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毒手の妖魔

 牢屋から抜け出して、どれくらいの時間村の中を闇雲に彷徨っていただろうか。

 空で何か光ったと思ったら、そのほんのちょっと後に火柱が上がるのが見えた。

 これは只事じゃねえと、走ること数十秒。

 何軒か並んでいた家と家の間を通り抜けた所で、俺は目を疑った。


 とんでもなくデカいトカゲが、さっき会ったばかりの女の子を食おうとしている。


 咄嗟に体が動いてくれて、本当に良かった。

 どうにか助けられたけど、ほんの少しでも遅れていたらと思うと、ゾッとする。

 背筋を冷たい汗が流れ落ちていくのは、走りっぱなしだったこととはまた別の問題だろう。


「ちょっと、お兄さん、邪魔しないでよお。なんなの、アンタ」


 いや、お前こそ一体何なんだよ。

 自分が向き合って話している奴の正体が分からなくて、まじまじと相手の様子を窺ってしまう。

 緑の肌に、黄色い白目と紫の瞳。もみあげがウネウネ動いている女の子。パレオのついたビキニの水着みたいな格好をしていて、体つきは発展途上なんだけど妙にエロい感じがする。

 街中で見かけたらよく出来たコスプレ、撮影現場で共演したら特殊メイクに違いないと思っただろう。

 だけど、本物なんだよな。あれは、多分。

 昨日、二足歩行のトカゲ男を見てしまった身としては、そう思わざるを得なかった。


「まあ、いっか。餌が増えて良かったねえ」


 緑の肌の女の子が、レモンを喰い殺そうとしていたオオトカゲの頭を撫でる。

 改めて見ると、あのトカゲの大きさヤバすぎるだろ。

 尻尾まで入れたら、昔、動物園で見たライオンの二倍はあるぞ。尋常じゃねえ。

 理屈じゃないんだ。デカくて、肉を食う生き物は怖い。一目で本能が恐怖を訴えかけてくる。


「それで? 格好つけて割り込んできたお兄さん、こっからどうするの? 無駄死にの方法はいっぱいあるけど」

「…………無駄か、どうか試してみろよ」


 やたらとこっちの神経を逆撫でするような喋り方をするガキだ。

 自然とこっちの口調も荒っぽくなってしまうのは、仕方がない。短気なのは自覚してる。


「あれ? もしかして私のこと、舐めてる? 魔力もろくになさそうな人間のくせに」

「舐めた口きいてんのはお互い様だろ、クソガキ。親に口の利き方教わらなかったのかよ」

「ああ?」


 俺の挑発に、クソガキの目がすっと細められる。

 なるほどな。こいつ、人のことは煽るくせに、自分が煽られるとキレ散らかすタイプの女か。

 いよいよガキだなとは思うけれど、油断はできそうにない。状況からすると、こいつとオオトカゲにレモンはやられたんだ。さっき見た火柱が普通に飛び交うような戦いなら、実力は疑いようがない。

 一度だけ横目で倒れているレモンを確認してから、俺は腰元のベルトに手を伸ばす。


 昨日みたいに都合よくなんとかできるとは限らないけど、やるしかない。


「まずあっちの変な格好の男から食べていいよ。あれはすぐ殺していいから。ほら、行け」

「ヴルルルルルルル…………」


 緑色のガキにトン、と脇腹を蹴られ、オオトカゲが俺の方に向き直る。

 口元に並んだ牙と牙の間を、細くて先の割れた舌が何度も出入りしているのが見えた。横に黒く裂けたような二つの瞳が俺を捉える。完全に狙いを定められたな、これ。


「ガゴアアアアアアアアアアアアアア!」


 ガバリと限界まで口を広げたトカゲが突っ込んでくる。ごちゃごちゃ考えても、仕方ないなこれは!


