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24.声 【麗佳視点】

今回も麗華視点になります。

(ねえ? あなた、本当に北村くんの『幼馴染』になれたと思ってるの?)


 うるさい……。


(渋沢を消したことで『過去』が完成したとあなたは考えてるみたいだけど、そうじゃない)


 うるさい……。


(あなたはさらに罪を犯しただけ。その手を血で汚してしまった。取り返しのつかないのことをしてしまった)


 うるさいうるさいうるさい!!


(なんであなたは渋沢と付き合ったの? 付き合いさえしなければあんなことせずに済んだのに……)


 お願い……黙ってよ……。静かにしてよ……。


(ホントは気付いてたんじゃない? あなたはもう穢れるてるって)


 お願い……お願いだから……。


(あなたの身体は綺麗だったけど、心の純潔は渋沢に捧げてしまった)


 じゃあ、どうすれば良かったの!?

 私にはあれしか方法がなかった!

 北村くんの『幼馴染』になるには、『過去』を作るしかなかった!


(それは間違っていない。あなたは順番を間違えた)


 順番? 何を言ってるの?


(あなたはまず北村くんと『幼馴染』するべきだった)


 『幼馴染』する?


(北村くんにあなたの愛を示す行為よ。愛から生み出された『過去』はとても素晴らしいもの。それをしていない限り、あなたはまだ仮の『幼馴染』)


 じゃあ、北村くんと『幼馴染』すれはいいのね?

 それから『過去』を作り直せば、本当の『幼馴染』になれる?


(ええ)


 よかった……。

 私はまだやり直せるのね。


(そう、それで問題ない…………とでも言うと思った?)


 え…………?


(あなたはただの人殺し。それ以外の何者でない。あなたもう逃げられないの。アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! )


 いやぁああああああああ!!


 ★★★★★


 渋沢をホームに突き落として以来、私は “声” が聞こえるようになった。

 その声は、いつも私を人殺しだと責める。


 私は渋沢を始末したことに後悔などしていない。

 でも、あの時から毎日警察が家に来るのではないかと不安になる。

 それに、時より胸がズキッと痛むようになってしまった。


 これを解消するには北村くんに愛してもらう他ない。

 だって私もう、戻れることなどできないのだから……。


 転校初日、私は幸運なことに北村くんと同じクラスになった。

 そのクラスには辻堂さんもいないので、北村くんを独占できるかと思っていた。

 だけど、例によってまた男子達が群がってきてしまった。

 そのせいで私は中々北村くんとお話することができない。

 陸ちゃんも教室に来たのだけれど、これも阻まれてしまう。


 もどかしさだけが募っていく。

 悠長にしていられない。

 私の愛を北村くんに示さなければならないのだ。


 放課後、私は男共をかき分けて、北村くんに校舎の案内を頼んだ。

 二人きりとなった私たちは校舎を回る。

 けれど、北村くんは私が『幼馴染』になったというのに、私に一切手を出してこない。

 やはり、自分から積極的に北村くんを愛さねばならない。


 そして、とうとう私の想いが爆発する。


 私は北村くんとキスをした。

 最高だった。

 愛して貰うことだけが幸福だと思っていたが、愛することもまた幸福なのだと私は実感した。

 北村くんに愛してもらわなくていい、私が愛せばそれだけでいい。

 そうすれば、きっと母の愛が私の愛に変わるはず。

 北村くんを愛すれば、母の愛を感じることができるのだ。


 次の日の放課後、私は『幼馴染』する約束を果たすため、北村くんと一緒に帰ろうすると、陸ちゃんに部活に誘われた。

 友達からの誘いを断るのも気が引けたので、終わってから北村くんの家に行くことにした。


 部活が終わり、北村くんの家のインターホンを鳴らすと、四十代前半、もしくは半ばくらいの女性が出てきた。

 恐らく北村くんのお母さんだろう。

 てっきり私は北村くんが出迎えてくれると思っていたのだが、そうではなかった。


 北村くんのお母さん曰く、北村くんは友達の家に泊まっているらしい。

 その友達は誰なのか、北村くんのお母さんは答えてはくれなかった。

 むしろ、彼女は陽も落ちて辺りも暗くなったこの時間に、訪ねてきた私を訝しんでいる。


「あなた、和也の知り合い?」


「彼女です (これからなる予定)」


「そう……」


 北村くんのお母さんは納得していないようだったけれども、それ以上は追求してこなかった。

 私が女の子ということもあり、もし万が一北村くんに何かしようと思っても、何もできないと判断したのだろう。

 それよりも……。


 ――北村くんが約束を破った。


 北村くんは明日ならいいと言ってくれた。

 それなのに北村くんは家にいなかった。


 一体どういうことなの?

