違いがあるらしい
順調に授業が進み、五限目が終わって残すは六限目のみとなった。
六限目は体育館で体育の授業だそうだ。
体育館の授業だけ、隣のクラスの四組と合同らしい。
何故か四組にも男はいないので、一クラス40人だから、二クラスで80人、その中で男は俺だけになる。
最高だ。
それはいいのだが、授業で時間が無かった事と、編入したばかりで更衣室の場所が分からないという悲劇が起きた。
(時間ないし、更衣室どこかわからない。…困ったなぁ。…まあ、いいや、ここで着替えるか)
教室でそのまま着替える事にした。
急いで制服を脱ぎ、ジャージに着替える。
着替える時に、Yシャツの下に何も着ていなかったので、上半身裸になった。
((……っ!!!?))
そして、鞄から体操服を取り出し身につけた。
(あ、そういえば、男子はジャージを上下着ないとダメなんだっけ?)
担任にそんな事を言われた覚えがあったので、ジャージもきっちり着用した。
(さて、それじゃ体育館に行くかな?…ん?)
着替え終わった後、クラスの皆にガン見されている事に気がついた。
クラスの女子の大半が固まって動いてなかった。
何人かは暑いのか鼻血を出していて可哀想だった。
…どうしたのだ?もしかして俺のせいか?
「修史くん、その顔は自分が何をしたか分かってない顔だね。私と少し話そうか?」
「あっ!は、はい!」
呆れ顔で俺の肩をポンッと天音さんは叩いた。
その後、天音さんに無防備過ぎる、しっかり更衣室で着替えろと説教を受けた。
時間が無くて焦っていてすっかり忘れていた。ここは男女比と貞操観念の異なる世界と言うことを。
…次から有効活用…いや、気を付けようと決意した。
(はぁ。全くっ!修史くんは何処か抜けてるなぁ。私は修史くんがYシャツに手をかけた瞬間に、察して見なかったから落ち着いていられたけど、他の女子達はきっと…。)
天音は教室を見渡し、修史の上裸を見てしまい発狂寸前のクラスメイトを見て少しため息をついた。
(…あーでも、松本くんの上裸、見れなかったのは残念かな。見たかったなぁ。…いけないいけない、気にしちゃダメだ。)
天音は若干後悔していた。
その頃、修史はクラスメイトの意識を戻す活動に専念しながら、考え事をしていた。
「皆、意識をしっかり!体育に遅れちゃうよ!」
「「はっ!?ここは天国!?」」
「違うから!落ち着いて!」
授業には遅れたくないので、頑張った。
…どうやら、この世界では男性が女性に上半身裸を見せることは、とてもエッチなことのようだ。
前の世界で例えるなら女性が上半身裸になって男に見せるようなものかな。
反応からするにそれ以上かもしれないが。
…うん、前の世界でそんな痴女がいたら襲われてるわ。
今回、襲われなかったのは奇跡かもしれない。
この世界は俺の常識が通じない時が度々ある。
全部ではないが貞操観念が逆になって、男性の価値が大幅に高くなったような、そんな感じがする。
…サービス精神を出しつつ、この世界を楽しんでいきたい。
「おーい、早香さん、大丈夫?」
クラスメイトに呼び掛けた後、隣で鼻血を出して真っ赤になっている早香さんに声をかける。
間近で見たからダメージが大きいのだろう。
目が何処かに行ってて怖い。
可愛い女の子の…あへ顔?みたいなのは個人的に見たくなかった。
「はっ!ここは天国?」
「現実だよ、戻っておいで!その~、なんか、ごめんねっ!」
「…い、いえいえ、とんでもない!えっと、その…すごく…引き締まってて…素敵でした。あっ、思い出したらまた意識が……」
「戻って!」
「はっ!?ご、ごめんね修史くん」
あ、良かった、早香さんは元に戻ったみたいだ。
なんかまだ、目がトロンとしてるけど。
その後、他の女子も元に戻して体育館へ向かったが、何人か遅刻だったので注意された。
まあ、それでも体育の授業は楽しかったので良かった。
ー 放課後
「松本くーん、ちょっと…いいかなぁ?」
ホームルームが終わって直ぐに連行され、その事件の事で佐藤先生に延々と注意を受けた。
しかし、佐藤先生は仕草がセクシーで、服の胸元が開いていたので、俺は全く話を聞いていなかった。
見えそうで見えなくて悔しかった。
この世界でならセクハラを俺がする分には大丈夫ではないか?と考えてしまったので、反省したい。
((どうしよう!?松本くんの上半身の光景が頭から離れない!))
