プロローグ① 泡沫となった青春
初めまして。見つけていただきありがとうございます! 拙い部分もあると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
<Side:奏真>
幼い頃から嫌がらせを受けてきた。この”御手洗御手洗”という苗字のせいで、小学校では同じクラスの男子たちに『トイレマン』というあだ名をつけられ、笑われていた。もちろんいい気分ではなかった。でも、暴力とかではなかったし、小学生の身分では苗字を変えることも難しいから、必死に耐えていた。
あだ名以外は楽しいと思える学校生活を送っていた。しかし、地元の中学校に進学し、中学生になってからは状況が変わった。机や私物に落書きされるようになったのだ。落書きされていたのは『トイレマン』。「コイツらいつまで小学校の頃のあだ名でバカにするんだ……」なんてことを厨二病を発症し、黒歴史量産機となっていた俺も考えた。いや、当時の俺は『フ……堕天使の生まれ変わりである俺と直接戦うことが怖いのか……雑魚どもめ……』なんてことを考えていた。俺の小・中学校時代は二重の意味で黒いものだった。
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月日は流れ、厨二病も完治した俺は、この春からこの私立夢島高校に入学する。この高校は優秀な生徒が多く集まる進学校だ。なんでいじめられていることにも気づけない黒歴史量産機がこんなレベルの高い高校に入学しているのかって? それには海よりも深い理由がある。
厨二病から目覚めた俺は、改めて小学校・中学校での生活を振り返っているうちに、『俺、いじめられてたのでは?』という真理にたどり着いた。俺は、<いじめから逃げたい>という思いと、<黒歴史から逃げたい>という思いが混ざった複雑な思いを燃料として、狂ったように高校受験の勉強に取り組み、地元から遠く離れたこの優秀高校の合格を勝ち取ったのだ!
そんなことを考えながら、入学式の恒例行事であるお偉いさんたちのありがたーーいお話を眠りの神をビンタで排除しつつ聞いていた。
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<Side:天の声>
突然だが、彼の紹介をしよう。眠りの神と格闘技の王座争奪戦の如く激しい格闘をしている彼の名は、御手洗奏真。若干オタク要素が入っている苗字が少し珍しいだけの普通の高校生である。
ところで、みんなは高校生と聞いてどんなことを思い浮かべるのだろうか? 彼が思い描いたのはただ一つ、”青春”である。新しい友達、厳しくも楽しい部活動、思わず砂糖を生成できてしまいそうなラブコメなど、高校生活の青春要素には枚挙にいとまがない。彼はそんな夢を抱きつつ、高校生となった。しかし、彼の純粋な思いは泡沫と化してしまうことを結局眠りの神を排除しきれなくなった彼は、知る由もなかったのだった。
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<Side:奏真>
いつの間にか入学式も終わり、俺は現在、クラス最初のホームルームに参加していた。クラス最初のホームルームといえば? そう、自己紹介だ。この自己紹介でどのような高校生活を送ることになるのかが決まると言っても過言ではない。(過言)
この自己紹介をどのようにするかは中学校最後の春休み、いや、高校の受験勉強を始めた時から考えていた!諸君、楽しみにしておくといい!
俺の番がやってきた。
「み……御手洗……奏真です……。よろしくお願いします……」
笑いたければ笑え。さっきからずっと心の中でしか話していなかったから勘づいた人もいるかもしれないが、俺、いや、取り繕うのはやめよう。僕は陰キャである。周りのクラスメイトも『それだけ?』とでも言いたそうな目で僕を見ている。この時、僕は察した。クラスメイトに『コイツは陰キャ』と認識されたことを。高校デビューには失敗したことを。
それからは、平和な高校生活を送っていた。僕の黒歴史に追加されそうなホームルームから三ヶ月が経った。幸いにも苗字のことをいじられることもなかった。やはり優秀な人が多いといじめとかも少なくなるのだろうか。もう一つ幸せなことがあった。なんと僕に、友人と呼べる存在ができたのだ!
「よっ、御手洗。今日もしっかり陰キャしてんな」
「あ、神城くん。おはよう、今日も陽キャだね」
若干失礼な物言いをしてくる彼が僕にできた友人と呼べる存在だ。
彼の名前は神城優馬。スポーツ万能な細マッチョの金髪碧目のイケメンだ。運動があまり得意ではない僕は、彼になんでそんなに運動ができるのか聞いてみたことがある。彼曰く、『なんかできた』とのことだ。チクショウ!
改めて考えてみても、僕のようなフツメンが彼と仲良くなることができたのか不思議だ。いつものように会話をしながら歩き、いつものように入室完了時刻の五分ほど前に教室に到着した。担任の鈴木先生の話を聞いていると、小さな揺れを感じた。まあ、大きいわけではないから気にしないでいると、小さな揺れの数分後、今まで感じたことのないような凄まじい揺れを感じた。教室中がパニックになっている。泣きだす者や逃げ出そうとする者もいた。揺れは五分程度で収まったが、先生もパニック状態のようで、黒板消しを耳に当てながら、「電話が通じない!」と叫んでいた。ふと外を見ると、そこには自分の目を疑うような光景が広がっていた。
「え……何、あれ……」僕の口から思わず言葉がもれた。
そんな僕の声を聞いたクラスメイトたちが外を見て、僕と同じように絶句していた。そこには都心のビル群の中に謎の巨大な建造物が聳え立っていたのだ。ソレは塔のような形をしている。所々がひび割れ、蔦が生い茂る様子は、まるで遺跡のようで、塔の頂点は視認できないほどの高さだった。あまりに非現実的な光景を前に誰もが声を発せないでいた。静寂に包まれた教室の中で、誰かの声が嫌に響いた。
「まさか……ダンジョン?」
その声が僕の耳に届き、脳に到達した時、現実逃避のためか、僕は思わずこんなことを考えてしまった。
『ああ……僕の青春は泡沫になったんだな……』と。
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