらドアみたいなもんだ。
但し、構築に時間が掛かるため気軽には行えないのがデメリットだ。
そして転送された先は
廃墟。
フラティスという特殊な磁石で出来た国、ケーフィル。
国中は黒と僅かな緑の光で構成され人々は戦争を続ける。
そんな戦争の中出来たであろうビルの廃墟。
ガーディアンから逃げる中、俺たちはそこを拠点にした。
「サガああああああああああああああああ」
蒼髪少女は転送するやいなや抱きついてきた
「ありがと!ほんとありがと!サガかっこいい!私サガになら抱かれてもいい」
うるさいこいつ。
「あいつらも学習しないねー、ばかみたい」
ニヤけながら崩れたコンクリートに乗っかるトギ。
せせら笑いを上げながら赤髪の男は軽快に口を開けた
「サガ、どーすんのこの後。ずっと逃げてるわけにはいかないでしょ。」
逃走者の末路の形は2つ。
捕縛か革命か。そして、ゾンビ青年の選択は
「国の中心の塔ヴォルケン・クラッツァーに向かおう」
挑戦だった
「!?」「ふーん」「おっw」
「アトアロスの実験に使われている仲間を救出、そして」
息を呑み拳を握り目を見開く
「この国をひっくり返す」