スタイリッシュにプロポーズすればよかった。
俺は今日、盛大に失敗した――――。
「あ、え? 私が言うの?」
「うん」
「えっと、結婚式がしたいです」
結婚は決めていた。でもその後の話は進んでなかった。
彼女は天涯孤独なので結婚式とか頭にもなかったようだった。やっと結婚式をしたいって言ってくれて、俺の育ての親に報告する事になり、彼女に言ってもらった。
照れて言うから凄く可愛い。
そんな彼女を眺めていたら、義父が物凄く怒った顔をして立ち上がった。
「え? 駄目? ごめ――――」
ビックリして涙目になってる。可愛い。
――――ゴスッ。
義父に力いっぱいの拳骨を頭に落とされた。
「グッ…………痛い……」
「馬鹿もんが! 何を考えとるんじゃ。言わせる奴があるか! 何をニコニコしとるんじゃ!」
「だって……嬉しいし」
「お前が嬉しいのは判っとる! 家族が出来るのが嬉しくてしょうがないのも解る。が、まず彼女を喜ばせろ! そういうのはお前に話す責任があるんじゃ。ちゃんとせい!」
「はい……俺達の結婚式挙げたいです。ちゃんとお嫁さんにしたい。二人みたいな式がしたい。していいですか?」
育ての親は晩婚だった。しかも俺を引き取った後に結婚式をしたので、俺も式に参加した。皆に祝福されていた。幸せそうな式が子供心にも羨ましかった。
育ての親に許可を求めるのには理由がある。市の特別顧問とか謎な役職で市長より立場が上なので色々と報告義務やしがらみがある。
「わかった。色々準備の手伝いも手配もしてやる。だがその前に、彼女にちゃんと言ってやれ。今のだけで泣いて喜んどるじゃないか」
横を見ると笑顔でボロボロと泣いてた。慌てて抱き寄せる。
「席を外すから、二人でちゃんと話せ」
「……甘えてごめん。俺からはちゃんと言ってなかったな」
「んーん。甘える貴方はね、好きなの」
「ん。なぁ……」
抱き締めるのを止めて、両手を繋ぐ。
「順番逆だけど。俺と結婚してください。結婚式挙げてくれませんか? 今はまだ独り占めしてたいけど、いつか家族……子供も欲しい」
「っ――――はい! する!」
「ん。ありがとう。愛してる」
「うひひ。私も」
あぁ、こんなに可愛く笑うんなら、もっとちゃんと早くに言えば良かった。
本当に失敗だったな。
もっと格好良く、スタイリッシュにプロポーズすれば良かった。
スタイリッシュなプロポーズってどんなんやねん。と、思ったけど……まぁ、きっと凄いんでしょう(笑)