結局黒歴史後編
いつもの解決してない終わり
さて、次は左側の通路でも探索しよう。と言っても何もないと思うけど。こういっておくと何か起きるって言っていたから楽しみだな。
左側の通路は右側の通路とは違い扉は一つしかない。相変わらず窓がないため、主催は吸血鬼という説が高まってくる。扉が先程の客間等の部屋に使われていた扉より大きく装飾も派手である。
扉を開けるとそこは食堂のようだった。机には花瓶が置かれているが花は入ってない。椅子は等間隔で合計十個、左右に五個ずつで置かれている。埃が積もっている訳ではないが使われている様子もない。
奥にもまた扉がある。その扉を開けるとキッチンのようだ。比較的大きめの冷蔵庫、IHコンロ、二つ蛇口のついたシンク、調味料が置かれた棚。
大体これくらいかな。電球でも少し思ったけどこの洋館電気が通っているのかな。それとも能力かな。ないと思うけど立地というのもあるんだよな。IHコンロがあるとは思ってなかった。冷蔵庫の中には何も入っておらず電気だけ通っているようだ。
「全部見てみたけど、全体的にこの食堂自体が使われた形跡がないんだけど。なんのためにあるのか」
結局何もなかった。気落ちしながら部屋を出ようとしたところであることに気づく。椅子が一つ倒れていた。どう倒れたかは分からないがボクは扉を閉めずに奥を調べていた。集中していたとはいえ、一つ隣の部屋でしかも椅子が床に倒れる音というのは案外大きい。このような場所でそれに気づかないボクじゃない。勿論能力を使用された場合はその限りじゃないが。
「うん、まさかかなり自由度が高い能力な感じじゃないよね?『公共機関』の案件は嫌だよ。ボクの知り合いの『公共機関』に属する奴は苦手なんだ」
まあ、ほとんど何もなく左の通路は終わった。ここまでで見つける鍵はほぼなし。関係ありそうなのは、窓のない通路、同一人物が作った人形が沢山ある部屋、使われた形跡のない左の通路の先にある食堂。能力に関係ありそうなのは、電気、動き出した人形と繋がっていた糸、椅子が倒れた事。糸は物理的に切れるがどこから繋がっていたかは、天井かな。
あと調べてないのは二階と奥にあった扉かな。
なんで椅子が倒れているの。私の洋館に招かれざる客はいらない。確かにあの部屋は使っていた訳ではない、けれど貴方の物でもない。私の物だから。でも何で、音がしなかったのか。この洋館でそれができるのは私だけなのに。
何者かは、椅子を倒した者に憤慨する。そして疑問に思っていた。何故ならそれは、属性すら騙すほど強い干渉だから。
『属性』とはこの世界で生まれた者全てが持っているものである。能力はこの属性を概念化、解釈をする事で関連をさせ使うものだ。属性に干渉するというのはその人物が一番得意な領域で争う事なので普通は行わない。そのため自分の属性がばれないように能力を決めるというのが一般的だ。属性がばれると抽象化をやりにくくなる。抽象化せずそのままだったらその限りではないが。
探索を再開しよう。まずは奥の扉からかな。
奥の扉を開ける。すると中庭といえる場所にでる。薔薇がそこかしこに育てられており、四人くらいで囲めるような白いテーブルが中央に置かれていた。薔薇の舞っている花弁と咲き誇っている花の量が場所の広さとが噛み合わないため能力が使用されていると考えられる。
この場所ならできるかな。招待状をだして招くこと。問題はその人の家にその人を招くとかいう矛盾を解決しなきゃなあ。まあいいや、先に二階行ってから考えよう。
「薔薇の色の種類が多いな。能力を使ったとしても難しいだろうし、レイアウトは大変だろうに」
階段自体の高さは変わってないんだけど、なにかな。この違和感は。なんというかこの、誘われているような誘われてないような。属性に矛盾が生じるというのは無さそうだけど、属性に矛盾はありそうだよね。そういえば創造という属性はあるのかな。ないとは言わないだろうけどチートだろうな。属性自体がチートだと思うけれど、この世界曖昧なところが多すぎる。属性もズレもなんだか分かっていないし、原理も謎。基本が自己暗示ってなにさ、それ。ゲームだとするとなんか地雷感しかしないな。
