間話① 異界より その2
『”英雄”ギリックの活躍により、長い間人々を苦しめてきたダンジョンが消滅した』
この一報は、瞬く間に世界中に広まった。それこそ、通信や流通の技術が未熟なこの世界では異常なほどに早く広まった。彼らにとってはそれほど重大な情報だったのだろう。わずか数週間のうちに、この情報を知らない者はほとんどいなくなった。長年の呪縛から解き放たれたからであろうか。世界中の至る所で宴や祭りが開かれていた。
大陸北部のとある小国では英雄を讃え、解放を祝うための祭りが開かれていた。
大陸南部のとある小国の都市では解放を喜び宴をしている者たちとそんな彼らを横目に黙々と働き続ける者たちがいた。働き続ける者たちの首には無骨な首輪が付けられていた。
大陸中部の大国では、一人の老人が王城の一室で暗い笑みを浮かべていた。
海に囲まれたとある島国では、ダンジョンが消滅したとの一報に驚き、解放を喜ぶ者たちと、『仕事が無くなった』と嘆く者がいた。そして、仕事を奪われた彼らの虚しさは無辜の民へ向けられ、それでも足りなくなったら、自分たちの仕事を奪った者に向けられる。
ダンジョンの資源を巡り、争いを続けていた大陸西部の二つの大国は、争いの種がなくなり平和な状態になった。
しかし、平和とは良いことばかりではない。平和な世界では、誰もが自分の欲望を満たそうとする。それは時に犯罪行為へと繋がることがある。また、国の政府を腐敗させる賄賂などの行為の温床となることもあるだろう。
大陸中央に存在する、この世界の住人が”魔の森”と呼ぶ場所。その奥深くに住むとある人物は今日も今日とて、非道な実験を行い、嗜虐的な笑みを浮かべていた。
彼らは知らない。ダンジョンが、この世界の住人の先祖が犯した罪に対して下された神罰であると言うことを。
この世界の住人は知らない。英雄が行ったのは”消滅”ではなく”追放”であるということを。
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<世界を見守る地にて>
「準備ができたのですか? クライ様。」
「ああ。準備は完了した。あの世界の適性のある者には力を授け、適性がなくても一国のリーダーには十人の存在を教えてきた。あとは、あの者たちの努力次第だ。そちらはどうなった? ライアよ」
「こちらも《《神罰》》の許可を最高神様よりいただきました。あとはどのような罰を下すかです」
「それは重畳」
そう言って、クライは立ち去っていった。
一人となったライアは、憤怒の形相を浮かべていた。
「覚悟しなさい……。自らの罪を忘れるだけに飽き足らず、我らが下した罰から逃れ、あまつさえその罰を別の世界の者に背負わせるなんて……! そんな所業が許されるはずがないでしょう……!」
ライアは呪縛から逃れたことを喜ぶ民衆や、自分の欲望のために神罰から逃れ、今ものうのうと生きる者たちを見て、こう言った。
「束の間の幸せを、せいぜい楽しむといいわ……! 近い将来、その喜びに満ちた表情が絶望に塗りつぶされるのが楽しみだわ……!」
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近い将来、彼らは思い知ることになる。神罰から逃れ、神々の逆鱗に触れた者が辿ることになる、最悪の末路を




