第六ラウンド 別荘か旅行か
車も決まったことだし、どこか旅行でも行きたいな。そんなことを考えながらネットサーフィンをしていると、
「お、旅行か?」
上司が声をかけてきた。
「実は車の調子が悪くて買い替えたんです。嫁と休みが合えば遊びに行こうかなと思いまして。」
「いいねぇ。私もしばらく出かけてないから、今度の連休は別荘にでも行こうかな。」
「え? 課長、別荘なんてお持ちなんですか?」
驚いて聞き直すと、課長は笑いながらあるサイトを教えてくれた。
「新しいものはあまりないんだが、今は格安の別荘が結構あるんだよ。好みはあるかもしれないが、誰に気兼ねすることなくBBQしたり、ゆっくりした時間が過ごせるから楽しいもんだよ。」
なんでも、バブル期の世代が購入した別荘地が、今は高齢化で手放して格安で販売することがあるそうで、ちょっと見たものでもせいぜい数百万、築45年の1LDKタイプなんか200万で売りに出ている。もちろん共益費とか温泉使用料とか毎月ランニングでかかるものはあるが、それにしても安い。
その日の夜、さっそく嫁にその話をしてみた。
「え、やだ。無理。」
「なんでだよ。」
「だって考えてみなよ。年に何回行くのよ。その1回2回のために毎月使いもしない温泉使用料払って、固定資産税払って、もったいないじゃない。それに、別荘持ったらそこしか行けなくなるでしょ? 私は旅行に行くんならあっちこっち行ってみたいの。」
「・・・一理、ある。」
ウソ。全面降伏です。おっしゃる通りですね。確かに別荘持ったらそこしか行かなくなるし、頻繁に行かなければ温泉使用料も固定資産税もかえって高く付くか。それに、食事なんかは自分で作らなきゃいけないし、旅館とかのご馳走レベルは無理なわけで、それを考えたら別荘を持つという考えは軽率だった。
「まぁ。定年後にたまにゆっくりしに行くってんならいいかもしれないけどね。」
「ははは。」
「別荘よりも自宅リフォームの方が先でしょ。」
今現在築40年だと、定年する頃には築60年か。かえって修繕費用の方が高くなっちゃうな。200万で購入してリフォームにそれ以上かかったらもったいない話だ。
戸建て住まいの私たちは、別荘よりも先にそろそろ外壁や水回りなどのリフォームをするという目標がある。いや、わかってはいたんだけど、自宅を購入して別荘を持つ。なんだかすごくリッチでセレブな感じがするじゃない? 男の夢なんだよ。そういうの・・・。
第六ラウンド、正論パンチラッシュでTKO負け
これで1勝2敗3分けで嫁がリード。
最終ラウンドに続く。