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2/2

始めから私の運は0のようです。

 試験からたったの二週間後に、入学式が、ここ、ガレリア魔武高等学院で行われた。新入生代表としてあいさつをしたのは、アヴェン·グルーという、一位のCランクの奴だった。一年生ながらにCランクを持つものは少なく、そのランクに達している人は、既に二年生の三学期レベルの力を持つのに近い。

 まぁ、一位とは全く関係ない十位、クレアは、静かに瞑想をしていた。魔法があまり使えない彼女は、基本的に、気、と呼ばれるものを最大限にいかし、戦闘する。彼女の、模擬戦闘の時の爆発的なスピードは、気を操り、身体強化を行った結果である。


「これにて入学式を終わります。各生徒の皆さんは、教師の指示に従い、自分達のクラスへ移動してください。」


 ようやく、つまらない入学式から解放された。そう思ったのは、クレアだけではないだろう。なぜなら、回りを見渡しても、大半の生徒がそんな表情でいるのだから。だが、教師の中には、優しい先生もいるが、厳しい先生もいるのだ。


「早く動きなさい!! 迅速に動かなければ、この学校でやっていけませんよ!!」


 このように、口うるさい教師もいるのだ。整った顔で、眼鏡をかけている、その眼鏡の奥は、きつい目付きをしていて、全体的に美人な教師である。嫌な教師として覚えておこう、クレアは、密かにそう思っていた。




 クレア視点


 どうして、こうも周りの人たちは、人と関わるのが上手なのだろうか。

 教室に移動して間もないというのに、すでにグループと言うものができてしまっている。別に、羨ましいとか、そういう個人的な意見ではなく、客観的に見て、どう考えても人と関わるのが上手すぎる。

 だって、おかしいでしょ、知らない人と、すぐに友達になれるとか、正直あり得ない。


 むしろ、一人こそが至高······




 今日は入学式だったから、当たり前だと思うが、授業はない。だが、明日からは、本格的な授業も始まり、先頭訓練も行われる。

 そうなってしまえば、一瞬で学校での順位も決められることだろう。


 問題は、そこなのだ。


 別に、同級生にどう思われようと、私はどうだっていい。だが、教師からの評価を下げられるなど、そんなことがあれば、私の夢が少し遠くなってしまう。それだけは避けていきたいとは思っているのだが······






 そして、一日が過ぎた······


 一気に飛ばしすぎたとは思うのだが、さすがに長々と語るのは気が引ける。

 まぁ、それはおいとき、今から、模擬戦闘が行われる。一対一だ。

 すでに、魔法訓練のおかげで、同級生たちからは見下されかけている。だが、私は別に、魔法なんて使わなくても、勝てる方法を知っている。皆は、魔法が最強だと思ってるのかもしれないが、私にとってはほとんど関係ない。


「次、第十位、Eランク、クレア·ミカグラ!! 対するは······第一位、Cランク、レイジ·ストライク!!」


 いじめである。何をもって、私にこんなやつを当てるのか。

 ちなみに、この模擬戦闘、くじ引きによって対戦相手は決められており、学年合同授業として行われるのだ。残念ながら、私にはくじ運がなかったのだ。


 落ちこぼれの中の落ちこぼれ、対するは、優等生の中の優等生、さらに、見る限り彼は獣人だ、周りの人たちも、そう思ってるはずだ。なぜなら、魔法訓練の結果が、早々に広まったからである。

 だが、残念ながら、私は祖簡単に負けるわけにもいかないのだよ。私が追い求めるものは、こんなところでつまずいていて達成できるものではないのだから。


「あぁーあ、つまんねえな、せっかくのこの学校で初の戦闘訓練なのに、相手は魔法も使えない十位のEランク? やりがいがねぇなぁ」

「そう、じゃあ棄権すれば? めんどくさいならやらなければいい話じゃない、そんなことも分からないわけ?」


 あ、ついつい口調が。少々腹が立ってきたので、本音をいってしまった。

 レイブとか言うやつ、額にピキピキと青筋をたてていて、ご立腹の様子である。

 レイブがなにかを言おうとしたところで、タイミングが悪く先生が試合の合図をするところだった。


「では、これより始めたいと思います、両者、準備は大丈夫でしょうか?」

「一瞬で終わらせてやるよ、雑魚が!!」

「フッ、いつでもいい」


 レイブは、槍を短く持ち、私は腰にかけてあるミニバッグから、あるものをとりだした。そう、あれだ。


「始め!!」


 レイブは、合図がなってすぐに飛び出した。おそらく、教師も舌を巻くほどだったに違いない、そう、走れていれば、だ。彼は、走ることができなかった。なぜなら······


 既に、彼女のテリトリーの中だったからである。いつの間にか、いたるところに不規則な長さの棒がささっており、ちょうど彼が通ったところには、かなり太めの糸が張られていたのだ。

 そのせいで、出だしから彼はずっこけて恥をさらすはめになった。だが、彼に恥辱を与えるつもりがあったわけもなく、すでに彼女は次の行動へと移っていた。


 彼女は技術、いや、アビリティと呼ばれる、特殊な能力を持っている。その能力は『投影』。これまでに蓄えてきた知識が、有効に使えるアビリティだ。彼女の場合は、武器限定だが、気と魔力を利用し、知っている武器をコピーして作り出したり、武器を違う形に簡単に変形させることができる能力だ。

 彼女が作り出したのは、弓、そして、剣。

 その剣を弓に構えたとき、その剣は矢のように変形していった。


「エクス······カリヴァーン!!」


 その矢は、光のごとき速さでレイブに吸い込まれるように飛んでいった。そしてーーーーーー




 彼女の勝利は決定した。




 彼女は、入学早々下克上を果たした者として、残ら


 なかった。どうしても、下のやつらに負けたとおもいたくないやつらもいるのだ。たとえ、自分が戦っていなくても。そのせいで、彼女が脅した、や、フィールドに細工をしたなどと言う、まったくの無実だと言うのに、罪を擦り付けられたのだった······




「花に嵐とは、よくいったものね」


 夜の女子寮の屋上で、人知れず誰かがそう呟いた。






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