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5・復活のTEIOW 前編


 




画面の向こう側で、男が不敵に笑う。

その前に居並ぶのは4人の男女と従者達。集結したチームインペリアルの面子だった。

彼らを見渡して満足げに頷くのは、GOTUI総司令、天地堂 嵐その人。


「どいつもこいつもいい面構えになりやがった。仕上げは上々って事だな」

 

答えはただ、不敵な笑みを持ってして。外見上の変化は萬以外の人間にはない。しかし全身から放たれる気配というか気迫というか、雰囲気そのものが今までと違うように見える。 一皮むけた、というヤツであろうか。“これならば問題はない”と嵐は確信を得ていた。


「ご命令通り、駒は揃いましたよ総司令。いつでも動けます」

 

自信満々と言った風情で萬が言う。聞いたところによれば少しやさぐれたような言動を見せていたようだが、今はそのように見受けられない。気持ちを切り替えたのだろう。こいつはこいつで随分と図太くなったと思いながら嵐は新たな命を下す。


「そのようだな。……では正式に辞令を下す。再編成される貴様ら(チームインペリアル)の所属は以前と同じ。準司令権限を持つ独立部隊として活動させる。頭は引き続き八戸出 萬、貴様が取れ」

「は、はい? ですが総司令、チームリーダーはゼンだったはずですが?」

 

面食らった表情で問う萬を、何を言っているかと斬って捨てる嵐。


「経験値は貴様が最も高いだろうが。それに残りの連中は半年ほど真っ当な戦場から遠ざかってる。能力はともかく勘を取り戻すのに時間がかかるだろう。そういうわけだから上手く仕切って見せろ」

「んな無茶苦茶な。……いえ、失礼しました。八戸出 萬、チームインペリアル小隊長、拝命します」

 

反論しようとした途中で言っても無駄だと気付いたのだろう。表面上は大人しく辞令に従うつもりになったようだ。わざとらしく殊勝な態度を装う萬の様子にくくくと忍び笑いを漏らしてから、嵐は言葉を続ける。


「遊撃第一第二中隊は一度解散、やいばとはずみはそのままチームインペリアルの補佐につけ」

『承知いたしました』

「残りの連中は再編成の後、正式にチームインペリアルの下につける。とはいっても実際に付くのは反撃も大詰めになったあたりだろうな」

「その言いようですと、早速反攻作戦が立ち上がる。と見てよろしいので?」

 

ゼンがそう問い掛けると、嵐は大きく頷いて肯定の意を示した。


「ああ。全ての準備が整ったとは言い難いが、貴様らという駒は揃った。早々に一働きして貰うぞ。……そういうわけで、最初の指令を下す。チームインペリアルはそのままブレイブにてこれより指示されるポイントに赴き、“専用装備”を受領しろ」

 

その言葉に、全員の目が鋭さを増す。チームインペリアルの専用装備と言えば一つしかない。いよいよご対面かと血気にはやるのも無理はない。

彼らの様子に嵐は良しと満足げに笑う。


「期待しておけ、きっちりと“研ぎ上げて”おいたぞ」

「そいつは重畳。……チームインペリアル、これより任務を遂行します」

 

萬の宣言と同時に、ずざ、と揃って敬礼を見せるチームインペリアル。

それは密やかな、だが確かに反攻の狼煙が上がった瞬間であった。











「さて、受領するのはいいんだが……なんで受領ポイントが海の上なんだろう?」

 

指示されたポイントをモニターで確認した萬はそう言って首を捻る。

確かに指示されたのは太平洋のど真ん中。総本部に帰還してとばかり考えていた萬が疑問に思うのも無理はない。なぜわざわざと考えた彼に、従者二人が説明した。


「TEIOWの改修は、リスク分散のため各所の海上移動拠点にて行われました。わざわざ陸に揚げるよりはそのまま海上で回収させるべきと考えたのでしょう」

「空間転移にて転送すれば済む話なのですが、不慮の事故というものはあり得ますな。やはり直接手渡しが確実かと」

「ふうん……」

 

一瞬胡乱げな表情を浮かべた萬だが、まあいいさと呟いてモニターの海図を確認する。と、共にその画面を覗き込んでいたチームメイト達が一斉に眉を顰める。


「……趣味、悪いなあ」

「何か意味あるんかいの、この選択は」

「好意的に考えれば、追悼の気持ちがあったりするのかもしれないけど」

 

