第五話 な、何だってェ!!
「「な、何だってェ!!」」
二人の声が重なった。……ん?二人?
「三谷大臣! あなたは正気ですか!?」
今まで空気だった大臣の左隣に座る小太りなおじさんが叫んだ。
そういえば、もう一人いたね。すっかり忘れてたよ。
「私は至って正気ですよ。金山官房長官殿」
「私にはあなたが正気とは思えません! こんな少年にこの国の未来を背負わせるなんて言語道断ではないですか!?」
あれ? この人っていい人だったりする? 僕のことを心配してくれているのかな?
「こんなみるからに貧乏そうな一般人にそんな重役を任せられるわけがないではないですか! こんな奴がやるなら、私のような上級国民に任せるべきです!」
あ、違うわ。この人ただの嫌な人だ。
「ましてや、私には”案山子”という素晴らしいジョブが発現したのですよ!?」
え? 何そのジョブ、すっごい弱そう! 小鳥とか虫ぐらいにしか効果なさそう……
「ちなみに君の固有能力は何だったのだ?」
三谷さんが聞いた。すると、えーっと……官房長官らしい人の名前なんだっけ? 金って文字が入ってた気がするんだけど? 成金さんだっけ? が答えた
「私の固有能力は”棒立ち”です!」
「「「……」」」
成金さん以外の三人が呆気に取られた。え? 棒立ち? ただ立ってるだけってこと?
「か……金山君? 君はその能力で一体どうやってダンジョンで戦うつもりなのだ?というか、その固有能力の効果は把握しているのか?」
「何を言う! ワシのような上級国民に発現したのだぞ? 効果を調べるまでもなく、強力な効果を発揮するに決まっているではないですか!」
「た……例えばどのような効果があると考えているのだ?」
「そうですねぇ……。私の眼前の全ての敵を棒立ちさせるとかではないでしょうか?」
この人、ただのお馬鹿さん? と言うか、金山さんだったね。忘れてた。僕って結構忘れっぽいのかなぁ……。
それはそうと、そんな能力あるわけないでしょ……。僕の浅い経験上、固有能力はジョブに関係するものが多い(気がする)。神城くんの案内人であれば、”探査と作図”みたいに誰かを案内するために使えそうな固有能力が発現してたりするのだ。
そう考えると、金山さんの”案山子”と言うジョブから予想するに、本当にただ《《棒立ちするだけ》》なんじゃないかなぁ……。
敵の前で棒立ちするなんて、ただ殺されに行くようなものじゃない? 流石に、この人の能力に比べたら、僕の能力の方がSSランクに相応しいんじゃないかな……
「コホンッ! 金山くん、そこまでにしたまえ。私たちは御手洗くんにSSランクになってくれないかを聞いておるんだ。君は……なんかもう黙っておれ!」
あ、総理大臣さんに一喝を入れられて静かになった。というか、僕がここに呼ばれた理由を忘れていたよ……
「そういう訳で、御手洗くん。どうかSSランクになってはくれないだろうか。もちろんタダでとは言わない。我々政府も君に全面的に協力しよう。」
僕は少し考える。考えるのは家族のことだ。ずっと女手一つで僕と妹を育ててくれた母親。今、中学二年生になった妹の詩葉。え? 『お前妹いたのか』って? あれ? 言ってなかったっけ。僕には二つ下の妹がいるんだよ。かなり仲はいいと思うけど、高校生になって、一人暮らしを始めたから最近は会ってないけどさ……。
「SSランクになったら、僕や家族に何か不都合なことはありますか?」
「いや、特にはない。強いて言うなら、君には《《今度行われる記者会見に参加してもらうこと》》ぐらいかな?」
……ゑ? 僕も参加するの?
「……僕も記者の皆さんと同じように、皆さんの写真をパシャパシャと撮ったり、質問とかをしていればいいんですか?」
「何を言っているんだ? 君もこちら側の参加者だよ。と言うか、今度行われる記者会見のメインだよ」
「……記者さんたちの目の前で話すってことですか? 僕、人前で話すの苦手なんですけど……」
「心配はいらない。君は記者たちの質問に答えていれば大丈夫だ。」
「……答えにくい質問を記者の方にされた場合はどうすれば?」
「その時は私たちが対応しよう」
「そうですか……」
「それで、どうかね? SSランクになってくれるだろうか?」
「……残念ですが、お断りしm『君がSSランクになってくれた暁には、君の家族への援助も行おうではないか』……そう言うことなら、分かりました。その話をお受けします」
「本当か? ありがとう! 御手洗くん!」
「その代わり、家族への援助は絶対に忘れないでくださいよ?」
「分かっているよ。それでは、今日の会議は終了だ! 記者会見の日程については、追って連絡するからね。それでは、記者会見の時に会おう。御手洗くん。天野、彼を送っていってやりなさい」
「承知しました。行きましょうか、御手洗さん」
「……はい」
そう言って、僕は再び学校に戻るのだった。近いうちにやってくる『記者会見』に怯えながら。
よろしければ、評価などをお願いします