((…修史くんの…体…素敵っ!))
その頃、クラスの女の子は修史の上裸姿が脳裏から離れずに、悶々としていたのであった。
ー 佐藤先生から解放されて、家についた。
本当は放課後、天音さんか早香さんと帰ろうと思ったが、天音さんはバイト、早香さんは部活があるため、一人で帰った。
「お兄ちゃん、お帰りなさい!」
「ただいまー!芽亜」
家に着くとすぐ妹に出迎えられた。
嬉しそうに駆け足で寄ってくる妹の姿に心が和んだ。
その後は夕食を済ませ、妹とソファーで休みつつ今日貰った、ラブレターや部活のビラを読んだ。
「お、お兄ちゃん。やっぱりすっごくモテるんだね…。…むぅ!」
手紙の量を見て妹は唇を尖らせていた。
ラブレターの内容は「一目惚れしました!」が圧倒的に多かった。
まあ、そりゃそうだけど外見だけでなく、内面も見てもらいたいと切実に思った。
(今はどう動いたらいいのか分からないから、この手紙達は…取り敢えず保管…かな?)
モテすぎた事など生まれてから無かった俺は、手紙の事に頭を悩ませた。
ラブレターの中には「体だけの関係でもいいから!」や「一回ヤらせて」などの内容を書いていた人がいたが、それは流石に駄目だと思ったのでスルーした。
どうせなら純愛したいからね。
…でも、一回くらいなら…いや…我慢だぞ修史!
ー ラブレター等の保管が終わった。
それからはテレビをぼうっと見ていた。
すると、23歳のOLが43歳の会社員の男性に痴漢で逮捕されるという事件がニュースで流れていた。
しかも、逮捕された女がかなり可愛くて驚いた。
「へぇー、珍しいことも起きるものだね」
「…?お兄ちゃん、何が珍しいの?」
「え、だって若い女の子がおっさんに痴漢だよ。普通逆じゃないか?」
「…?何いってるの?お兄ちゃん疲れてるんじゃない?男の人がそんな事するわけないよ」
…な、なんだと!?
この世界に来て三日目、新たに分かった衝撃的事実。
この世界で性的被害者は圧倒的に男性が多い。
まあ、何となく察していたけれどマジだったらしい。
俺はSでもMでもないけど、Mの人だったら嬉しい事実ではないだろうか?
(まあ、まず犯罪なんてそう簡単に身近で起きるものじゃないし、大丈夫だろう。それに積極的な女性も好物だしね。)
予想通りの貞操逆転の世界と言うことに驚いたが、俺は痴漢されても別に平気なので気にしない事にした。
あ、勿論、相手が可愛ければだけどね。←クズ発言
ー その後 ー
しれっと妹と一緒にお風呂に入り、そのまましれっと妹の部屋まで付いていった。
「お、お兄ちゃん!?」
「芽亜、一緒に寝よっか!お兄ちゃんベット広過ぎて、起きたとき寂しいから。…だめ?」
必殺技、ダメかな?+上目遣い 妹に発動。
「…っ!う、ううん、芽亜も一緒に寝たかったから」
妹、一瞬で陥落!
そんなこんなで妹を抱き枕にしながら就寝した。
妹はジャストなサイズと柔らかさと温かさで完璧だった。
同じシャンプーを使っているはずなのに、何故か甘い香りがした。
お陰で気持ちよくて俺はすぐに眠りにつけた。
(む、無理!こ、こんなのドキドキして寝れるわけがないよ~!お兄ちゃんのバカ~!)
