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草刈り
昔よく通った道を一人で歩く。
その先に草の生い茂った小屋がある。
「ノーラ、いる?」
返事はない。
わかっている。
いるはずない。
「もうこんなに草が茂ってる。」
この山の植物は侵食が速い。草をかき分けて道具箱に入れてある鎌を取り出す。
そのまま鎌で一本一本草を刈っていく。
こんなもの、俺の力で作り替えてしまえば解決するはずなのだが、いちいちこんな非効率的なことをしてしまうのはあの時の思い出を追体験したいからなのか。
ある時俺は自分の力で草を作り変えてしまおうと思ったが、ノーラはそれを止めた。
「この草だって君と同じ。魂がある。どんな魂にも最低限の敬意を払わないと。こうやって一本一本刈っていくのが私は敬意だと思うな。」
ノーラの言葉は俺にはよくわからなかった。今もよくわからない。こんなものさっさと片付けて仕舞えばいいと思っている。
だが、そうできないのは何かが俺を引き留めているからだ。
5年前彼女が俺の前から姿を消して以来、俺はここの草を刈り続けている。
再び彼女が帰って来れるように。




