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   4.ドラゴンスレイヤー

 私はこの世界で12回生きた。

 次死ねば、もう生まれ変わる事もない、永遠の死が訪れる。

 だがまだ私は成し終えていない。

 故にまだ、死ぬわけにはいかない。

 ならば、異世界に転生し、再びこの世界に戻る事ができたなら、私はまた、新たな生をこの世界で繰り返せるだろう。

 それは禁忌だと?

 誰もやった事がないだけさ。

 いや、出来ない理由を禁忌にしたんだろうさ。

 私なら出来る。

 手を貸してくれないか、バーバラ。

 約束は必ず守る。

 私が必ず、お前の呪いを解いてみせるから。


 長い薄紫色の髪が微風そよかぜに靡き、微笑む紫眼で見つめられ、私はその細く白い手を両手で包んだ。

 彼女は微笑みながら頷いてみせた。

 その可愛らしい仕草に見惚れた私は、吸い込まれるように彼女の唇に、、


 パチクリ

 瞳を見開き、まぶたを瞬いた。

 目を覚ますと、エレンは金色の魔法陣に寝かされていた。

 上半身を起こすと、カチャリと首元で音がなる。

 あのネックレスが掛けられている。

 「あれ? 、、?」

 何か、すごくいい夢を見ていた気がするんだけど、どんな夢だったのか、、思い出せない。

 何だかものすごく、懐かしくて、切なくて、、。

 「うーん、、。うん。わからん。」

 思い出せないし、夢が思い出せない事なんてよくあるし、もういいや。

 それよりも。と、立ち上がってザナ夫人を探す。

 「起きたかい。」

 昼寝から起きたかのような挨拶にエレンはポカンとする。

 ザナ夫人はキッチンで大鍋に何やら湯気を立たせて煮込んでいた。

 「あの、、。」

 エレンは何か言いたくて、でも何て言っていいのかわからなくて口を閉じた。

 「、、魔力不足だね。魔法陣の発現には至ったが、発動には足りないらしい。」

 大鍋を大きな匙で混ぜながら、ザナ夫人はエレンに優しい視線を向ける。

 「まあ、ひとつは失敗したが、ひとつは成功したんだ。そのうち魔力が上がったら、またやるさ、時間なら余りあるからねえ。」

 「何のことだかさっぱり、、。」

 「用はもう済んだよ。さっさと帰っとくれ。」

 「えええ、、。」

 エレンは呆れたようにザナ夫人を見つめる。

 「そうだ、買い物は次回から配達に変えとくれ。もう歩いて魔法陣を描く必要が無くなったからね。」

 「魔法陣を描いてたんですか?! あの金色の!」

 「無尽蔵の魔力を持つ私の魔力不足だとは、まさか、思いもしなかったから気付くのが遅れたけどね。」

 「ちゃんと説明してください! 私一体、、。」

 「思い出せば説明の必要もないだろう。思い出さない其方が悪い。」

 「えええ、、。」


 ネックレスは常に首から掛けておけと言われて追い出されたエレンは、商店街を歩いていた。

 疲れた。

 何だか物凄く疲れた。

 色々と考えを整理しなければと思うものの、色々とあり過ぎて何から考えればいいのかわからない。

 前世の前世?

 紫の人は誰?

 金色の魔法陣は、、ドラゴンの心臓、、

 え? もしかして私、ドラゴンの心臓食べて長寿になってるんじゃ、、?


 気が付くと、フレーバーズの前まで来ていた。

 いつものようにドアを開ける。

 「、、エレン。どうした?」

 マスターが頬を引き攣らせてグラスを拭いている。

 「なにが?」

 「ん。大変言いにくいんだが、、ドヤ顔がすごい。」

 エレンは「はっ」として頬を両手で覆う。

 そうか。だから今日は誰にも声を掛けられなかったのか。

 恥ずかしい、、。

 「実は、ドラゴンの心臓を食べたかもしれなくて。」

 「ほう、、。」

 マスターはカウンターの下の棚をゴソゴソしだす。

 「まあ、食べてみな。」

 「、、何ですかこの気味悪い色、、。」

 皿に無造作に乗せた、紫色のピーナッツのようなもの。

 「マカナッツだ。」

 「(ポリポリポリ)、、無味無臭。」

 「食べるとスキル鑑定が出来るようになる。まあ、猛毒だけどな。」

 「!」

 食べちゃった!

 「大丈夫だ。ドラゴンの心臓は毒無効も付与される。、、本物なら。」

 「!」

 ひどい! 偽物だったらどうなるの?!

 「そろそろいいんじゃないか。手のひらに意識を集中すれば、自分のスキルが見えないか? もし、ドラゴンの心臓を食べてなければ、魔力を使った途端にぶっ倒れるが。」

 「こわっ!」

 「せっかく食べたんだ、見てみろって。」

 いやいや。そんな、やって当たり前みたいな顔で見られても。ぶっ倒れるのは私ですからね。

 こわいなー。やだなー。

 

 エレン 人型

 転生人 上級執事 女神見習い

 隷属無効 毒無効

 大胃袋 仮死再生 長寿


 「うわっ。」

 手のひらの辺りに紫色の文字が浮かんできた。

 10秒程で空気中に霧散して消えてしまう。

 「見習い、、。」

 いや、今はそこじゃないだろ私。

 長寿!

 「見えたっぽいな。」

 見えましたとも。

 「ドヤ顔になってるよ。」

 「!」

 頬を叩くように両手で覆う。

 「そうか。まあ、ドラゴンの心臓を食べた事は誰にも話さない方がいいな。」

 え。どうして?

 「ドラゴンの心臓を食べて生き残った者は稀だ。長寿を望む者は多く、それゆえ亡くなった者も多い。それだけでも嫉妬や悪意の的になるし、エレンは胃袋も食べている。あとひとつ、ドラゴンのツノを食べれば、ドラゴンスレイヤーの称号まで得る。エレンは今、ドラゴンと意思疎通し、従えるドラゴンスレイヤーに1番近い者なんだ。」

 「え。でもドラゴンスレイヤーなんて聞いたことないんですけど、、。」

 「だろうな。天聖人には1人も居ないからな。」

 

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