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6・嵐呼ぶ炎帝、爆誕 前編


 




最大望遠でカメラのシャッターが切られる。

 

興奮を隠さず紅潮した顔で写真を撮り続けるエリーの目には最早周囲の様子など入らない。窓越しで少しでもいい角度から撮れるよう、なんだか窓枠にへばりつくような、奇天烈な体勢で撮影を行っている。見掛けたスタッフは全員ドン引きしていた。

 

素晴らしい、実に素晴らしいと彼女は休む間もなくシャッターを切り続ける。動画などとはまた違う決定的瞬間、その一瞬を切り取る事に全てを賭ける彼女にとって、この場面を逃すことは即ち死であると、そう覚悟を抱かせるほどの光景が展開している。ならば格好など気にしない。気にしている場合ではない。

何しろ目の前に展開していたのはヒロイックサーガもかくやと思われるような群雄乱舞。その最中に、満を持して現れたのが噂の“かの人物”となれば嫌が応にも盛り上がらずにはいられないだろうと、彼女は信じて疑わなかった。


「さあ、効かせてください轟かせてください魅せてください! この戦場に、この地球ほしに、この世界に! 貴女という存在を高らかに!!」


 




たなびく金髪に変わりはない。

 

しかしその姿は目に見えて変わっていた。

 

萬ほどではないが以前より伸びた背丈。

幼さを残した肢体は、ハイティーンに相応しい若さと色香を兼ね備えた優美な曲線を描くものへと変化している。

 

一見別人かとも疑う様相であったが、その不敵な笑み、その瞳の光。何よりその全身から放たれる気迫と気配が語っていた。間違いなくこの女は――

 

天地堂 蘭であると。

 

しん、と場が静まりかえる。

戦場の真ん中とは思えないほどの沈黙の後、真っ先に反応したブレイブ甲板上の面々が取った行動は……。


『なまんだぶなまんだぶなまんだぶ……』

「復帰直に超失礼ですわね皆! このこう、結構自慢の脚線美が見えませんの!?」

 

即座に色々なモノを台無しにしまくった。


「OK良い度胸ですわ問答無用に給料さっ引きコースですわね飢えて死にくさりなさい」

『いえすまむ全面的に平謝りしますから勘弁して下さい』

 

微妙にノリが良くなってはいるようだが、この反応は間違いなく天地堂 蘭本人に間違いない。それを確認したゼンは、恐る恐る通信回線を開いた。


「あの~、司令? ご無事で何よりって言うか……“なんで生きてるの”?」

「あなたもですかつまりこれはただ働き承認コースでOKという事ですわね?」

「いえそういう事とちがくて」

 

じと目で睨む蘭に対してぱたぱたと手を振り、意図を違えるなと伝える。


「アンタ最小限のスタッフと居残ってグランノアごと海の無屑になったはずでしょうが。“一体どうやって生き延びて今まで何やってたんですか”」

 

その台詞にきょとんと目を丸くした蘭は、一瞬の溜めの後「おお」と手を叩き、そしてにっこり笑ってこう宣った。


「海の藻屑なんて与太話どこから聞かれたのかしら? わたくしたち“グランノアが沈んだとしか情報を流通させていないはず”ですわよ?」

『……はい?』

 

話を聞いていたほぼ全員が目を点にする。じんわりと蘭が言った言葉の意味が染み渡り、理解を得る。その心境を代表するかのように、表情をなくしたゼンは問うた。


「え~とその、つまり我々を謀った、と?」

「敵を騙すために味方を陥れる。基本ですわね」

 

えらそうに成長した胸を張る蘭の行動からやや遅れて――


『なんですとおおお!?』

 

――悲鳴のような怒号が一斉に上がる。

そんな皆の驚愕を意にも介さず、えらそうな態度のまま蘭は言う。


「色々あって表沙汰にできない行動をする必要がありましたもの、情報を隠蔽するには良い手段でしたわ。大体なんのために微妙な状況の中“チームインペリアルの修行なんていう行動が許可された”と思っていますか」

 