 北村くんはわたしのことが嫌いなの?

 どうしよう……。

 私が北村くんを愛するにしても、北村くんの傍にいなきゃ愛せない。

 北村くんは他になんて言っていた?

 思い出せ! 思い出すんだ私!


『とにかく今日はだめなんだ』


 ………そうか。


 そうか。そうか。そうか。そうか。そうか。そうか。そうか。そうか。

 北村くんは私の愛を試しているんだ。

 俺を愛しているなら毎日俺のところに来いって、そういうことなんだね。

 よかった。

 私は嫌われてなかったんだ。


(そんなわけないじゃない。あなたは嫌われてるのよ。この人殺し!)


 うるさい!


 ★★★★★


 私はそれから毎日の北村くんの家に通った。

 北村くんが会ってくれることはなかったけど、私は諦めなかった。


 何日か経ったある日、北村くんの家の前で女の子……と思われる人がウロウロしているのを見かけた。


 彼女(?)は細身であるにも関わらず、身体は遠目から見てもかなりがっしりとしている。

 半袖から飛び出している二の腕は、ボンレスハム並みに太い。

 普段から鍛えているのか、血管がそこかしこに浮き出ており、ぶつかったりしたら一メートルぐらい吹き飛ばされそうだ。

 短パンの先にある太ももは、競輪選手のごとく自己主張が激しい。

 アキレス腱はテニスボールを詰めているのかと思えるぐらい、大きく膨らんでいる。

 それでいて、顔立ちは整っているから何ともアンバランスである。


 私は関わってはいけない思い、目を合わせないよう彼女の隣を通りすぎようとしたのだけれど、話しかけられてしまった。


「よぉ、ここのカズっちの家って聞いたんだけど、あってる?」


 カズっちって誰?


「あ、わりぃ。カズっちじゃわかんねーか。北村和也の家であってる?」


 正直に答えていいのか分からない。

 彼女は北村くんにとっていい存在とは思えなかった。


「あの……あなたは北村くんとはどういった関係ですか?」


「こっちが聞いてんだけどなぁ~。まぁ、いいや。オレはカズっちのコレ!」


 そう言うと彼女は小指をピンッと立てて、私に見せびらかしてくる。


「え?」


 辻堂さん以外に、北村くんにそんな人がいたなんて……。


「あ、もしかしてあんたもカズっちのコレ? なるほど、『幼馴染』の家は教えたくないってことだな」


「そ、そんなところです」


「まあでも、あんた反応を見て分かったよ。ここがカズっちの家だって」


 彼女は踵を返し、何処かに行こうとする。

 北村くんの家の場所が分かり、目的は達成したので帰るつもりなのだろう。


「あ、あの」


「なに?」


「……」


「オレ今から帰るつもりなんだけど?」


「よ、よかったらご飯ご一緒しませんか? 私がお金出しますから」


「え? いいの?」


 私は彼女に北村くんとどういった過去があるのか気になった。

 明確には言っていないものの、話の流れから考えるに彼女は自分のことを北村くんの『幼馴染』だと認識している。

 それを聞く前に彼女を帰してはいけない気がした。


 私達は二人で近くのファミレスに入った。

 ここで私の想定外のことが起きる。

 彼女は相当な大食いであり、サッカーボールぐらいあるライスをぺろりと平らげてしまったのだ。

 幸いなことに、このファミレスはライスお代わり無料だったので私は一安心する。

 お代わり無料でなければ、私の財布に穴が空いていたかもしれない。


 彼女から話を聞いたところ、北村くんとは幼いころから付き合いはあるが学校が同じだったことは一度もないらしい。

 彼女の地元に北村くんが遊びに来た時に、たまたま出会ったんだとか。

 今は北村くんの傍にいるため、こっち来て就職したとのこと。

 私と同い年なのに凄まじい行動力だ。

 そして、彼女はある計画を立てているらしい。


「メシを奢ってくれた礼だ。あんたもオレの計画に混ぜてやる」


「その計画って、どんなの何ですか?」


「実はな……」


 私は彼女の計画を聞いて確信した。

 お母さんが彼女に会わせてくれたのだと。


(おめでとう! これで北村くんをずっと愛し続けられるわよ!)


 うん、ありがと!


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[良い点] 良心の呵責か悪魔の囁きか
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