『Draw your sword STRIDER!』


 俺の意思に反応したように光り出したベルトから、剣の柄が現れる。

 昨日みたいに悠長に構えている時間はない。俺は前に足を踏み出しながら剣を抜き、叫ぶ。


「変身!」


 一歩目で全身が光に包まれる感覚がやってきて、二歩目には鎧が現れた。

 三歩目にはもう、オオトカゲは目の前。涎を撒き散らしながら、俺を食い殺そうと襲いかかってきている。


「しつけが、なってねえ!」

「グゲッ――」


 固めた拳を力一杯振り抜いて、トカゲの顔面を殴りつける。

 拳骨から肘にかけて手応えを感じたのは一瞬のことだった。その後にやってきたのはふわりと浮くような感覚。フルスイングのパンチで生み出した衝撃によって空気が震えて。


「え?」


 吹き飛んだオオトカゲが、自分のすぐ脇を通り過ぎていった。

 その事実を理解できなかったのか、緑色の肌のガキが数回目をしばたかせた後、ゆっくりと振り返る。


「嘘でしょ? ただの人間が、こんな馬鹿力……」

「今の俺の格好が、ただの人間に見えるのかよ」

「なに? その変な形の鎧? 魔力、じゃないけど、なんか変な感じがする」


 後ろでひっくり返ったまま痙攣しているオオトカゲと、俺の様子を見比べて、緑色のガキは気味が悪そうに眉をひそめた。

 変な感じ、とか言われても、俺だってこの力がなんなのかよく分かってないんだから答えようがない。


「なるほど。お兄さん、まあまあヤバそうだね。これは私も、本気出した方がいいのかな?」

「どうだろうな。このままそいつを連れて帰ってくれたら、痛い目みないですむかもしれないぞ」

「図に乗るなよ。人間」


 そう言った途端、緑色のガキの雰囲気が変わった。

 さっきまでのこっちを舐め腐って見下したような態度じゃない。

 鋭く細められた両目が、冷たいのに、肌がヒリヒリするような威圧感を放っている。


『ヴェノ・アトラスープラ』

「!」


 緑のガキが小さく何かを唱えたと思ったら、その体の周りから勢いよく水が噴き出し始めた。

 地面からほとばしった水は重力とかそういう自然の法則を無視して、ねじれ、渦巻きながら、意思をもっているかのように動き始める。その数は、一、二、三……八本だ。緑のガキを囲むように揺れ動くその様子は、イソギンチャクの触手に見えなくもない。

 そして、あの水の触手の色、ヤバいな。黒とか青とか紫とかの絵の具をぐちゃぐちゃにかき混ぜた時の、筆洗いの中みたいな感じだ。見るからに触っちゃ駄目ですよと言わんばかりじゃねえか。


「私は毒手の妖魔ネルグ。誇りに思っていいよ、人間。私にここまでの力を使わせたんだから」

「なあ。名乗るのはいいけどさ、毒とかそういうの、黙ってた方がいいんじゃないのか? ネタがばれてたら、みんな避けるに決まってんだろ」

「あはっ、避けられるもんなら、避けてみてよ! お兄さん!」


 ネルグが凶悪な顔で笑った瞬間、八本の触手が一気に襲いかかってくる。

 一本は真上から、一本は真横から、一本は少し遅れて斜めから。

 水の触手達は俺の逃げ道を防ぐようにして押し寄せてくる。


「くそっ、確かにやべえな、これっ! すまん、レモン、抱えるぞ!」

「へ? うへぁっ!?」


 後ろで倒れたままだったレモンを左の脇に抱えて、俺は大きく後ろに跳ぶ。

 さっきまで自分がいた場所をえげつない色の毒水が呑み込んで、地面を溶かしているのが見えた。

 俺を包んでいる鎧がどれくらい頑丈なのかは分からないけど、あれに飛び込んで確かめる勇気はない。

 まして、生身で動けないレモンなんか、あれを浴びたらひとたまりもないだろう。


「逃がさないよ!」

「……!」


 着地した次の瞬間には、毒水の触手が地を這う蛇のような動きで俺を追ってくる。

 今度は横に跳んで躱したけれど、それを先回りするような軌道で別の触手が回り込んできていた。間髪入れずに体を仰け反らせて避けはしたが、鎧の表面をかすめるようにして水流が通り過ぎていく。