そんな腹があったのかと呆れるやら何やらのチームインペリアル。全体的に勘が鋭い彼らがそのままGOTUIで行動していたのであれば、まず間違いなくグランノアの真相に気付く。そこで情報を外に漏らすようなヘマをうつ彼らではないが、万が一と言うことも考えられたのだろう。修行という名目は丁度渡りに船だったわけだ。


「……って事はあれかい、あんのはっちゃけツインズも知っとったっちゅう事やな」

 

良くも揃って謀ってくれたとモニター越しに二人をじと目で見る弦。対する二人はどっかそっぽ向いて口笛なんか吹いてやがる。殊勝に見える態度を装っていたのか全然察する事ができなかった。大した役者である。


「ん? あれ? ちょっと待ってもしかして、“萬も知ってた”わけ?」

 

はたと気付いて鈴は疑問を口にする。その問いに萬はあっさりと応えた。


「ん? 当然だろう? 帰ってきたその時から知ってたぞ?」

『なにい!?』

 

再びの驚愕に、コイツらホントに気付いてなかったんだなと、呆れた思いで溜息を吐きつつ萬が言った。


「あのな、オレたちは擬似的にリンゲージドライブをでっち上げたわけだが、その時にノルンのバックアップを受けてリンクをつなぎ、今でも接続したままなんだぞ?」

 

そうして彼は、こんこんと自身のこめかみあたりを指でつつき、ニヤリと笑った。


「で、その“リンクしてるノルンってのは、一体どこにある?”」

『あ』

 

やっと皆合点がいったようだ。ノルンタイプの人工精霊憑依型超級人工知能は、GOTUIの要所に設置されているが、萬とリンクしていたのは一基しかない。

グランノアのものだ。

 

つまり――


『――グランノアは!』

 

希望を含んだ皆の声に、蘭は頷く。そして彼女は大きく両腕を広げ、おごそかとも言える声で謳うように言う。


「お見せしましょう」

 

声が響くと同時に、鏡面のごとく静まりかえっていた海面が盛り上がり――

 

爆発した。

否、爆発するような勢いで何かが浮上してきたのだ。

 

薄汚れ、ぼろぼろの外殻。


満身創痍の幽鬼がごとき姿。

 

亡霊を思わせるその姿に反して、確かな存在感とどこかしら遺跡じみた神秘的な威圧感をはなつそれは、間違いなく失われたはずのグランノア。

それだけならば、ただ浮上してきただけだ。当然ながらそれだけでは終わらない。終わるはずがない。満身創痍に見えるその頂点で、蘭は高らかに世界に響かせる。


「全拠点、外殻排除シェルパージ。さあ魅せなさい、その真の姿を!」

 

ばきりと、グランノアを含めた全ての拠点の外部装甲に亀裂が入る。同時にその巨体がゆっくりと海面から空中へと浮き上がっていく。

 

崩れ落ちていく外殻の中から現れるのは白亜の装甲。広大な結界の中、余分なものを削ぎ落としていくグランノアを中核として、移動拠点群は寄り集まっていった。

 

それはまるで巨大なパズル。重々しく移動し、複雑怪奇に組み合わさり、ゆっくりと、だが確実に一つの形を作り上げる。

 

現れるのは巨大と言うのも陳腐な、全長50㎞を超える、幅広の剣を思わせる姿をした白亜の艦船。

 

だれもが――TEIOWに突っかかっていってはさっくり落されている敵陣以外は――呆気に取られる中、その超巨大戦艦の頂点に立つ女は、にやりと笑ってその名を口にした。


「これこそが新たなるGOTUIの力。切り札が一つ。対星系外勢力攻略用超級拠点母艦【トゥール・グランノア】!」

 

常識外にして圧倒的。問答無用の威圧感と説得力。はっきり言ってスペースコロニーよりもでかいその姿は、その場に存在する敵も味方もひっくるめて度肝を抜くには十分であった。

数少ない例外は、前々からその存在を知らされていた留之姉妹と幾人かのスタッフ。そしてこの男。


「くっ……」

 

