「側妃でいいので雇ってください」と王子に言ったら、試験合格で第1王子妃にされました!【2000文字】
「殿下、聞いてください!婚約者の浮気の情報を掴みましたわ!」
「なんで嬉しそうに報告してくるんだよ…」
殿下の仕事部屋に乗り込んで、報告書を見せた。
「あのな、幼馴染だからって先触れもなく来るなといつも言っているだろ?」
「ドロテア様ならどうぞと通してくれるんだもの」
「どうなってんだ、王城の警備は…」
「それで!浮気を理由に婚約破棄にしたいので、お力貸してくださいません?」
「俺なしでもできるだろ」
「愛人の1人や2人許してこそだのなんだの言って、丸め込まれるのがオチですわ」
私の言葉に、殿下は苦笑いした。
「殿下だって、相手のガルシア家はきな臭いと申していたではないですか」
「まあ、そうだが」
「殿下の後ろ盾があれば、あちらを有責にして婚約解消できます!」
「だからってなぁ」
「可愛い幼馴染が変なところに嫁いでもいいんですの?」
「どこが可愛いって?」
「ちなみに、ガルシア家は人身売買をしていました。しょっぴいて頂けません?」
「お前、それを先に言えっ!」
私がもう一枚の報告書を出すと、そちらはすぐに確認された。
「…どこで掴んできた」
「殿下の言ったきな臭いが気になったので、自分の足で色々と。婚約者の立場を使って、あちこち顔を出したら案外簡単に」
「はあ、相変わらずうちの諜報部に欲しい人材だよ、お前は…」
「あら、雇ってくださってもいいのですよ?」
「そんなに顔のバレている諜報員はいらん」
「ちぇっ」
殿下は報告書を読み終わると、顔を上げた。
「この件はこちらでやっておく。情報、感謝する」
「ではご褒美に、次の婚約者も紹介して頂けません?」
「お前なぁ…」
殿下に深いため息を吐かれたけれど、私はいつものように無視した。
「というか、殿下、私のこと要りませんこと?」
「…は?」
「側妃で構いませんのでどうですか?」
「…何を企んでいる」
「第2王子妃あたりでいかがです?そしたら、私は顔のバレていることを理由にどこまでも情報を取ってきますよ。謂わば、殿下専属の諜報員です、雇いません?」
「お前、就職面接に来ただろ…」
「悪くない話でしょう?」
殿下がさらに深いため息を吐いて、顔を覆った。
「…妃になるなら、情報を取ってくるだけでなく、情報を掻き回してこい」
「と言いますと?」
「婚約破棄から妃となったら、それ相応の根回しが必要だ。それが出来たら考えてやる」
「試験、ということでよろしいですか?」
「そういうことだ」
「まあ、嬉しい!では、一筆ください。口約束にはさせませんよ?」
「お前のそういうところは尊敬するよ…」
結局、ガルシア家は一家全員捕まった。
私は、目的通り婚約破棄できた。
「…宰相が『ドロテア嬢と恋仲なのか』と訊いてきたぞ。お前、何をしたんだ…?」
「あら、閣下のお耳にまで噂が届いているのでしたら、私はうまくやれたみたいですね」
「それで?」
「ひとまず元婚約者の浮気の話と、それでも別れられない可哀想な女の私ということにしました」
「お前が可哀想な女ねぇ…」
「それがある程度回ったあと、ラブロマンス小説好きの方の集まるお茶会に参加しました。そこで婚約者のことを聞かれたので、食いついてもらえることを言いました」
私がニヤリと笑うと、殿下は苦虫を潰したような顔をした、失礼な。
「『でも、殿下が表立って私を守れたら…と言ってくださったのが、心のお守りなんです。幼馴染相手にお優しい方ですよね』と」
「俺がそんなこと言うか?」
「言わないですね。あとはまあ、勝手に憶測を広げてくださったので、誰かに殿下のことを聞かれるたびに曖昧に微笑むだけにしておきました」
「それで、恋仲ねぇ」
「はい。どうですか!私、ちゃんとやりましたよね!」
「はあ、合格だ」
やりましたわ!
「では、さっさと第1王子妃をお決めになってくださいね!」
「それについては、お前にとって残念なお知らせがあるぞ」
「え?」
今度は殿下がニヤリとしたので、嫌な予感がした。
「お前を第1王子妃にと、王がお決めになった」
「…は」
「おめでとう、ドロテア」
「ちょ、ちょっと待ってください!なんで!?この前婚約破棄された女ですわよ!?」
「ガルシア家の件の情報元がお前だと報告してあった。それに加えて、お前が偽装した例の噂だな」
「え?」
「社交界ではすっかり恋仲ということになっている。これで側妃にでもしてみろ、反感を買うのが目に見えている」
「そ、そんな理由で!?」
「王家派閥の奥方たちが、熱烈に俺とドロテアを支持しているらしい。あそこを怒らせたら敵わん。王家派閥維持にお前が必要ということになった」
「い、嫌ですっ!」
「能力は、適宜隠すのも必要なことだ。今回で学べてよかったな」
「第2王子妃なら、好きなだけ働けると思ったのに!殿下、撤回してくださいよ…!」
「俺はお前との婚約は満足しているから問題ない」
「え…?」
殿下の笑みに、私は顔を引き攣らせた。
「…図りましたか?」
「さあな」
「で、殿下のバカ〜〜〜〜〜!!!!!」
了
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