麦粥
俺が中学2年生だったある日、土日の休みに俺はまた異世界に行った。
だが、目を覚ますと誰もいなかった。ノーラはいつも俺が目覚めると横で頬杖をついて待っていた。
だがその日彼女は目の前にいなかった。そういうこともあるだろうと思い周辺を探し回ったが、行方を示す手がかりは何一つ発見できなかった。そのまま二日間何も手掛かりを見つけられず休日が終わり俺は現実世界に引き戻されてしまった。
その週は何もかもが手につかなかったのを覚えている。俺は熱が出たと嘘をついて学校を休んだが、異世界に行くことはできなかった。土日や祝日、カレンダーにあらかじめ書いてあった休みにしか俺は異世界に行けなかった。金曜日、俺は6時にはベッドに潜った。何事もなくノーラが待ってくれていると信じて。
だが彼女はいなかった。俺は確信した。これは夢などではない。この夢が虚しい休日からの逃避のためのものならば、ノーラがいないことがあり得ないからだ。これは俺を暗く寂しい現実から救ってくれた夢などではなく、俺が嫌っていた一人寂しい現実だと。俺はその時心で理解した。
俺は捜索範囲を広げ近くの村や通りかかった商人にノーラの行方を尋ねたがやはり手掛かりはなかった。結局現在までノーラの手がかりは見つかっていない。彼女は姿を消したきり未だに俺の前に現れていない。
小屋の中は綺麗に整頓されていた。俺が毎週来ているからだ。大学に入ったのもそういう理由だ。大学生は休みが多いと聞いた。それならこの世界に長居できる。そう考えたからだった。
いつものように釜戸に火を入れた鍋を乗せる。ノーラがいつも作ってくれていた麦粥を作る。
気配を感じる。誰かが来る。こんなところに人が来るのかと疑問に思ったが、戸を少し開けて外を確認する。そこには金髪碧眼にエルフのものより少し短い耳を少女が立っていた。
「誰?」
「ここに魔女様がいると聞いて、その、弟子入りしたくて。」
「魔女様って、ノーラのこと?」
「ノーラ様かどうかは存じ上げませんがここに住んでいると聞いたもので。」
俺は少し考えてから尋ねた。
「お腹は空いてない?」