数多の敵を捌きながら萬は笑う。


「コイツを組み上げるためだけに半年も雲隠れしていたわけじゃああるまい? まだ“とっておき”があるんだろ?」

 

もう何があっても驚かねーぞと、萬の言葉を聞いた人間は半ば考えることを放棄した。まあ度肝を抜かれっぱなしなのだ、そろそろ神経が麻痺してきてもおかしくない。そんな皆をおいてけぼりにする形で、巨大戦艦トゥール・グランノアの頂点に立つ蘭はくすりと笑みを浮かべてみせる。


「まあ、せっかちですわね。久方ぶりの会話を愉しむ余裕もいただけないのかしら? ……ふふ、でもまあ折角ですもの、出し惜しみなしで行きましょうか」

 

そう言って彼女は、懐から何かを取りだして左腕に装着する。

それは黄金の小手。TEIOW乗りのそれと同じ、しかし見たことのないエントリーギア。


「紹介いたしますわ。わたくしの相棒、【ウォーロック】です」

「When beginning、everybody」

 

他の人工知能とは違う、まだどこか機械的な雰囲気を残す言葉。それでも間違いなく確かな意志を感じさせる。

エントリーギアに包まれた左腕を一気に払う蘭。その身体を、瞬時に金色を基調としたTEIOWタイプのパイロットスーツが包んだ。

フィッティングを確かめるように体を動かし、頷く。そうしてから蘭は、相棒に確認を取った。


「さてウォーロック、準備はよろしくて?」

「Yes mam。Call now and your power 」

 

不敵な笑みを浮かべた彼女は、高く左腕を掲げる。甲の部分にはめ込まれた宝珠が輝き術式が発動。蘭の背後に巨大な召喚門が浮かび上がる。


「来なさい、【ストームフェニックス】!」

 

轟、と風が唸った。

 

召喚門からゆっくりと姿を現すのは、一体の大型戦闘機のごときシルエット。

黄金の装甲、巨大な翼。鋭角的なデザインのそれは、非人型の機動兵器。それは正しく、黄金の鳳凰。

 

天地堂 蘭専用特殊機動兵器、ストームフェニックス。

 

たんっ、と軽く跳躍。鳥類であれば胸元に当たる部分にあるコクピットへと、その身体は吸い込まれる。その内部は通常の機動兵器とは全く様相が違った。シートをぐるりと囲むように配置されたキーボードとタッチパネル。パイプオルガンの演奏席を思わせるそこに収まった蘭は、両手を左右のキーボードに奔らせ謳うように咆吼する。


「GOTUI特務機動旅団司令、天地堂 蘭。参りますわよ!」

「The armed all start, output is the maximum. Now let's dance!」


 









後にエリー・ケントは記する。

 

実に馬鹿馬鹿しく、実に趣味的で、実に現実離れしたその情景は――

 

確かに人類の勝利を確信させるものであったと。

 

もっとも現状で浮き足立っている彼女はそんな言葉すら浮かぶ余裕はない。

ただひたすらに直感だけでシャッターを切る機械。そういった存在に成り下がっていた。

彼女にとって、目の前の光景は自身が人間であったことも忘れさせる、それほどに魅力のあるものだったのだろう。

 

しかし彼女は知らない。

 

さらにこの先、もっと度肝を抜くような光景が待ち構えている事など。


「ふぬっ、ふぬぐうわああ!」

 

窓枠に、奇天烈で世界格闘チャンピオンな体勢で貼り付きシャッターを切っている場合じゃないのだ。

いや本当に。


 









蘭という核を得たストームフェニックスは、瞬時にして天高い位置へと昇る。

 

戦場全てを俯瞰する位置から、ここに一撃を叩き込めばというポイントを大まかに割り出す。即座に術式を起動、重複。一斉にそれを解き放った。


「轟け我が魂の咆吼! 龍吼破、オーバーキルシュート!」

 

どう、と天が震える。

 

