入学試験2
心の準備の時間などあるはずもなく、突然彼女の顔が眼前に飛び込んできた。
その目付きは鋭く、まるで冷気を伴っているかのように凛としている。迷いなどないと言わんばかりに真っ直ぐ、無機質に………。
私は睨まれている………。
幼い日から積み重ねた罪悪感が、一瞬にして私の胸を握り潰す。
急な胸の動きに空気は居場所を追い出され、それは裏返ったような変な声へと変わる。
「アメリア!」それも思っていた以上の大声でだ。
瞬間、私は両頬から耳、頭にかけて、血が沸騰したかのような熱さを感じた。
咄嗟に下を向き、視線をアメリアの顔から足元へ。ヤバい!すっごく恥ずかしい!
私は睨まれている。
羞恥心に捕らわれた頭の中は、湿度100パーセント!しかも熱帯夜!みたいな不快感におそわれる。なんだか朦朧として、思考が頭のなかで霧散する。
我を忘れぬように思考を固めようとかき集めては霧散する。それを繰り返す。
私は睨まれている。
それはもちろん、変な声を出したことも原因ではある。
が、この場で堂々としていられない自分や、あのときのおろかな自分。
それから今までずっと疎遠となり、遠くから見ているしか出来なかった………。
そんな自分を恥ずかしいという気持ち。
それとアメリアに対しての罪悪感。
それらが混じりあった感情は、鎖のように私の体を縛り付け自由を奪った。
息も苦しいくらいだ。
私は睨まれている。
だが私はそれと同時に違うことも考えていた。
こんな至近距離で!しかも真正面でアメリアの顔を見たのはいつぶりだろう。
訳のわからない両極端の感情が、私の心臓の回転数を上げていく。
私は睨まれている。
先ずその目!大きく丸く可愛らしく縁取られ、瞼にはそれ以上美しい軌跡はこの世にはない!というような二股のライン。
細くともはっきりと見えるその二重は、可愛らしさのなかにも凛々しさを携える。
そのなかに収まる瞳は、清らかさのなかに叡知の片鱗を垣間見せる。
どこまでも澄んだエメラルドグリーン。
まるで神秘の泉のようだ。
どんなに鋭く睨んでも、その魅力は陰りはしない。
私は睨まれている。
そして髪!何処までも優しく、柔らかそうで春の太陽を思わせる黄金色のながい髪。
今は極寒のオーラを放っているアメリアだが。
そのながい髪はオーラを飲み込んでもあまりあるほどに暖かそうだ。
私は睨まれている。
そしてその体躯!小柄で、胸は平均より少し発育がいいようで。
体の肉付きも母性愛を感じさせるような、細すぎず、もちろん太いことなんかなく………。今すぐにでも抱きつきたい。
それにフワフワ浮いていて、こんな人間いていいの?
優しさの妖精っていたらこんな見た目なんだろう。そう強く思わせる。
そして私はそんな天使に睨まれている。
今日まで生きててよかった。と、今すぐにでも死んでしまいたい。とを、両方一緒に味わい私はもぅなにも考えられません!
例えるなら。世界一美味しいステーキと、世界一美味しいデザートを食べさせて上げます!
ただしミックスジュースで。みたいな………。