第七ラウンド カワイイが正義かキレイが正義か論争
今日から三連休。先日、別荘の話なんてしたもんだから、嫁もあこがれはあったらしく、せめて別荘気分を味わおうということで、河口湖の貸別荘に旅行に行くことになった。ここは1棟丸々貸し切りにしてくれて、フィンランド製の木造コテージに個室露天風呂付と、この界隈でも人気のコテージだ。
ログコテージの玄関前ではハンモックがかかり、そこでBBQもできるようになっている。15時のチェックインを済ませると、一端に荷物を置いて近くのショッピングモールへ買い出しに出かけた。BBQの食材のほか、お酒やお菓子も買い込んで車に積み込んだが、
「買い過ぎじゃないか?」
「いいじゃない。たまの旅行だし、クーラーボックス持ってきたから、余ったら持って帰るわよ。」
いつになく嫁はニコニコしながら荷物をまとめる。こういう無邪気な姿を見るとかわいいものだ。嫁は誰もが認める童顔美人だ。昔から顔立ちは変わらないし、何だったら結婚前に見せてもらった幼稚園の頃の写真。その頃から何ら変わってないとさえ言える。
「どうしたの?」
「いや、今日もカワイイなと思ってさ。」
口にしてからしまったと思った。途端に嫁は不機嫌そうな表情になり、さっさとの助手席へ乗り込んでしまった。そう、嫁にカワイイは禁句なのである。昔から童顔でかわいらしいといわれ続けた嫁は、『キレイな大人の女性』に強いあこがれとこだわりを持つ。『カワイイ』というのは本人曰く、
「犬でも猫でも赤ちゃんでもカワイイって使うでしょ。私はキレイがいいの。」
だそうだ。特に30歳を超えたあたりからそのこだわりが激化してきたような気がしている。私的にはカワイイは誉め言葉のつもりなのだが、本人にしてみればそうではないらしい。
「カワイイじゃないもん。」
エンジンをかけた途端、嫁がボソッとつぶやいた。う、怖い。。。
「そういうなよ。カワイイは正義だろ? 誉め言葉なんだけどなぁ。」
「誉め言葉になってない。何度も言わせるな、私はキレイがいいの!」
「はいはい。キレイキレイ。」
「石鹸のCMじゃな〜い!」
カワイイは正義だと思うんだがなぁ。嫁が理想とする女優などの名前を聞くと、申し訳ないが嫁の見た目とは正反対で対局なお歴々。
「美人ってことには変わりないんだから、機嫌よくなってよ。」
「え? 美人??」
「ああ、美人だと思ってるよ?」
「うふふ。」
ああ、単純だなぁ。そういうところがカワイイというのだろうが、せっかく期限がよくなってきたようだったのでぐっとこらえた。
個室温泉に入ってBBQで散々飲み食いして、夜は二階の寝室で夜空を見上げる。このコテージの名物で、寝ながら天井の窓からの夜空を堪能することができる。今夜はよく晴れているらしい。星がとてもきれいだった。
「明日は富士山見に行ってから帰ろうか。なんだったら来年は登ってみるか?」
「え、絶対やだ。富士山は見るもので登るものではないでしょ。」
「ははは。」
嫁は何にしても出不精で、身体を使うことを嫌う。今日だって、本当は食事が用意されているところを希望していたが、こういうコテージにも泊まってみたいというので、いろいろ提案して決まったのだ。結果、BBQはそれほど手間がかからないのでいいらしい。好みの差がいまだによくわからない。
「まぁ、なんにせよさ。よくもまぁ、これだけ好みが合わないのに、25年も連れ添ってくれてありがとな。」
「それはこちらこそだよ。」
「次は金婚式か?」
「車で遠出は危ないから電車ね。」
凸凹した二人だが、いや、凸凹だからこそ、かみ合うときはがっちりはまるのかもしれない。キレイでもカワイイでもいい。このまま健康で仲良く二人で歩んでいければいいと思った。
それは夜空に星々輝く夜の出来事だった。
第七ラウンド、相思相愛の為に引き分け。
1勝2敗4分けでけっきょく嫁には敵わなかったとさ。。。。
嫁と私の不毛な戦争 終わり
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今年は銀婚式でしたが、
身内に不幸があったために計画していた旅行もいけませんでした。
http://www.kashibesso.com/
今回ご紹介したコテージです。
フィンランド製の木製コテージに、
個別の露天風呂、そしてBBQ、ゆっくりすごせる人気コテージです。
河口湖方面行かれる方は是非チェックしてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次回作でまたお会いしましょう。
他の作品もぜひよろしくお願いいたします。
2024年07月16日
水野忠