アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 24話 カップケーキ
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなくあさぎの家、
……のお隣。
「できたよ〜……。」
こんがりとした甘ったるい香りを漂わせ、あさぎは食卓に大量のカップケーキを配膳した。
「やめろぉ、もう見たくないッ!」
白髪の女性は部屋の隅っこで丸まってクッションを被りカップケーキから目を背けた。
「モーラ姉が買ったんだから、責任もって食べる!」
「うへぇ……。」
「そんなに嫌なら白ちゃん先生呼んで手伝ってもらう?」
彼女はモーラ・コロル。
あさぎのお隣さんであり、
「やだやだ!?すみ姉呼んだら絶対小言言われるもん!」
白ちゃん先生こと、白久澄河の妹である。
「じゃあこっち来て一緒に食べよ?カップケーキ生活もこれで最後だから。」
「……ほんとに?」
「自分で買ったんだから在庫くらい把握しててよ……。」
「冷蔵庫怖い……。」
「じゃあもう業務用のヤツ爆買いする悪癖直したら?」
「だって安いし、ワクワクしちゃうんだもん……。」
「バイキングでお残しする子どもかっ!?」
「…………今日のアレンジ何?」
「最後なんだからそのまま食べよ?メイプルシロップとミルクでさ。」
「親の顔より食べた味なんだけど……。」
「雪さんの顔食べたの……?」
「……ごめん、嘘。」
モーラは白ちゃん先生の妹であり、雪の娘である。
「「いただきます。」」
モーラは観念して食卓に着き、あさぎとカップケーキを貪った。
「美味しいけど……流石に飽きたなあ。」
「ほんと助かる。」
「モーラ姉、1人のときどうしてたの?」
モーラの本名は白久琥珀。海の向こうで名前を変えて帰国した。
「爆買いするようになったのはこっち帰ってきてからだよ?風来坊時代はおっきい冷蔵庫なんて買えなかったし。……っていうか家なんて買ってなかったなそういや。」
「モーラ姉、よく生活できてたね……。」
「案外なんとかなるもんだよ。」
モーラが何かを思い出したかのように、カップケーキに伸ばした手を止めた。
「そう言えばあさぎ、
「ん?」
「さっき母さんのこと『雪さん』って言ってたけど、どっかで会ったの?」
「え……。」
「……その反応、あさぎまさかうちのこと喋ってないよねぇ……!?」
「あ、うん!喋ってないよ!?」
「喋ってない……ってことは、会ってはいるんだ。」
「う"……。」
「……ま、名前とうちのことさえ秘密にしてくれてれば良いけど。」
モーラは母である雪には本名の琥珀として接している。そしてこの根城のことは秘密にしている。
「いいの……?」
「あのクソババアの親友なんだし、遅かれ早かれっしょ。」
「またクソババアって……。一応雪さんの親友なんだからさ。」
「池図女学院の教頭だかなんだか知らないけど、あたしにとっちゃただのクソババアなんだわ。」
そしてモーラは教頭先生のことをクソババアと呼びめっっちゃくちゃに嫌っている。
「……最後の一個だけど、モーラ姉食べる?」
「へへ、決まってるっしょ!」
最後の一つになったカップケーキをあさぎがモーラに差し出すと、モーラは雑に手で2つに割って、ちょっとおっきい方をあさぎに手渡した。
「ゴールテープは2人で切ろ♪」
「……おっきい方押し付けた。」
「正直なあさぎにはこのちっちゃい方の片割れも進呈しよ
「いらない。」
2人は軽口をたたきながら、皿に残ったメイプルシロップをちぎったケーキで拭い取ってキレイに賞味した。
「「ごちそうさまでしたーーッ!!」」
モーラとあさぎは魂を込めてカップケーキの完食を宣言した。
「たはーっ!完食だぁ〜!!♪♪」
「もうこの光景何回目だろ……。」
「ナンに餃子にバームクーヘンに海苔巻きときてカップケーキだから……5回目だね!次はアレンジ効きそうなシュウマイあたりに
「モーラ姉……。『学習』って意味知ってる……?」
「あさぎが手伝ってくれることは学習したぜ☆」
「……。」
あさぎは視線で『もうダメだ、この人……』と訴えると、ソファーに寝転んだ。
