なんか続けてみた1
浅間緘廼と友達になり、家に戻る桜木九十九。先程まで見知らぬ洋館に行っていたと思わせないほど疲れた様子がない。
あ、今度会ったときに能力のこと聞いてみよう。そのためにも彼女を家に招待してあげよう。多分夜なら大丈夫だよね。彼女のコミュニケーション力をあげるためにも招待してみていいと思うんだよね。外に出たことがなさそうだったから。
ボクの部屋は歴代のゲーム機がおいてある。ここ最近はVRのものしかやってないけれど。
部屋に戻ると、ブロンドの髪でサファイアの瞳をした十二、三歳くらいの容姿の整った少女がいた。白い無地のワンピースを着ている。それだけならただの少女と思うだろうが、半透明だった。
多分、というかほぼ間違いなく幽霊だろう。この世界は人間以外の者が多いため、幽霊自体は珍しい訳ではない。実際、家系的に桜木家の人は幽霊が見える者も多い。
でも、この少女を見たこともない。普通ついてくるにしてもどこかで見たことがなければ来ない。生前かもしれないけど、最近この近くでこんな容姿の少女が死んだというのは聞いていない。
「突然に失礼。ねえ、頼み事があるんだけど手伝ってくれない?」
少女は普通に話しかけてくる。理性はあるようで悪霊という感じはない。あったら母親が祓っているはずだけど。認識してなかったら、何する気だったんだ。
「やだ。ゲームする時間がなくなる。人外の依頼は面倒だし。『公共機関』に頼んで」
「あれ?聞こえてるの。じゃあ記憶取り戻したいから手伝って」
声は届いていないと思っていたらしく驚いていたが、すぐに依頼をしてくる。これはまさか、記憶を取り戻さなければ離れないタイプ。くそう、返さないのが正解だったのか。
「だから嫌だ。『公共機関』に頼んでよ。そんなの」
「へえ、じゃあゲームとしよう。私の記憶を取り戻す手伝いをする。取り戻せれば君の勝ち、私は離れるよ。時間制限はなし。記憶を取り戻す前に私が消えたら君の負けってことで。ゲームに自信があるなら断らないよね?」
提案という名の挑発をしてくる幽霊の少女。断らないという自信があるのだろう、笑みを浮かべて此方と目を合わせてくる。その目に内心舌打ちをする。
なんでゲームなら断らないって知ってるんだよ。ボクは別にゲームが好きなだけで命を捨てたい訳じゃない。というか記憶を取り戻すって潜入、交渉、推理だよ。ボクはそこまで得意な領域じゃない。
「命の危険は?」
「私が認識している限りじゃないよ」
「ならそのゲームをやろうか。得意な領域ではないけど、まあやってみれば違うかも知れない」
とかなんとか思いながらもやるけどね。ゲームを仕掛けられて逃げるのは、ね。
ボクはそこまできてあることに気づく。そういえば自己紹介してない。名前を覚えているか、は分からないが聞かないというのは常識的にどうなのか。やった、と先程までとは大違いな様子で喜んでいる少女。いや、今までも明るいとは思っていたし自分の意見をごり押してくるから子供っぽいとは思ってたけどさ。ポルターガイストを起こして喜びを表現する程とは思わなかった。
「あの~、喜んでいるのはいいんだけど。名前ある?ボクは桜木九十九」
「あ、そうだった。漣伽だよ。よろしくね!」
先程触れなかったことを漣伽に聞く。
「なんで『公共機関』に頼まないでボクにしたの?」
「その『公共機関』ってなに?」
まさかの『公共機関』を知らない、だと。この国で『公共機関』を知らないって世間知らずなんてものじゃないぞ。
「『異能力対策?機関』のこと。通称『公共機関』と言われる。犯罪者の逮捕、殺害による防止や世界の謎を解き明かそうとする機関なんだけど。ちなみに、この地域にいる『公共機関』所属のグループはまともに仕事できている人がいない」
「そうなの?じゃあ九十九に頼んでよかった!偶然いた洋館で見かけてついてきただけだったけど、直感も捨てたものじゃないね!」
直感かい。あの屋敷にいたのかそれも。そういえば椅子が倒れたのだけはなにか違ったな。
「もしかして、椅子たおしたの?」
「うん、そう!ポルターガイストは起こせるよ、こんな風に」
パァンとラップ音がする。かなりうるさい。なんでそんな自慢気なのか。
「ポルターガイストが起こせれば驚かし放題だからね。幽霊が見えてない人はかもだよかも」
うわあ、何て嫌な考え。怖いものやら、驚かしてくるのが苦手な人はアウトだな。というか幽霊を見ることができても、そのラップ音は驚く。
「なんであの洋館に?」
「それは知らない、なんか気づいたらいた。で偶然九十九がいたから驚くかなと。洋館の人物にばれたい訳じゃなかったから、そこまで派手じゃないけどね」
派手さを求めるな、派手さを。真面目さがないのか基本が。