 あっぶねえ。こんなもん、いつまでもやり過ごしてられないぞ。


「どうしたのぉ? 近づけなきゃ、ご自慢の怪力も意味ないよねえ!」


 ネルグの楽しそうな声に合わせて、踊るように動き回る触手達。

 悔しいけど、その通りだ。あれをすり抜けて、ネルグに近づかない限り俺には反撃のしようがない。

 とりあえず、レモンを安全な場所に下ろすのが先決なんだけど。


「……わたしの、ことはっ、いいから!」

「はあ? いいわけないだろ! 巻き添えで死んじまうぞ」

「このま、まじゃ、どのみち、でしょう! とにかく、はなし、て」


 どうにかネルグの攻撃をやり過ごしていた最中、抱えていたレモンが身を捩り始める。

 この状況で何考えてんだ、こいつ!


「おい、動くなって! 落ちるぞ!」

「ちょっと、みみ、かしなさい!」

「耳? 悠長に喋ってる暇なんか」

「はやく!」

「わかったよ! ほら! 手短に頼むぞ!」


 必死に抵抗してくるレモンを、小脇に抱えていた状態から両腕で抱える、いわゆるところのお姫様抱っこの体勢に持ちかえる。これならギリギリ、逃げながらでも耳元で話せるだろ。


「い、ま、あいつの、ねらい、は、あなた。わたしはねらわれてない、から、そのへんにおいててもへいき」

「ああ、まあ、たしかにっ! そうかもなあ!」


 多分、レモンはネルグの毒にやられてるんだろう。全身に力が入っていなくて、息も荒いし、呂律もろくに回っていない。ひどく聞き取りにくい声だが、それでも必死に何かを伝えようとしているのはわかった。

 ひっきりなしに追いかけてくる毒の触手をかいくぐりながら、俺はなんとか耳をすませる。


「このみず、うごきに、きまりがあり、ます」

「……! それ、ほんとか!」

「あいつの、うで、のうごき。よく、みて。あれで、あやつってる」

「腕って、でもお前、触手は八本もあるんだぞ」


 言われてみれば、ネルグはさっきから両手をかざしたり、振り上げたり、振り下ろしたり、ひっきりなしに動かしているみたいだ。

 だけど、その動きとは関係なく、動き回っている触手もある。

 というか、むしろそっちの数の方が多い。


「ち、がう! うで、にほんじゃ、ない!」

「は?」

「ここ……こ、こ!」

「!」


 とん、と、レモンが震える指先で触れたのは自分のもみあげの部分。

 なるほど。そういうことか!