要塞主砲クラスの法撃が降り注ぎ、前線をかき乱す。ほとんどルーチンワークとなった掃討を繰り返しているTEIOW乗り達チームインペリアルにとっては面倒に対する手助けでしかなかったが、相対している敵陣にとってはたまったものではない。無造作に数を減らされていく事に拍車をかけられ、戦意そののものをがりがりと削られていくある種の拷問に等しかった。

かといって最早逃げられる状況でもない。逃げようにも離脱経路全てに対して降り注ぐ打撃は、敵陣を釘付けにする。


「は……派手だ」

 

完全にやることのなくなったブレイブ防衛組は、その光景を唖然と見詰めるしかない。 

純粋なる魔道の力。バンカイザーも十分に派手ではあるが、見た目のインパクトはこちらの方が上だった。


「あれって……前に司令がぶっ放していたヤツ、だよね」

「ああ、確か専用のでっかい杖使ってたな」

 

目ざとい幾人かは気付く。あの機動兵器、ただの専用機ではない。


「なるほどな……そいつはドラグンファングと同じ、“グランノアから直接エネルギーを供給されている魔道兵器”か」

「ご名答♪」

 

萬の言葉に上機嫌で応える蘭。つまりはこの機体、機動兵器の姿をした“杖”なのだ。蘭の能力を最大限に引き出し、なおかつ巨大戦艦と化したグランノアから多量のエネルギーを受け取る事でその能力を絶大なまでに引き上げる、蘭にしか使いこなせない兵器。

たしかにとんでもない、そして凄まじい性能を持つ兵器ではある。しかし――


「――とっておきにしちゃあ、ちょいとインパクトに欠けるな」

「あら、“その先”まで言わせますの? そしてやらせますの?」

 

不敵な笑みをかわして、意味深な会話をする二人。

これ以上まだなにかあんのかよ。もうお腹一杯で呆れ返るしかない面々の前で、大分数の減った敵を引っかき回しながら、もう二人だけにしか分からない領域の会話を繰り広げる萬達だった。


「なんか見覚えのないプログラムが追加されてたんだが、このためなんだろ?」

「さすが目ざといですわね。一応コードを解放するまで迷彩されているはずだったのですけれど。ジェスター?」

「己の身体のことだからな、真っ先に確認するわ。して、“これ”は使えるのか司令」

「今使うというのであれば、ぶっつけ本番ですから保証はしませんわよ?」

 

皮肉げに言う蘭であったが、その相方は全ての不安を消し飛ばすようにきっぱりと告げる。


「No, and it succeeds surely if it is us. ……Though it is not well-grounded」

 

どこか澄ましたようなふうで言ってのけるウォーロックの言葉に、一瞬きょとんと目を合わせてから吹き出す二人と人工知能。


「ははっ、流石はお前の“妹”だなジェスター。躊躇なく言いやがったぞ」

「しかり、よくぞ言った! そうでなければ面白くない!」

「I am glad to praise. Elder sister」

「揃いも揃って酔狂ですわね。わたくしもですけれど」

「だったら問題ねえだろ。イカれた連中がイカれたダンスを踊るのは至極当然ってヤツさ! ならせいぜい派手にやろうぜ!」

「応さ! 状況一時放棄、離脱! バーストモードリセット! ストームフェニックスとのリンク、オンライン! 同調開始!」

 

いきなりバーストモードを解除し、その場から離脱するバンカイザー。行く先は、天空に悠々と構えるストームフェニックスの元。

 

蘭の両手がキーボードの上を目にも止まらぬ速度で奔る。

浮かび上がる3Dフォログラムのサブモニターの群れに、次々と情報が流れ、システムが解放されていく。


「The tune is normal. There is no problem at all the distances. After the territory is secured, the control is transferred to the elder sister」

「任された。範囲確定、全行程想定完了、誤差範囲コンマ0.07、問題はなし! あっても叩き潰す! 萬、こちらはいいぞ!」

「応よ! 全セーフティリバース! “蘭”! コード解放を!」

 

