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新旧世界・別枠  作者: 頭の軽い奴
序章
1/12

結局黒歴史前編

深夜テンション注意

 

  桜木(さくらぎ) 九十九(つくも)と呼ばれる少年はスキップをしながら自宅に向かう。九十九は肩甲骨位まで伸ばした黒髪で焦げ茶色の瞳をしており、その髪は風に靡いている。彼は先程あった事を思い出す。


  それは、いつも通りの帰り道を歩いていた時のことだった。交差点で信号機が青になるのを待つ桜木九十九の周りに、霧が立ち込め始める。不自然に立ち込め始めた霧に疑問に思ったのだろうか、桜木九十九は周りを見渡す。


  人通りの多い、退勤ラッシュの時間の駅前だが立ち込め始めた霧に疑問に思う周りの人はいない。というよりは霧がある様に見えているのは桜木九十九一人と考えた方が自然だろう。

 その間にも霧は濃くなり有効視界が一メートルを切っている。


 属性の事もあり、桜木九十九はこの霧が一種の招待状という事に気付く。


  招待されたからには行くというのが桜木九十九の信条である。自分の属性を利用して断る事も出来るが其をせずに、挑戦的な笑みを浮かべて霧を睨む。その瞳は焦げ茶色ではなく桜色に光っていた。

「さあ、鬼が出るか蛇が出るか。楽しみだね」

 言い終わると同時に霧が晴れる。


  すると今までいた都会のど真ん中ではなく薄暗い森の中であった。目の前には年季の入った洋館が建っている。周りを見渡すが、他に人はおらず、目の前の洋館以外に建物もない。招待してきた人物は洋館の人物なのだろう。桜木九十九は洋館が放つ不気味な雰囲気に怖気づく事もなく開いている門を潜る。


  門を潜ると同時に門が勝手に閉まる。ボクは後ろを向き潜った門の状態を確認するが、鍵がかかっている訳ではない。どうも空間に固定されている為に開かないようで、それは規則(ルール)として使われる物だ。

 あの招待状はゲームのお誘いという事だろう。ルール説明もなく勝利条件も敗北条件も分からないゲームに参加している事に気付いて溜息を吐く。そして、自分の持ち物を把握していない事に気付いてもう一度溜息を吐く。


「ああ、確かめてなかったなあ。うんと、携帯、筆記用具、白紙の紙、封筒、筆ペン、・・・・手紙?それもボク宛か」


 送り主の名前は書いておらず宛先が桜木九十九様となっていた。封を開け中を読む。


『突然ですが、ゲームに参加して貰います。ルールは簡単です。私を見つける事。貴方の勝利条件は勿論貴方が私を見つける事。敗北条件は貴方が降参をする事。私は逃げます、妨害もします。殺害をしない程度ですが、事故で死ぬ可能性もあります。事後承諾ですが敗北はいつでもできますよ』


 読み終わった後、溜息を吐く。降参なんて、命の危険があるなんて、よくある事だよこの世界では。突然何の対処も出来ずに死ぬ事の方が多いというのに、事故の可能性程度で怖気づく訳がない。ボクは手紙の挑発に乗り、ゲームから降りるという選択肢はない。やる気をだし洋館の中に入る。

「さて、ボクにゲームを仕掛けてきて勝てるとでも?」




  洋館に入ると、自分のすぐ横を何かが通り抜けて行く。通り抜けた先を見ると其処には銀製のナイフがあり壁に突き刺さっていた。それを一瞥した後、入ってきた扉を閉める。唯一あった光源が無くなり、辺りは真っ暗になる。すると辺りにあった電球に光が灯り明るくなる。


「だと思った。入ってきた瞬間は仕掛ける脅迫には最適だし、電球があって点いていないのは不自然」


 点く為のスイッチがあると考えるのが自然だしね。さっき勝手に門が閉まったからもう一回勝手に、というのは二番煎じになる。テンプレートとしては普通扉が閉まって点く物だからね。流石にテンプレートを踏襲しているギミックはこれだけだろう。楽しみだなあ。


  この洋館は桜木九十九が先程外から見た感じだと二階建てで、今居る場所は当然ながらエントランスだ。奥には扉が一つあり、手前の方には二階に行くための階段がある。向かって右の壁にも左の壁にもそれぞれ何処かへと続く通路がある。