きまりが悪そうに零す三人に向かって、再び胡乱げな視線を向ける萬。確実に何か言いたげな、奥歯に物が挟まったような態度に対して咎めるでもなく、純粋に疑問を抱いた萬は尋ねてみた。


「このポイントが、どうかしたのか?」

「いやどうかってお前さん……って、そうか、知らなかったんだっけか……」

 

ついこの間まで本当に別世界だったしなあと呟きつつ、困ったように頭をかくゼン。そうしてから彼は、意を決したかのように再び口を開いた。


「そのポイントはさ、“グランノアが沈んだ座標”なんだよ」


 









海原が広がる。

陸地から遙かに離れたこの海域では風と波の音、そして船の動力ぐらいの音しかない。

それらをBGMに、ブレイブのデッキでぼんやりと海を眺める人影がある。

日も傾いていないのに黄昏れた雰囲気を放っているのはターナ。何をするでもなくただ海原を眺めているだけのように見えるが、その心の中では複雑な思念や感情が渦巻いていた。

彼女らは合流ポイントまで同行した後、再編成のため移動拠点に移る事となるだろう。そうなれば戦況が終結に向かう時までチームインペリアルと――萬達と別れる事となる。下手をすれば、これが今生の別れとなるかも知れない。ならば今のうち……。

 

今のうち、どうしようというのだ?

 

兄の敵を討つ。そんな建前など最早意味はないという事は分かっている。萬は何も言わない。何も言ってくれない。自分の事など眼中にない……のではなかった。思うがまま好きにしろ、そういう事なのだろう。きっと今仇を討たせろと殴り込んでも、平然とそれを受けるに決まっている。そして容赦なく自分を叩きのめすであろう。とうの昔に彼は割り切っている。引きずっているのは自分だけだ。

おかしな話だ。最初から人の命がパンくずより軽いゴミ溜めのような街で生きてきた自分よりも、曲がりなりにも当たり前の家庭で生まれた萬のほうが覚悟を決めて生きているとは。潜ってきた修羅場の差なのだろうか。我知らずターナの口元に苦笑が浮かぶ。

 

萬の背中は随分と遠くなってしまった。彼は立ち止まらない。振り返らない。ただ前に向かって悩みながらも真っ直ぐに駆け抜けている。もう、追い付くことはできない。そんな気がする。

寂しさとも虚しさともつかない感情が胸に宿り、陰鬱な溜息が漏れた。と、彼女の背後で艦内に通ずるハッチが開いた気配がする。


「こんなところにいたのかい?」

 

振り返れば、そこにあったのはカンパリスンの姿。別に何がどうというわけではないが、なんとなく気まずいような気がして思わず「なによ」と不機嫌そうな声を出してしまうターナだった。


「いやその、またちょっとトレーニングに付き合って貰おうかと思ったんだけど……どうかしたのかい?」

 

少し戸惑うカンパリスンの言葉になんでもないと取り繕うターナ。以前剣を交わしてから後、彼女らは時折鍛錬を共にしていた。少し外れているとは言え軍隊式の格闘、白兵戦技能を持つ人間が多い中で、彼女らのように少々特殊な技術を使うものは少ない。ゆえに意気投合というか、何となく手合わせするようになった。他にはターナと同じくチンピラ喧嘩術に長けたユージンや、正統派の伝統拳法の達人であるフェイなどが時折加わる事もあった。端から見ているライアンやパトリシア曰く「ヘンな接近戦術同好会」などと称されるくらいには、友誼を交わしている。

 

そういえば。ターナはふと思った。確かこの男も萬とは多少の因縁があったはずだ。そう思い付いてから暫し迷い、そして彼女はカンパリスンにこう問うた。


「ねえ、もしもさ。……どうしても追い付きたいヤツがいるんだけども、そいつにはどう足掻いても追い付く事ができないと悟ってしまったら……アンタならどうする?」

 

唐突な問いに一瞬目を丸くするカンパリスンだったが、なぜと問い掛けるような真似はせず素直に考え、そしてきっぱりとこう答えた。


「金で解決する」

 

がくりとターナはつんのめった。駄目だこの男、聞いたアタシも馬鹿だったけどと後悔するターナだったが、カンパリスンはにやりと笑って言葉を続ける。


「……と、以前のボクなら言っていただろうね」

「今は違うとでも?」

 