「お前、ほんとすげえな」


 俺に抱えられて揺さぶられてるこの状況で、よく気づいたもんだ。

 あのネルグの頭に生えてる、タコみたいな小さい六本の足。

 あれも触手の操作に使われてやがったらしい。

 だから、両手とあわせて、毒水の触手も八本。

 自動で俺を追いかけてくるわけでもなければ、これ以上、増えることもない。

 それなら、近づく方法はある。


「ありがとな。後は俺に任せて、休んでろ」

「……は、え、ちょ」


 レモンは自分をその辺に置けばいいと言っていたが、万が一って事もある。

 ちょっと、荒っぽいけど、この際、しょうがない。

 俺は両手で抱えていたレモンを高く持ち上げ、反動をつけ。


「やだ、やめっ……」


 ほんの少し離れた所に見えていた、家畜小屋っぽいところに向けて放り投げた。

 レモンは悲鳴もあげずに空中で緩やかな放物線を描き、俺の狙い通り小屋の中に落下する。藁らしいものがいっぱい積んであるところに落ちたし、多分大丈夫だろ。


「えっと、お兄さん、ドン引きなんだけど……」

「うるせえな。誰のせいだと思ってんだよ」


 女の子を遠投して戦線離脱させた俺に、ネルグが信じられないものを見るような視線を向けてくる。

 手荒になってレモンには申し訳ないが、毒で溶かされて死ぬより、遙かにマシだ。許して欲しい。


「どうせどっちも殺すから、逃がしたって意味ないのに。可哀想なお姉さん」

「それはどうだろうな。勝手に決めつけんなよ」

「ふうん、じゃあ、どうなるか試してみる?」


 ネルグが両手を広げ、それに合わせて八本の触手も高く立ち上がる。

 もみあげのところの触手も、同じように動いてる。

 やっぱり、レモンの言ってたことは間違いなさそうだ。


「のたうち回れ! 人間!」

「断る!」


 ネルグが両手を振り下ろしてから触手が動き出すまでに、ほんの僅かな時差がある。

 それで十分だった。

 さっきまで闇雲に逃げ回っていたのとは違う。動きが先読みできれば、避けられる!

 ネルグの両手と、顔の横の触手の動きから目を離さないようにして、俺は上下左右から襲いかかってくる毒水たちを躱し続ける。少しずつ、少しずつでいい。距離を詰めきれれば、こっちのもんだ。


「ちょこまか、よけるなあああああ!」


 さっきまでより明らかに簡単に攻撃をやり過ごされることに苛立ったのだろう。

 叫んだネルグが両手を組んで、ねじる。顔の横の触手達も同じように三本ずつ絡み合うのがわかった。


「死ぃ、ねええええええええええ!」


 毒水の触手の八本全てが一カ所に集まり、渦を巻きながら太く、一本に束ねられる。

 数が減って、避けやすくなったと思い、すぐに気づく。

 背後にあるのは、レモンを放り込んだ家畜小屋。この規模の攻撃に呑み込まれれば、あんな木造の建物なんかひとたまりもないはずだ。

 俺の表情の変化を見取ったネルグが、にいいいっ、と残忍な笑みを浮かべる。

 自分か、それとも、守るべき人か、選べるものなら選んでみろとでも言わんばかりに。


『ドリヴェノ・アトラスープラ!』

『Lethal Blast!』


 ネルグが叫んだのと、俺がベルトのバックルの側面を力一杯叩いたのはほぼ同時。

 猛然と迫り来る毒水の塊を前に、俺は閃光を放ちだした自分の剣を両手で握り直す。


「ふきっ、とべえええええええええええええええ!」


 下からすくい上げるように剣を振った瞬間、光とともに空間が歪むような衝撃が飛んだ。

 衝撃波は回転しながら激突した水の塊を容赦なく引き裂き、蹂躙して。

 おぞましい色の毒水を内側から破裂、霧散させた。


「うそ、でしょ」

「いいや! ほんとだよ!」


 自分の必殺の技を止められて、呆然とするネルグとの距離を俺は一気に詰める。

 懐に入れば、もう、水の触手では止められない。

 これでとどめだと、俺は剣を振り上げて。


「ひっ――」


 目の前で恐怖に顔を歪ませた女の子を、見てしまった。

 ぎゅっと目を閉じ、細い腕で迫ってくる刃から身を守ろうとするその姿は、肌が緑色でも、たとえどれだけ異形であっても、人間にしか見えなくて。

 本当に殺すのか? という声が、頭の中で膨れ上がる。


「ぎゃひん!」


 だあ、もう畜生! 無理だよ!