閑話休題
なんか思考が暴走した。二階には扉が一つしかなく、一階のように調べるような部屋が多い訳ではないらしい。
扉を開けると白とピンクを基調とした壁と家具が目に入る。ここは人の生活している気配があった。机の上には日記が置いてある。ほぼ確実に主催者のものだろう。そして誰もいない部屋を見渡す。誰もいないんだよねえ。となると招待した方がはやい。そしてTRPGプレイヤーとして日記を見ないという選択肢はない。主催者さんごめんなさい。心の中で謝っておきます。
日記一ページ目
**から日記でも書いてみては?と言われたので書いてみる。どうやって書けばいいのかな。思いつかないから自分のことでも書いておこう。記憶喪失になったときに使えるかもしれないから。浅間 緘廼、吸血鬼。案内人をやってる。属性は記憶喪失だとしても分かるだろうからもし見られた場合のことを考えて書かない。
あと何を書けばいいかな。友達についても書いておこう。
****************
この先一ページの内容は読めない。というか日記を書いてみては、と提案した人の名前が読めないんだけど。何語かな。喫茶店の名前と同じ言語か、もしかして。そして主催者の名前発覚。次はなにが書いてあるかな。
二ページ目
なんで、幻想を破る人がいるのかな!ふざけないで!なんで、ただ幻想を嫌いだからって理由で何もかもを消しかけたの!それもむかつくくらいに強かったし!止めてくれる人がいなかったら消えるところだった。自衛手段手に入れよう。最低でも能力作って努力しないと属性が完璧ではないということがわかったんだから。
始めの方の文字がかなり荒れていたな。それにしても、もしかして人形が動き出したのってこの自衛手段な気がしてきた。ゲームだから一室にしか置いていなかったのかな。属性の相性じゃなかったんだろうな、能力を作って対策って。確かにボクも刺されたら死ぬから。
そして、偶然だよね。幻想を嫌う、破るって表現は。『公共機関』に所属する人にその条件にはまる人がいるんだけど。
三ページ目
ふふん、**に見せたら褒めてくれた。自衛手段を持とうとした理由を聞かれたから答えたら溜息をついていた。知り合いだったようで次はしてこないらしい。でもなんで**の名前を呼べるし書けるのに認識できないのかな
ちょっとまてい!唐突になにが起きているんだ。この急展開は『公共機関』のみでいいわ、別に。くそう、急展開が基本だとテンションが安定しない。ゲームのみでいいよこんなテンション。なんで日記に突っ込みをいれなきゃならないんだ。こんなテンションだから集中しているときのギャップが酷くて幻滅したとか言う奴がでるんだ。というかいちいち時間がとびすぎだろうこれ。
そのとき、扉が開く。日記の内容に突っ込みを入れていて集中が切れていた桜木九十九は開いてから気づく。そこにはフリルの多いワンピースをきた子供がたっていた。フードを被っていて顔が見ることはできないが服装のみを見ると女の子だろう。女の子の方も驚いて固まっている。
「あの、ごめんなさい。勝手に日記見て」
「あ、えと。大丈夫です。そこに置きっぱなしにしていたのは私だったので」
声をかけるとはっとしたように動き出す。ゲームはボクの勝ちなんだけどなんか釈然としない。おどおどとした口調で話しているが聞き取り難い訳ではなく、声の質がそのようなものなのだろう。つい主催者、そして吸血鬼となると緊張して観察をしてしまう。
「ゲームは桜木様の勝ちなんですが報酬はなにがいいですか?」
「何でもいいの?」
「私があげてもいいなと思ったものなら」
そう言われ迷う。正直、勝利報酬の事は考えていなかった。というか向こうが決めていると思っていた。せっかくの出会いだっていうのに、これでもらって終わる関係というのもなあ。日記を見てしまったことで気になることもあるからこれにしよう。断られたらまた考えよう。
「ならボクと友達になろうよ」
間違い探しはまだ終わらないです。
日常が基本なので