体勢を立て直しながらジト目で問うターナに、カンパリスンは答えた。


「金じゃどうにもならない事だって世の中にはある、っていうのは良く分かったさ。“どう足掻いても追い付けないものには追い付けないし、勝てないものには勝てない”。世の中って言うのはそういうふうにできてるらしい」

 

言いながら、肩を竦める。


「だからといって、諦めるって選択肢を取るのも……悔しいじゃないか。ならば追いかけるさ。諦めるのは、無様に倒れてからでも遅くはないだろう。それまでは、死力を尽くしてみるのも悪くない」

 

語り掛けるその目には迷いはなかった。その目を真正面から見たターナの心臓が、どきりと一瞬だけ鼓動の速度を上げる。


「……何よ今のは」

 

顔を顰めて自身の反応に不満を覚えるターナ。安っこいドラマじゃあるまいし、ヘンに動揺するなアタシと自分に言い聞かせる。その様子を見ていたカンパリスンはどうしたのかと訝しげな表情になるが、すぐさままあいいかと気を取り直し、再び口を開く。


「まあその話は置いておいて、どうする? トレーニングしてくかい?」

「……そうね、何か妙にムカついたから相手してくれない?」

「……い、いいけど、お手柔らかに」

 

なぜかビクつくカンパリスンを促して、ターナはデッキを後にする。

結局、答えは出せないなあと、こっそり溜息を吐くが、考えても堂々巡りになるだけだと少しだけ開き直った。ともかく体を動かしてすっきりしよう、そうしようと、とりあえずは問題を棚上げし後回しにする。

 

後に、彼女はこの時答えを出さなかった事に対して後悔する羽目になるのだが、神ならぬ身にそれが分かろうはずもなかった。










「壮観っちゅうヤツやな」

 

ポイントに到達したブレイブの艦橋から周辺の光景を見渡した弦は、そう表現した。

周囲には巨大な人工物の影がいくつか。GOTUIが擁するグランノアと同様の海上移動拠点。その全てがこの場に集結しているのである。


「しかしホントにわざわざ集めるとはね」

 

弦の隣で、呆れたような顔をしてみせるのはゼン。本来であればわざわざ拠点を集めるような真似をしなくていいはずだ。それぞれにブレイブが訪れてTEIOWを回収すればいい。

なのにこのような真似をするという事は。


「なーんかやらかす気だよね。明らかに」

 

朗らかではあるが何か裏がありそうな笑顔を見せる鈴が断言する。まあそう考えるのは当然だろう。ここまであからさますぎるのであれば誰にでも分かることだ。

問題は何をやるかという事なんだがと、三人はちらりと艦長席の萬へと視線を向けた。

 

各拠点と連絡を取り合っている萬の様子はいつも通り。そう、“動揺の一つもなくいつもの通りである”。

 

グランノアが沈んだ海。その上に立つ彼の心境はいかなるものなのか、見た目ではまるで判断できない。様々な思いを心の奥に隠しているのか、それとも心がすり切れて何も感じていないのか。気にはかかるがさりとて尋ねるのも気が引ける。結局のところもやもやしたものを抱えたまま、三人はひそひそと言葉を交わした。


「どうにもやりずらいね、これは」

「ねえ、ゼンはなにも感じないわけ?」

「とんでもなく強固な心理防壁が張り巡らされてて思考や感情が外に漏れないんだよ。最近言動が割りと素直だから見たまんまで判断するしかない」

「気も乱れとらんしのお。少なくとも動揺はしとらん。覚悟しとったちゅうことかいな」

 

むう、と揃って唸り声が上がる。本人が気にしていないと言うのであれば外で勝手に悩んでいても仕方がない。だが何かこう、納得いかないものがあるのは確かだ。

密かに思い悩む三人を余所に、連絡を終えた萬が通信を切る。そして気にかける様子もなく三人に向かって声を掛けた。


「そろそろ準備ができる。用意はいいか?」

「あ、OK。自分達ならいつでもいいよ。それぞれ連絡艇で各所に向かえばいいのかい?」

 

即座に取り繕ってゼンが答えるが、萬はその言葉を否定した。


「いや、オレたちは使い魔(あいぼう)つれて甲板だ。……それと総員第一種警戒態勢。いつでも動けるようにしておけ」

『へ?』

 

