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27.ボクが止める 【陸視点】

申し訳ございません。

25話の終わりの部分のニュースの内容を「死傷者」から

「負傷者」に変更させていいただきました。

 ボクには麗佳ちゃんが言っていることが、にわかには信じられなかった。

 そして気になるのは話に出てきた薫という人物。

 名前だけでは男であるのか、女であるのかも分からない。

 少なくとも、麗佳ちゃんに悪い影響を与えたのは間違いない。


「!?」


 学校のある方角を見てみると、煙が出ているのが見えた。

 麗佳ちゃんは本当に学校に火をつけたのだ。

 だとすると、渋沢を消したのも――。

 

 麗佳ちゃん……。

 やってしまったんだね……。


 ボク、麗佳ちゃんが和也くんのこと好きなの知ってたよ。

 麗佳ちゃんが和也くんにキスしたって聞いた時、すごくムカついたけどボクはそれも悪くないんじゃないかって思ってたんだ。


 ボクと美里ちゃんと麗佳ちゃんの三人で和也くんを愛して、そして和也くんから愛してもらう。

 同じ喜び皆で分かち合う。

 世間からしたら歪かもしれないけど、愛情なんて人それぞれ。


 ボクの傍には、『幼馴染』と友達がいる。

 麗佳ちゃんの傍には、好きな人と友達がいる。

 それって幸せなことだと思わない?


 でもね、渋沢のことはともかく、和也くんまで危険な目に遭う可能性があるのは見過ごせないよ。

 だからボクは麗佳ちゃんを止める。

 麗佳ちゃんだけじゃないよ、薫って奴もボクが止める。


 そんなこと考えていたら、焦げた煙の臭いが公園にまで漂ってくる。

 煙自体はまだこちらに来ていない。


「あんた、本当に燃やしたの!?」


 美里ちゃんも、学校から火の手が上がっていることに気付いたようだ。


「美里ちゃん、和也くんから一応連絡来てないか確認しよう?」


「ちょっと待って」


 対峙する麗佳ちゃんを無視して、美里ちゃんがスマホの画面を見る。

 美里ちゃんと麗佳ちゃんは一触即発の雰囲気だけど、優先すべきは和也くんの安全。

 和也くんはボクにも連絡はくれるけれど、一番連絡を取り合っているのは美里ちゃんだ。

 学校を休むなら、美里ちゃんに連絡があるはず。


「ふふふ、お馬鹿さんになったの陸ちゃん? 大丈夫だって言ってるじゃない」


「ボクは薫って人のことを知らない。麗佳ちゃんがそう思い込んでるだけかもしれないでしょ」


 麗佳ちゃんは大丈夫だと言っていたけど、和也くんが学校に行かない保証はない。

 ボクが顔も名字も知らない薫という人間が引き留めているだけ。

 和也くんと薫の関係性も不明だ。


「あ、ああ……あああ……」


 美里ちゃんが口を大きく開けて固まっていた。


「美里ちゃん、どうしたの!?」


 美里ちゃんの脇から、スマホの画面を見る。そこには――。


『今から学校に向かう』


 ボクたちが学校を出たぐらいの時間に、そのメッセージが送られていた。

 場合によっては火災に巻き込まれている可能性もある。


「美里ちゃん、行こう!」


 ボクは美里ちゃんの手を引いて、学校に向けて走り出した。


「カズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんがカズくんが」


「落ち着いて! 今は急ごう!」


「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」


 ここまでテンパっている美里ちゃんは初めて見た。

 美里ちゃんは歯をカチカチさせ、ブルブルと全身を震わせながら走っている

 まさに奇怪そのものだ。


 ボクは走りながらこれからどうするか考える。

 まずは和也くんの安否を確認する。

 そして次に麗佳ちゃんと薫を止める。

 二人をもう二度と和也くんに会わせないようにする。


 そのためにはどうするか。

 警察に通報して、逮捕してもらう他ない。

 ただ、ボクや美里ちゃんが警察に何か言ったところで信じてもらえないだろう。

 証拠が何一つないからだ。

 さっきの麗佳ちゃんの話だって、麗佳ちゃんがそう言っているだけで放火したという確たるものはない。

 それにさっきの話も録音できていない。


 そうなってくると……。


 …………。


 あまり使いたくはないけれど、ボクのお父さんの力を使うしかない。

 ボクのお父さんの職業は――検察官だ。

 お父さんは社会的な地位が脅かされることを異常なまでに嫌う。

 渋沢に制裁を加えたのに、ボクに何のお咎めがなかったのは、お父さんの権力あったからだ。

 逆を言えば、それほどまでの権力なら警察を強引に動かすことができるかもしれない。

 また不倫のことで脅すのは、気が引けるけれども他に選択肢はない。


 ボクは覚悟を決めた――。


 ★★★★★


 学校の前にたどり着くと、案の定そこには人だかりができていた。

 保護者の一人が名前を叫んで校舎に向かおうとしていたため、消防隊に制止されている。


 ひどい有り様だった。

 オレンジ色の炎が校舎の窓が吹き出ている。

 校庭には複数の消防車が並び、現在も消火活動を行っていた。

 消火に使ったのか、なみなみとプールを満たしていた水はすっかり空になっている。

 救急車が校門を出たり入ったりを繰り返しており、サイレンが辺りに鳴り響いていた。


 でもボクたちは、目的の人が野次馬の中にいるのを見つけた。


「カズくぅーーーーーーん!!」


 美里ちゃんを掴んでいた手はいつの間にか空を切っていた。

 和也くんに美里ちゃんはダイブし、人目も憚らず馬乗りになって和也くんにキスをした。


 ちゅぅぅぅううううう!


「ふが!」


「カズくんカズくんカズくんカズくんカズくん」


 こうなった美里ちゃんは梃子(てこ)でも動かないだろう。

 なんかちょっと羨ましいなあ……。


「ヒュー! お二人さん、熱いねぇ! オレも仲間に入れてくれよ」 


 和也くんの隣にいた、男みたいな女が美里ちゃんに声をかけていた。


 ボクは即座に理解した。

 こいつが薫だと。


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