 剣を持っていた右手ではなく、俺は左の平手でネルグの頬を思いっきり引っぱたいた。

 周りの空気が震えるような凄まじいビンタに違いはなかったし、ネルグは五、六メートルくらい後ろに吹っ飛んだけれど。

 こっちを本気で殺そうとしてきた相手に対する態度としては、かなり甘いんじゃないかと思う。


「い、いた、いたい! ひどいぃ! いたいよおお!」


 派手にはっ倒されたネルグは頬をおさえ、涙を浮かべ怯えた表情で俺を見る。


「し、信じられない! この、私に、こんなっ! こんなの!」

「うるせえ! 悪さしたお前が悪いんだろが! ぎゃあぎゃあ騒ぐな!」

「死ねっ! この暴力男! 変態! だれかああああ! たすけてええええ!」


 泣き出したかと思えば、性懲りもなくこのくそガキはぁ!

 この絵面だと、まじで俺が悪いみたいじゃねえか。

 とりあえず、とっ捕まえておとなしくさせないとうるさくてしょうがない。


「さわんな! このっ!」

「おわあああっ!」


 ぶしゅうぅっと、音がして、ネルグの全身から紫色の煙が放たれた。

 俺は咄嗟に目の前に手をかざして、身を守ろうとしてしまう。


「あ! あいつ!」


 そして、霧が薄くなった時には、ネルグの姿は忽然と消えてしまっていた。

 どうやらまんまと逃げられてしまったらしい。

 やってしまった。ガキみたいな見た目だけど、あいつのヤバさは本物だったのに。

 俺は溜息をついて、ベルトに手をかけ変身を解除する。


「ああ、そうだ」


 レモンの奴、大丈夫だっただろうか。

 いくら藁の中に投げ込んだとはいえ、打ち所が悪ければ怪我くらいさせてしまったかもしれない。

 体も自由に動かせないみたいだったし、助けてやらないと。


「おーい、レモン……だいじょうぶ、か?」

「…………おかげさまで」


 家畜小屋に入った途端、藁の山にうずもれているレモンと目が合った。

 言葉とは裏腹に、目を三角にしてこっちを睨んでくるその表情は不機嫌以外のなにものでない。


「なあ、投げちまったのは悪かったけどさ。怒るなよ。あの場合、他に方法なかっただろ」

「おこって、ません。いいから、てを、かしてください」


 いや、怒ってるじゃねえかよ。

 まだ体を満足に動かせないみたいで良かった。この状態なら、さほど騒ぎもしないだろ。

 そう思って、レモンに近づいた瞬間。


「あ、れ?」


 かくん、と膝から力が抜けた。なんだこの痺れみたいなやつ。

 長い時間、正座していた後のビリビリに似た感覚がすぐに全身に広がっていく。

 その結果。


「……っ!」


 俺は前に倒れ込み、レモンの胸元に顔を突っ込むことになってしまった。

 顔面の両側から凄まじく柔らかい感触に挟まれて、水浴びの時に見てしまった白くて大きな二つのあれのことを思い出してしまう。

 すっげえ気持ちいいし、なんか良い匂いもするんだけどさ。


 こういうのは、合意のうえじゃなきゃ、ろくでもないことにしかならないんだよなあ。


「ちょっと! あなた! いきなりなにするんですか! はやく、どいて!」

「……ごめん。むり、かも。からだが、うごかね」

「はあっ!?」


 迂闊だった。これ多分、ネルグが最後に撒いた毒霧のせいだよな。

 変身を解いたせいで、空気中を漂っていた残り香的なやつにやられたのかもしれない。

 俺は頑張って体を起こそうとして、レモンは手でなんとか押し退けようとしているんだけど、お互いに力が入らないせいでどうにもならない。

 こりゃ、どっちかの毒が抜けるか、誰かが助けに来てくれるまでこのまんまだな。

 俺は早々に諦めて、女子の体の中でも特に柔らかい部分に身を委ねることにした。


 うん。大きさのおかげで挟まるから、すっげえ安定する、この体勢。


「もおおおおおお! なんなんですか、あなたはああああああ!」


 弱々しいレモンの悲鳴が家畜小屋に響き渡ってから、しばらくして。

 俺達は、様子を見に来た村人のおじさんに助けてもらったのだった。

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