目を丸くして間抜けな声を出す三人。その反応を見て皮肉げない笑みを浮かべつつ萬は言う。


「そろそろ“お客が来る頃”だ」

 

そう言った途端、艦内に耳障りな警報が鳴り響く。次いで淀みなくオペレーターが状況を告げた。


「全方位から接近する未確認の飛行物体、及び艦艇多数。友軍信号は確認されず、敵と判断します」

 

げ、と声を漏らしたゼンが額に手を当てて嘆く。


「またこのタイミングのいいときに……って、まさか」

 

三人は気付いた。つまりこれが、“やらかす気だった何か”だと。

皮肉げな笑みを浮かべたままの萬が軽く肩を竦めながら言う。


「集結した全ての海上拠点。回収されたばかりのTEIOW。……いい釣り餌だよな?」

「情報をリークしよったんかい」

「しかもまあたくさん……」

 

ほとほと呆れたといった様子で弦と鈴は言うが、何を今更と萬は軽く流す。


「どうせいずれは片付けにゃいかん連中だ。お披露目ついでに一掃しようって腹なんだろ。……やいば、はずみ、後は任せる」

『御意』

 

深々と礼をする二人に頷いて、萬は三人のチームメイトを促し艦橋を後にする。やれやれ仕方がないなあと少しぐずるふうを装う三人の口元には隠しきれない笑みがこぼれていた。自分達が手に入れた新たなる力。それを振るう機会にあたり抑えきれない闘志が溢れだしてきているかのようだ。何のかんの言って、やはり待ちかねていたのだろう。

その事に満足を得て、自身も不敵な笑みを浮かべながら、萬は両手の指をこきこき鳴らし宣言した。


「さあて、蹂躙するとしようか!」


 









GOTUIの海上拠点が集結し、TEIOWの引き渡しが行われる。その情報を得て集ったのは多種多様の“反GOTUI勢力の残党”であった。

元正規軍で好き勝手やらかして追い出されたエリート部隊から犯罪組織や自称悪の帝国、はたまた人類補完がどーたらこーたら蒼き清浄な何たらがこうたら言う頭のおかしい集団まで、纏まりもへったくれもない烏合の衆ではある。だがどうやって集めたのかは知らないがその数、戦力は驚異的なもの。正しく四方の海と空を埋め尽くさんばかりの布陣だ。

 

普通ならその圧倒的な数の暴力で押し切れるであろうが、相手はGOTUIである。常識が通用するはずはない。


「向こうさん分かってんのかねそれが」

「分かってたら仕掛けてこようなんて思わないわよ」

 

通信機越しにひそひそと会話を交わしているのは、いつものごとくライアンとパトリシア。最早この二人周囲からは公認のカップルとして扱われているのだが、知らないのは本人達だけである。


「あれだ、色々なモノつぎ込みすぎて引くに引けないんじゃない?」

「専門用語で言う今更イモ引けるか、ってヤツだな」

「うわびっくりした! 盗聴すんじゃねえよ!」

 

突然極秘回線での通信に割り込んできた約二名の声に、びくりと体を震わせるライアン。戦闘前だというのにこいつら良い度胸である。

まあ彼らもこなれてきたということなのだろう。適度に肩の力が抜けているというのは決して悪い事ではない。


「だって潤いがないんだよね潤いが。少しは僕らの心に潤いをもたらすよう協力してくれやがりなさい」

「お前らも結構モテてんだろうが、そっちで自前でなんとかしろや」

「……表現されなきゃ、ないも同然なんだぞ?」

「メタな発言すんな」

 

……力が抜けすぎているというのも問題かも知れない。

そんな連中を余所に、肩の力がほぐれていないものもいる。


「シャイニング1より各機。GOTUIに移転して初めての実戦だ、気負わなくてもいいが油断はするな。ボク達はボク達の役目を果たせばいい。まずはそれを考えろ」

 

緊張を隠しきれない声で通達するのは、新設されたシャイニング小隊(ナイトブレイドからの移転組)の小隊長を勤める事となったカンパリスン。機種転換訓練を受けたとは言えブロウニングで実戦を行うのは初めてである。ある程度の自信はあってもそれは絶対ではない。未だGOTUIのやり方に慣れていないカンパリスンにとって、天と海を覆う軍勢は脅威として認識されている。

