高所興奮症
前にも山がある。
緑の山だ。
ほぼ緑だ。
深い緑中心に広がっている。
ラクダのコブのようだ。
半円みたいなのがふたつある。
気分がいい。
気持ちがいい。
呼吸を自ずから、したいと思える。
鼻で息を吸えば、葉っぱの瑞々しさみたいなもので満たされる。
¨ポーポーポーポー¨
¨ポーポーポーポー¨
お空から聞こえる。
上の方から聞こえる。
音が降ってきている感じだ。
何の音だろう?
登って到着すれば、そこは崖だ。
以前見た、崖の写真の色味や形を、脳に映す。
反り立っている。
そそり立っている。
そして、美しさと不気味さが共存している。
¨ポーポーポーポー¨
¨ポーポーポーポー¨
猿とは声の出し方が違う。
鳥でもない。
虫でもない。
電子音とかでもない。
高揚感がうかがえる。
快楽というよりも、絶頂といったところか。
ヤギみたいな動物か。
それとも、見たこともない生物か。
やっと頂上に着いた。
目の前に、ギラギラすぎる薄水色が広がる。
ほぼ無機化合物。
今なら羽ばたける気がする。
¨ポーポーポーポー¨
¨ポーポーポーポー¨
少女がいた。
音の正体は、興奮している少女だった。
そうとう興奮している。
高所恐怖症の身からすれば、ありえないことだ。