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18.『幼馴染』を分け合う方法

6000pt突破いたしました。ありがとうございます!

 陸は銅像にでもなったかのように静止している。

 怒りの感情も悲しみ感情もその表情からは伺えない。

 あえて形容するならば、陸は喜んでいるように見える。


 一方で美里からは陸と敵対する意思が感じられなかった。

 動きを止めた陸を切り付けようとはしない。

 包丁まで持ち出して争っていたというのに、今は哀れみすら感じさせる目を陸に向けていた。


「美里……ちゃん……」


 静寂を破り、陸が口を開く。

 その声にはさきほどまでの狂気は含まれてはいない。

 嵐が過ぎ去った後のように、大人しいものだった。


「りっくんなんだね……。ごめんね……。今まで気づかなくて」


 美里の手から包丁が滑り落ちた。

 そしてガツッと音を立てて床に突き刺さる。


「びざどぢゃああああん」


 陸は包丁を投げ捨て、美里に抱きついた。

 美里はそれを拒むことはせず、優しく陸を抱きしめた。


 人は些細なことで仲違いをすると言うが、仲直りするのもまた些細なことなのかもしれない。


 思い返せば美里と陸は、幼稚園時代の幼馴染だというのに妙によそよそしかった。

 中学で再会した時も、同じ高校に入った時も。


 美里は陸のことを一度たりとも名前では呼ばず、「あなた」と呼んでいた。

 このことから考えるに、美里は陸のことを忘れていたのだろう。

 陸が美里に敵愾心(てきがいしん)を抱いていたのは、おそらく美里が陸のことを覚えていなかったからだ。


 だが、美里は陸のことを思い出した。

 美里が思い出したことで陸の憤りは解消されたように見える。

 実際、陸の手には武器はなく、ぐすぐずになった顔を美里の豊満な胸に押し付けていた。

 ちょっと羨ましい……。


 ひとまず、最悪の事態は回避されたようだ。

 美里がいろいろ気になることを言っていたが、それは追い追い聞いていくことにする。


 美里と陸は抱き合ったまま暫く動かなかった。

 積もる話もあるだろうと思い、包丁だけ回収して俺はその場を離れようとしたのだが二人から引き留められしまった。


 二人の会話を聞いて、いろいろわかったことがある。


 まず一つ目は、美里は亮のことが微塵も好きではないということ。

 美里の亮に対する態度を見ていたら明白ではある。

 それならば何故、美里が亮と付き合ったのかというと俺を狼藉から守るためだった。

 過去に亮は元カノ――村山さんと付き合うために陸に暴力を振るったらしく、美里は自分が告白を断ったら亮は友人である俺に牙を向けると考えた。

 故に告白をOKした。

 俺にその事を伝えなかったのは、『幼馴染』という関係の前には、恋人ができたというのはどうでもいいことだと思ったからだったらしい。


 俺は美里に尋ねた。

 美里の言う『幼馴染』とは何かを。

 『幼馴染』とは、幼き頃から共に時を過ごし、固い絆で結ばれた()()の関係であること。

 夫や恋人を遥かに超越した、究極の愛を誓い合った男女のことだと美里は答えた。


 それを聞いた時、胸が熱くなるのを感じた。

 俺は美里と本当の家族になりたいと思っていた。

 しかし、既に俺は美里にとってのそれ以上の存在になっていたのだ。

 美里が俺から片時も離れなかったのは、俺を愛していたから。

 亮と付き合ったことを責めたからではなかった。


 なら俺はもう自分に正直になっていい。

 素直に喜んでいいのだ。

 初恋の女の子が俺の傍に居てくれることを。


 だから俺は美里に一つお願いをした。

 「亮と別れてほしい。俺のことを大事に思ってくれているのはわかってるけど、恋人がいるのは気になる」と言ったところ、美里は了承してくれた。


 こうして、美里と亮の交際は一ヶ月も経たない内に終了した。

 亮のあずかり知らないところで、勝手に話を進めたことに俺は少し申し訳なさ感じた。


 そして二つ目にわかったことは、その亮を美里と付き合うように仕向けたのは陸であったことだ。

 これだけでも充分に衝撃的だったのだか、話には続きがある。


 俺と亮の関係があそこまで拗れるとは想定しおらず、亮が俺を殴ったのを見て、陸は激情に駆られた。

 怒り心頭だった陸は亮をテニスラケットで殴打し、千鳥足になるまでボコボコにした。

 時系列で言うと、美里が亮と最後の電話した直後になる。


 そうなると、亮が行方不明になったのは陸が原因ではないだろうか。

 それに陸は亮に人前に姿を現すなとも言ったという。

 俺は警察に伝えた方がいいと陸に言ったが、陸は全てを警察に話していたようだった。

 ここ最近、スマホにメッセージを送っても反応が薄かったのはそれが関係していた。


 それならば、陸は停学などの制裁を受けていてもおかしくない。

 そうなっていないのは、陸の父親が警察に圧力をかけたからだとか。

 警察は陸の行為が行方不明なった要因の一つであるとは認めたものの、直接的なものではないと判断したらしい。

 一体、陸の父親は何者なのだろう。


 ★★★★★


 そんなこんなで今は、美里と陸は俺をどうやって分けるかで話し合っていた。


「美里とちゃんは今まで和也くんといっぱい一緒にいたんだから、少しじゃなくて半分はボクに分けてくれないと嫌だよ」


「もう、しょうがないなぁ~。りっくんは」


「でも、どうしよ? どうやって和也くんを分けたらいいんだろう?」


「う~ん、どうしよう?」


 二人して腕を組み、首を傾げている。

 何だか幼稚園の時のことを思い出し、俺は思わずクスりとしてしまった。


「あ、そうだ! これならカズくんを分けられるよ」


 美里は手をポンっと叩き、陸に耳打ちする。


「……」


「なるほど、その手があったね! それならこの家を使おうよ。ここならバレない上に誰も来ないし、邪魔もなされない」


 バレない? 邪魔されない?

 何のことだろう?

 まさか……。


 ――嫌な予感がした。


 四面楚歌で有名な項羽が自刃した後、その遺体は複数に分けられた。

 遺体には懸賞金がかけられており、褒美もそれに応じて分割された。


 もしかして、俺もそんなふうになるのか?

 いや、大丈夫。きっと大丈夫。

 美里と陸はそんな恐ろしいことはしない………はず。


「ははは、まさか俺をバラバラにしたりしないだろうな?」


 冗談交じりに二人に聞いてみる。

 さっきまでことを考えると、あながちそうではないと言い切れないのが恐ろしい。


「アハハハ、そんなことある分けないでしょ。カズくん」


「そうだよ和也くん」


 何だ、良かった。

 流石にそんなことないか。

 あぁ……ビックリした。


「カズくんの身体は一つだし、分けるならカズくんの身体から分泌されたものじゃなきゃ駄目だよね」


 ――え?


「ハーレムだよカズくん! 私とカズくんとりっくんの三人でエッチしたら、子種を分け合えるでしょ!」


 はあああああああああああ!?


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな羨ましくないハーレムは珍しい…
[良い点] 生死の境の死闘をした後は仲良くなっていくというなんていう少年漫画のような展開 美里と陸の狂気がこの形で憑き物のように落ちていくとは流石に予想出来なかった
[一言] 幼馴染するの間違いだよ(笑)
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