一話 テイムされました。
モチベ上がってきた、だがストックがないのだ…
次回は7月
光に包まれたかと思いきや暗闇に囚われて数分が経つ。
ようやく開けた視界には…
「………」
そこには、こちらにそれぞれ剣と杖を持ち、自分と対峙している二人の少女がいた。
その表情を見るにかなり切羽詰まっており、こちらを物凄い形相で睨んでいる。
…マジかよ、いきなりこんな状況かよ神。ってかこれやばいだろ!これ敵対してるよな、斬りかかられるのはさすがにマズイ、何とかしないと殺されてしまいそうだ。転生してすぐに死ぬのは避けたい、
「あれ…動きが止まった…?」
「…ってことは…」
その場で動けずにいると二人からそんな声が上がる。しまった、何かしないと斬られ…
「「やった テイム成功だー!」」
武器をしまい込み手を合わせて喜ぶ二人の少女、よかった、殺されずに済んだ。
……って、待て、テイム?俺ってばモンスターなの?と、慌てて自分の体を確認すると、まるでゲームの終盤に出てくるようなおどろおどろしい悪魔の姿だった。背からは黒い翼が生え、額に2本の角、どう見ても下位の悪魔、見た目はガーゴイルだ。
うわ…マジかよこれ、確かに人型だけどさぁ…と心の中で神に悪態をついていると、興奮冷めやらぬといった状態の杖を持つ少女が近づいてきて、何やら首輪のような者を俺の首にくくり付けた。
その首輪を着けられた途端、その少女が美しく、同時に愛おしく思えてくる。だが思えるだけで、そう言う効果の首輪もあるのかも知れないと自分を納得させた。異世界だしな、うん
気を取り直し、二人に向き直る。
剣を持ち、鎧を着込んだ少女の方は、やや高身長で、翡翠色の髪は、首がハッキリ見える程短い。薄水色の瞳、キリッとした目付きがそのショートヘアーに相まって、とても活気に溢れていそうなイメージだ。
もう一人の杖を抱いてローブに身を包んだ少女は、身長は低め、洋紅色の長髪に真紅の瞳と、もう一方とは対照的なたれ目であり…何故だかこちらを見る目がうっとりと陶酔しているのは首輪の効果のせいだろう、たぶん…
「あたしはドロシーだよ、とりあえずはい、これ着て。」
ドロシーと名乗った少女は着ていたローブを羽織らせてくれる、薄いローブだったがとても暖かく、何かが宿っているような気がした。
「ほら、ケントも自己紹介しなさい。」
「あ…うん、そうよね!私はケント、使う武器は長剣よ!」
さっきまで呆然としていた剣士…ケントは勢いよく自己紹介した。
そして俺も自己紹介をしようと……
…あれ?
俺の名前って……何だっけ?
ってかまず喋れるのか?
「グァ…ガ…」
声を出そうとするも、出るのは低い呻き声だけ。
やっぱり喋れはしないのか、このままペットとして暮らすってどうかと思うぞ神、あのグダグダの意味は何だったんだ。とまた神に悪態をつく。
…不毛だ、やめよう。
と自分の境遇を呪い恨むのをすっぱり辞めようとしているとケントが声をあげる。
「名前決まった!名付けしよ!」
「あ、それいいね、どんな名前にしたの?教えてー」
ほう、名付けか、名前をつけられるのは言いが、どうにも嫌な予感がする。せめて否定の意思表示を…
「グォ…ッッァアアアアッ!!!?」
反論…まぁ喋れないので首を振ろうとすると突如首から痛みが襲う。まるで頭の中に直接流し込まれているような痛みを耐える術はなかった。
有無を言わせない拘束力に耐えられずに名付けをやけくそ気味に受け入れる素振りを見せると痛みは止んだ。
(この痛みは……この首輪か)
痛みが止んでもなお痛む頭を抱えながら首元に注目するとそれは、やけに装飾の凝った首輪だった。金を基調とした土台に、やけに大きな紫色の宝石が喉のあたりに付いている。とても普通の首輪とは思えなかったが、こんな効果があったとは…
「隷属の首輪ってこんな効果だったのか…、まぁいいか、さぁ名付けに入ろうかー…君の名前は今日から……………ポチだ。」
…隷属の首輪?ってか待って、ポチ?
長い溜めの後に発せられたその一言に反応したのか首元の宝石が光ったと思うと、突如として急激な頭痛が襲ってきた、声を出す余裕すら与えられない苦痛。思考に何かが紛れ込んでくる感覚が頭痛に拍車をかけ、声を出す余裕すらない。
しばらくして痛みは治まったが未だに頭がクラクラして、眠気が襲ってくる。これもまた意識を保てそうにない、強制力が働いていそうなくらい強力な眠気。
何故か今寝たらいけないような気がするのだが、眠気に耐えられず体の力を抜いてしまう。
「うわっと、大丈夫?」
バランスを崩した俺は、柔らかい感触に支えられるのを感じながら眠りに落ちた…
おまけ
『…行ったか』
白い空間に声だけが響く。
『やはり人間か、思慮浅い。』
その声は、見下すように独り言を呟く
『観察させて貰うぞ、ふふふ…』
その空間は役目を果たし、消えようとしている。
『うふふふふ…』
男性とも女性ともとれなかったその声は、今度は明確な女性の声でほくそ笑んだ。
次回に主人公が変貌するかも