この場で初めて萬から名を呼ばれた蘭は、ほんの一瞬目を輝かせた後その輝きを鋭さに変え、最後のコマンドをキーボードに叩き込む。






「全システム起動! コード……【覇道合体】!!」

 





最後にたァんと、Enterキーが叩かれる。その瞬間、浮かび上がっていたサブモニター全てが、GOのサインで埋め尽くされた。


「The territory is developed!」

 

ウォーロックが高らかに宣言すると同時に、ストームフェニックスを中心に嵐が巻き起こる。視覚を、いや空間すらランダムに歪ませるその現象に心底心当たりがある弦が、驚愕しながらも納得するという器用な声を上げた。


「ランドリーテリトリーやないかいそれ! なるほどやりよるな!」

 

本来であれば龍脈と同調した莫大な気と重力波によって展開されるはずのそれを、トゥール・グランノアという常識外の出力を誇る巨大戦艦から供給されるエネルギーを魔力変換し補って擬似的に展開する。根本そのものは違うが、結果的に展開されるフィールドは同質のもの。一直線に駆け寄ったバンカイザーをも飲み込んで、それは他者を寄せ付けぬ領域を形作る。

 

嵐の最中、ストームフェニックスの機体がパズルのように分解する。腹部が分離し4つに分解し、尾翼が切り離された。

分離された機体は力場の渦に巻き込まれながら四方に飛び散り、それぞれ変形を開始する。


「一つ目ェ!」

 

展開したパーツの一つに向かって、落雷のように天空から落下してきたバンカイザーが蹴り付けてくる。火花を散らしながら接合したパーツは、ふくらはぎから足首を完全に覆って一回り大きい脚部を形作る。


「二つっ!」

 

接合した右足を軸にして回し蹴りのように左足を振り回す。丁度そこに飛来したパーツに左足が叩き込まれ、右足と同様に新たな脚部を形成した。


「せえりゃあ!」

 

振りかぶった左拳が次なるパーツへと叩き込まれた。火花を散らしながらその拳を受け止めたパーツは、スライドして手首を覆い手甲となる。その先に姿を現したのは一回り大きな拳。それが大きく開かれる。


「ふうン!」

 

天に向かって振り上げられた拳も同様に手甲に包まれる。その先から生じた手もまた目一杯広げられ、そして太陽を掴むかのように力強く握りしめられた。


「次ィ!」


変形する尾翼部分。姿を変えたそれを巨大な手がひっ掴み、己の腰に叩き込んでフロントアーマーを形成。

 

目を伏せ、シーケンスのバグを除去している蘭。その彼女を乗せた残りの部分――機首と主翼、そしてコクピット周りが変形し、バンカイザーの上半身を包み込む。

機首は頭部へと接合し、主翼は両肩を包んでローブかマントを思わせる形で固定。コクピット周りは胸部増加装甲と化してロックされた。

 

ひときわ強く風が唸る。集う全ての人間が悟った。とてつもなく、ろくでもない代物がここに産み落とされたと。

 

サブモニターの表示が全てOKサインとなる中、伏せた顔をゆっくりと上げながら蘭は謳う。


「天地を理不尽覆うのならば――」

 

嵐が、収まっていく。

新たなリンクが形成され、萬の頬に文様が浮かび上がる。うっすらと不敵な笑いを浮かべた萬が、蘭の言葉を継ぐ。


「――嵐となってそれらを薙がん」

 

現れるのは朱金の機体。嵐を従え炎を纏う、最強至高。

 

力強く眼を開いた二人の言葉が唱和する。


『希望を想う我らが纏うは、天をも砕く覇王の鎧!』

 

一回り大きさを増した四肢。

増加装甲となったストームフェニックスを纏ったその姿は、全くと言っていいほどがらりと印象を変えている。

 

機体から放たれる気配、そのオーラは。

 

圧倒。

 

超絶!          

 

無双 っ!

 

問答無用の威圧感を放つその機体は、大きく派手に天地全てに知らしめるかのごとく見得を切った。






『希・想・天・鎧ッ! 



【ストームバンカイザー】!! 



今、ここにっ! 大・皇・臨っっ!!!』







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