 

ぶるりと身体が震える。これは武者震いだと自分に言い聞かせるがそれは止まらない。自身に対しても落ち着けと唱えていた彼の目が、モニター越しにあるものを捉える。


機体越しだというのにぎゃーぎゃー騒いでいるのが良く分かるライオット小隊。その端っこで大人しくしているブロウニングが一機。

会話に入れないのではない。呆れ返っているのだとその機体から放たれる気配は主張していた。それを見ていたカンパリスンは、苦笑いを浮かべ自嘲した。


「あの子に、情けないところは見せられないな」


呆れ返っているであろう少女の姿を思い浮かべる。

震えはなぜか止まっていた。


 









ブレイブの甲板上に、4人の人影。

 

一騎当戦の体現者たち、チームインペリアル。

 

強風が吹き荒れそれぞれの髪が嬲られる。それを意にも介さず不敵な笑みを浮かべている彼らは、左腕を真横に払いながらそれぞれの相棒を呼ぶ。


「ワイズ!」

「ハーミット!」

「ウィズダム!」

「ジェスター!」

『応っ!』

 

答えた使い魔達が閃光と化し、主の左腕に向かって跳ぶ。現れるのはTEIOWパイロット用の汎用デバイス、エントリーギア。甲の部分に位置している宝珠のようなパーツが輝き、四人の身体は鎧のようなパイロットスーツに包まれる。

鋼に包まれた拳をぎちりと握りしめ、笑みを深めた萬が言う。


「各術式システム正常、早速おっぱじめるぜ」

『了解!』

 

応答と共に四人は甲板から跳び宙に身を躍らせる。その先に召喚用魔法陣が展開、現れた機体へとそれぞれ飛び込む。

 

閃光が四方へと駆け抜けた。空を奔るものが三つ、海を駆けるものが一つ。

 

トリコロールカラーの戦闘機。ロールをうったその姿が一瞬にして変わる。

 

大まかな形状は以前とあまり変わらない。ただ両肩に巨大な楔状のシールドユニットが増加され、両手には盾とライフルを組み合わせたような武器が装備されていた。

攻防双方にて大幅に強化されたその機体の新たなる名は――



「――敵が数多の悪ならば、完全無欠にそれらを超える! 


完・全・超・悪っ! 【スタークゼンカイザー】! 


今ここに、参上っ!」

 


白き大型スーパーカー。6輪の車体が宙に舞い、その姿を変える。


一回り太さを増した四肢。特に関節部分は殴り合いを想定してかそれ自体が打撲兵器のような構造となっている。同時にプラーナコンバーターも大出力化したようで、すでに目に見える形で多量の闘気が放出されていた。

格闘戦能力をさらに追求し仕上がったその機体の名は――



「――鋼の拳を乱世に振るい、災禍なるを浄化せしめん! 


拳・禍・浄・闘っ! 【ゲンカイザー弐式】! 


今ここに、見参っ!」

 


水晶のような蒼き戦闘機が翼を翻し姿を変える。

 

大型化した各部のスラスターユニット。四肢の装甲は鋭角化と言うより、あからさまに刃物としての機能を有している事が見て取れる。両腰には大小合わせて計四本の日本刀状の得物。長期戦も考慮し追加装備された斬空刀だった。

機動力を高め一撃離脱を重視したその機体の名は――



「――轟放なる徒華となりて、いざ剣を振るい舞い乱れようぞ! 


轟・華・剣・乱っ! 【リンカイザー/(スラッシュ)】! 


今ここに、推参っ!」

 


そして最後に紅き鳳がその姿を変える。

 

装甲が新たなものに換装された以外は外観にほとんど変化はない。その後ろ腰のマウントに尻尾のように装備されているのは紅き大剣、レーヴァンテイン。さらに追加された両太股基部のマウントにはソードオフショットガンと大型ナイフを組み合わせたような銃剣、【ブラスターエッジ(セカンド)】が一対。

燃えさかるような深紅に塗り上げられた、その機体の新たなる名は――



「――鬼神となりし我らがまとうは、理不尽砕く天破の鎧! 


鬼・装・天・鎧っ! 【バンカイザースペックⅡ】! 


今ここに、皇臨っ!」

 


見得を切る4体の鬼神。

そのモニターアイに力強く光が点る。












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