「ああ!?あたしのソファー!?」
「床で寝れば?」
「く……っ、こうなったら腹いせに、気持ちよく寝てる横で掃除機かけてや
モーラが掃除機を取ろうと席を立つと、スマホの着信音が鳴った。
「はいモーラ姉、きっと税務署からだね。」
「ちゃんと納税しとるわっ!」
モーラはあさぎに手渡されたスマホを確認すると、
「みどりちゃんからだ!」
モーラは通話を開始した。
『突然すみませんお姉様。今、お時間大丈夫ですか?』
「おっけーおっけー!今ちょうどカップケーキ殲滅したとこだから♪」
『殲滅……?』
「お姉様呼び浸透してるなあ……。」
雪とモーラの共通の知り合いであるみどり先輩は、ボロを出さない様に(という建前で)モーラのことをお姉様呼びしている。
『あれ?もしかしてあさぎさんいるんですか?』
「フッ……、あさぎなら今わたしの隣で寝てるが?」
「フッ……、私なら今ソファーを占領しているが?」
『フフ♪ほんとに仲が良いんですね♪』
「もち!……んで、何か用?」
『用というほどのお話でもないんですけど、今週末は臨時休業するのでそのお知らせを……と思いまして。』
「そっか〜。残念だけど、知らせてくれてありがとね♪なんかあるん?」
『両親の結婚記念日なので2人で旅行に行くんです。私はお家でにゃんこのお世話です……!』
「お〜、随分と立派な……。ねえあさぎ?」
「なんで私に振るの。」
「親孝行してる?」
「白久琥珀さんよりは。」
『あー……。』
「うっわ性格悪っ!?……っていうか、みどりちゃん……?」
『それじゃあ伝えることは伝えましたので。……雪さん泣かせたら口が滑っちゃうかもしれませんので、気をつけてくださいね?お、ね、え、さ、ま♪』
通話が切れた。
「……。」
「……モーラ姉?」
「姉不孝者ぉぉお!!」
モーラ、あさぎ、みどり(3)
モーラ:くぉらぁあ愚妹ぉ!!
あさぎ:荒れてるなあ
みどり:なんですかここ?
モーラ:ここがみどりちゃんの懲罰房じゃあ!
あさぎ:ちょっとだけ付き合ってあげてください
みどり:はあ
モーラ:ったく、お姉ちゃんを揶揄いよってからに
みどり:ずっとやってみたかったんですよね、こういうの!
あさぎ:私もみどり先輩も1人っ子ですもんね
モーラ:だからといって脅迫するのはやり過ぎじゃないかいみどりちゃん!
あさぎ:こちらが弱みを握られてちょっと弱腰なモーラ姉です
モーラ:余計なこと言うんじゃないっ!
みどり:いいですねそういうの、羨ましいです
あさぎ:えっへん♪
みどり:コツとかあるんですか?
モーラ:あの〜、君たち?
あさぎ:コツはマジギレされないギリギリのラインを攻めることです……っ!
みどり:2つに割ったお焼き芋のちょっとおっきい方を取る……とかでしょうか?
あさぎ:えええくせれんとっ!
モーラ:お姉ちゃん無視しないで〜?
みどり:あさぎさんはいつもどんな感じでダル絡みしてるんですか?
あさぎ:今日みたいにソファー占領したり
みどり:ふむふむ
あさぎ:モーラ姉のお膝に座ったり
あさぎ:[画像を送信しました]
みどり:うわぁああなんですかそれ羨ましい!?
モーラ:あさぎ、肖像権って知ってる?
あさぎ:なんですかそれ?
みどり:美味しいですか?
モーラ:ぐああああ……!?
みどり:どうしましたお姉様!?
あさぎ:もう教えることは何もない
モーラ:こりゃすみ姉も大変だな……
あさぎ:白ちゃん先生にはここまでしないよ
みどり:白久先生は先生ですから
モーラ:お?こいつぁあたしが一歩リードか?
あさぎ:あっちは目上だから
みどり:先生ですから
モーラ:ちくしょうめぇ……!
みどり:ところでですけど、2人とも隣で黙ってスマホうってるんですか?
あさぎ:おなか揉まれてる
モーラ:揉んでない
みどり:お姉様……?
モーラ:信用がないのは先生じゃないからか?
あさぎ:クソババアに聞いてみたら良いんじゃない?
みどり:クソババアもきっと喜びますよ♪
モーラ:自分で言っといてなんだけど、クソババアで通じてるの怖っ
みどり:そろそろひいろさんと電話の時間なので失礼しますお姉様♪
モーラ:おーうイチャつけ若人
あさぎ:明日ひいろで遊ぼっと