「つまり、奥の扉、二階、左右の通路の四つか。これは調べるだけでも一苦労だなあ。ボク引きこもり系ゲーマーなのに」


 (しらみ)潰しに探索をする事を決め、まずは右の通路に向かう。

 電球は等間隔についており、通路の幅は人が二人横に並べる程度しかない。通路の行き止まりまで行って分かった事は、部屋が四つあるという事だ。扉の間隔は変わっていない為、単純に考えるなら部屋の大きさは変わらないだろう。


 ただ歩いていて疑問に思った事は窓が無いという事だ。桜木九十九の知っている中で窓があると困る種族というのは一つしかない。

 それは吸血鬼だ。もし仮に吸血鬼となると万が一戦闘になった場合は勝ち目がない。


「偶然という可能性もあるし、ルール的に戦闘はないはずだよね?」


  奥から順に部屋を開ける。一番奥の部屋は客間だ。ベッドが奥に置いてあり、その横に棚と机が置いてあるだけの簡素な部屋だ。棚の中には本が数冊入っていて机の上には何も置いていない。気になる様な物もなかったのでその部屋を後にする。


  その隣の部屋の扉を開けた途端、咄嗟に閉める。中を軽く見ただけだが人形が此方を見て佇んでいた。それも一体じゃなく、数えきれない位沢山の。流石にホラー耐性があるとしても不意打ちには弱い。つい、嫌な想像をして呟く。


「人形ねえ。動くのが多いけど、このゲームの主催者って人形じゃないよね?見つける難易度が上がるんだけど」


 能力を使えると言えど、ただの人間の高校生である桜木九十九には食糧のない今の状態では持って二日だろう。其れまでに見つけなければ死ぬ。

  扉をもう一度開けると、やはり人形が此方を凝視していた。ある事がわかっていれば視線を感じる程度だが急に動き出す事も十分考えられる。その為、気を抜かずに部屋を見る。

 棚の所にずらりと並べられた人形がある。時期や場所問わずの人形が置いてあり、細部の作りが似ている事から同じ人物が作ったのだろうと予測できる。

 人形を見ていると、横から物音がする。音がした方には浮き上がり、先の尖った棒を剣の様に持つ人形がいた。よく見ると糸がついており、その糸で操られているらしい。


「へえ、クオリティ高いなあ。でもそれに武器を持たせちゃいけないと思うな、壊されるかも知れないのに」


 桜木九十九は探索をする前に作っておいた招待状を取り出し出来るだけ壊さない様に、操っている糸を切断し無力化をする。

 桜木九十九の招待状は媒体であると同時に武器としてズレを使って強化している。桜木九十九にとってズレとはゲームでいう魔力のようなものだと思っている。だが人によって解釈がバラバラな為、[公共機関]の研究者が毎日頑張って研究している。未だに芳しくないが。


 閑話休題。


  動きが単調な為、無力化は簡単だが数が多く疲れが目立ち始める。それでもなんとか全て無力化をし一息つく。


「はあっ……やっと終わった。もう一度動いたら困るから一旦部屋から出よう」


 部屋を出て扉を閉じきる直前に、カタという音が聴こえた。再び戦闘になる前に部屋を出れたことで安堵の息を吐く。

 そして早々しない運動をさせられた為、床に座りこむ。

 暫く休憩すると、また立ち上がり隣の部屋の扉を開ける。二つの部屋を見るだけでこの洋館に入ってから一時間が経過していた。


  他の部屋はまた客間だったため何もなかった。


「まさか一つの通路を見回りきるのに一時間半かかるなんて。というか二つ目の部屋のせいでとても疲れたあ」





  ゲームに誘ったのは私だったけどまさか乗ってくるとは思わなかった。

 そう思う何者かは桜木九十九の様子を見ていた。友達に人が怖いと相談したら、ゲームを主催して見るといいと言われた。

 だから丁度良さそうな少年を連れて来てしまったけれどゲームのやり方これでよかったかな。逃げると書いてしまったが逃げに徹してしまうと勝ってしまうから出来る限り行わない様にしないと、と決意を決める。

 勝ち負けなんてどうでもいい、会って見たい。そう思った原因は一つ。だってあの人は私が大切にしているものを壊さないでくれたから。

 その感情は一種の恋に近い物という事にこの何者かは気付かない。


後編もあるけど、頑張れ間違い探し

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