19.転校生
章分けいたします。今回のお話から第二章になります。
美里と陸が和解してからというもの、俺達三人の関係性は非常にややこしいものになっていた。
美里は時間があれば、すぐ俺のいる教室に来ていたのだか、以前と比べるとそれが少なくなった。
その代わり、陸が教室に訪れるようになった。
授業の時間を除けば、二人の内どちらかが必ず俺の傍にいる。
昼休みに至っては三人で昼食を取っている。
さて、問題はここからだ。
美里の爆弾発言により、俺達は三人でそういうことをするようになってしまった。
俺は当初それを拒んだのだが、二人にせがまれてしまい断ることができなかった。
それに俺も男である。
男である以上、美女二人と同時にできるという強烈な誘惑には抗えなかったのだ。
ちなみに、「それでいいのか?」と美里に訪ねると、「私とカズくんは『幼馴染』だから問題ないよ。それにりっくんとの約束だしね」と返されてしまった。
そして今度は陸に聞くと、「美里ちゃんはボクと和也くんの世界の一部になったんだ。世界がより輝くからボクは大歓迎だよ」と、むしろそうなること望んでいた。
美里にとっての『幼馴染』というのは、永遠のものであり男女の究極の関係。
怪我でもさせられない限り、俺が誰と何をしようが美里からしたら何も問題はないらしい。
しかし陸にとっての『幼馴染』は、美里の言う『幼馴染』とはまた違う。
『幼馴染』は陸の世界を構成するものであり、この世界とは思い出によって作り上げられるものだそうだ。
故に陸の『幼馴染』は俺と美里になるらしい。
うん、よくわからん。
ただ、陸は恋人と『幼馴染』は別物だと認識している。
だからなのかもしれないが、陸は俺の彼女になりたいと言ってきた。
正直、俺は美里以外と恋人になるつもりはなかった。
だがまた、「りっくんの彼氏になってあげて、お願い!」と美里にせがまれてしまい、渋々陸と付き合うことになった。
どうやら美里は、恋人という関係には全く頓着がないものの、俺に他の女を近づけさせないという意味でその価値を見出だしたようだった。
それに俺が他の女と何があっても問題はないが、焼き餅は焼いてしまうとのこと。
やっぱり美里はかわいい。
そんな俺達は爛れつつも、ある意味充実した高校生活を送っていた。
高校の間は、こんな生活が続いてくれるのだと思っていた。
彼女達が俺の前に現れるまでは――。
★★★★★
授業前の朝のHR。
俺のクラスはざわついていた。
亮がいなくなってから三週間が経過しており、学期の終わりが近いこの時期に転校生が来るという。
不謹慎なことに、クラスの皆、亮のことなど既に頭にない。
どんな人がやってくるのか、ただそのことに胸をときめかせている。
男子は女子が来て欲しいと願い、女子は男子が来て欲しいと願っていた。
俺はというとあまり興味がない。
仮に女子が来ても、俺には美里と陸がいるので関わり合いになることはないだろう。
そう思っていたのだが……。
「村山麗佳です。宜しくお願いします」
亮の元カノ、村山さんが転入してきたのだ。
彼女の肌はシルクのようにどこまでも白い。
髪は首のあたりで短く切り揃えられ、小さな顔とのバランスが取られている。
吸い込まれるようなその瞳に男は虜になってしまうだろう。
かつて亮もその一人だった。
そんな村山さんの美貌にクラスの男子達は歓喜の声をあげ、女子達は嘆息していた。
村山さんは席――皮肉なことに亮が使っていた席である――に担任の教師から案内されると、俺の見て言った。
「北村くん、久しぶり。ずっと会いたかった」
村山さんと俺はそこまで親しくない。
今まで話した回数も数えられるレベルだ。
それなのに、会いたかったとはどういうことなのだろうか。
そもそも俺に声をかけた理由がわからない。
クラスには俺以外にも同じ中学の奴もいるというのに。
俺はそれが疑問で、HR後の授業に集中するできなかった……。
――キーンコーンカーンコーン
本日の授業が全て終わった。
村山さんは男子達に囲まれ、昼休みに俺に話かけてくることはなかった。
いつものように俺の教室に来た陸が村山さんの存在に気付き、彼女に近づこうとしたのだがそれもまた群がった男子達にを阻まれてしまった。
そして放課後となった今、村山さんは男子達を撥ね除けて何故か俺の前にいる。
「北村くん、私まだこの学校にどこに何があるのか分かってないの。もし良かったら案内してくれないかな?」
どうして俺なのだろう。
案内役を買って出たい男子などそこら中にいるはずなのに。
別に男子でなくても、このクラスの委員長は女子なので、その子に頼んだっていいはずなのだ。
というか、委員長は案内する気満々だったようだ。
タイミングの悪いことに今日に限って、放課後は美里と陸がいない。
美里は修理したスマホを受け取るため早く帰り、陸には部活があった。
断る口実もなかったので、結局俺は村山さんに校舎を案内することになった。
★★★★★
村山さんと二人で校舎を回る。
さっさと終わらせようと説明を手短にしているのだが、村山さんがいろいろ聞いてきて中々進まない。
まるで俺と一緒にいる時間を一分一秒でも引き伸ばしたいかのように。
「ふふ、懐かしいね北村くん。こうして二人きりでの話すの。小学生の時以来かな?」
小学生? 何のことだ?
俺が村山さんと出会ったのは中学の時だ。
これは間違いない。
「はは、俺と村山さんが初めて会ったのって中学の時だろ?」
「ふざけてるの?」
村山さんの雰囲気がガラリと変わる。
さきほどまでの和やかなものとは大きく異なり、剣呑なものになった。
「北村くんは私の『幼馴染』なんだよ?
忘れちゃったの?
私とあなたが出会ったのは保育園。
そこで私はあなたに一目惚れしたの。
そう、あなたは私の初恋の人なの。
私はその時からずっとあなたのことが好き。
いや愛してる。
心の底から愛してる。
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。
あなたは私が寂しい時も、悲しい時も、いつも傍にいて慰めてくれたよね?
高校は別になっちゃったけど、こうしてまた会うことができた。
あなたは私と再会できてどう思った?
私は運命を感じた。
これは運命なんだよ。
赤い糸で結ばれているんだよ。
『幼馴染』である私達は結ばれるべきだって、神様がそう言ってるんだよ」
「何を……言って……」
「もう我慢できない! あなたへの想いが爆発しちゃいそうなの。だから……ね?」
不意打ちだった。
何の前触れもなく、急に村山さんに抱きつかれ、そして――。
「んぐっ!」
キスされた。