翌朝、妹は目の下にくまが出来ていたので、暑くて眠れなかったのかなのかな?と思った。
エアコンの温度をしっかり調整しておけばよかったと反省した。
ー 次の日 ー
妹の作った朝ごはんを堪能し、支度をして妹を送り、今は電車の中にいる。
ここまでは昨日とあまり変わっていないが、電車の中は昨日と状況が変わっていた。
(あ、暑いし、人多すぎるだろ!)
昨日までは混んでも満員電車のようになることなどなく、つり革や席には余裕が見られていた状況だった。
が、今は完全な満員電車だ。
俺は扉の側の席に座っていて、窓の外を眺めていたが、ふと、お年寄りのおばあちゃんが入ってきたことに気付いた。
おばあちゃんは、オロオロとしていたので、日本人らしく声をかける。
「おばあちゃん、どうぞ、席にお座り下さい」
「どうも、ありがとうね!若いのに偉いね」
「いえいえ!」
俺は立ち上がり、ちょうど近くに出来たスペースに移動した。
良いことをしたので清々しい気分だ。
(ん?今日は、高校生が増えたな?)
同じ高校の制服を着た人や、昨日まで見なかった他校の生徒も大勢乗っていた。
(同じ方面の高校生、結構いたんだな。友達でも出来れば、登下校一緒に帰れるんだけど。)
そんな事を思っていたら、俺の周りにいた女の子たちが両手を上げ始めた。
…多分だが、痴漢しませんアピールだろう。
(女性が男性に痴漢するケースなんて少ないと思ったけど、昨日のニュースの通り、この世界だと男性が被害者なんだ。…いい世界だなぁ。)
ー ガタンッ!
「キャッ!」
考えて事をしていると、電車が少し強めに揺れて後ろにいた高校生がぶつかってきた。
ムニュッ!
…っ!こ、この背中に当たる感触は!?
「ご、ごめんなさい!」
後ろの女の子は離れようとするが、ここ満員電車の中である。
動こうにも動けず、もがいたせいで背中に当たっているものが上下に揺れ、より感触が鮮明になる。
(後ろの子、大丈夫だよ!グッジョブ!全然嫌じゃないよ!)
女の子の顔は見えないが、背中の全面に柔らかく包み込まれるような感触を感じたため、かなりの巨乳だということが分かった。
さらに女の子の香りがふわっとして心が晴れやかになった。
ー ガタンッ!
またまた電車は揺れ、今度は後ろの女の子が離れて、前にいた女の子がぶつかってきた。
前にいた子は妹くらいのサイズなのに高校生の制服を着た、一部の人が大喜びしそうな女の子だった。←俺も喜ぶ
軽く茶色に染めた髪をスカートの裾まで伸ばし、茶色っぽいつり目をした可愛い女の子だった。
子どものような体型に、子どものような白い肌が眩しく見えた。
目付きのせいか、少し性格がキツそうな印象を受けた。
その女の子は、俺にぶつかると思ってとっさに手を出した。
しかし、それがいけなかった。
ここで思い出して欲しい。
妹と同じくらいの身長ということは、頭は俺の溝内辺り。
肩は俺の股間の辺りになるわけだ。
何を言いたいかと言うと…
「ぐはぁっ!!」
女の子の頭は溝内に、伸ばした手は俺の股間を下から押し上げるようにヒットした。
「わ、悪い!わ、わざとじゃないんだ!ご、ごめん!」
(むしろご褒美…ではない。恥ずかしいから放っておいてほしい。)
「大丈夫だよ。」(ニコッ!)
周りに女の子がたくさんいる状況でかっこ悪いところは見せたくないので、女の子に気にしないようにしてもらい、目をつむり無の境地に入る。
(まだ俺の息子は使ってないんだから、未使用のまま壊れないでくれよ!)
この世界に来て二回も股間に大ダメージを受けた俺は、切実にそんな事を思っていた。
(強く当たったけど、大丈夫かな!?何かグニュッてしたし。あ、あたい、ちゃんと謝れなかった。どうしよ、情けないぜ。)
(…さっき前にいた男の子に、後ろからぶつかって、迷惑をかけてしまいました。あの人、すごく良い匂いでした…って何言ってるのでしょう私は!?…そういえば、あの後ろ姿、どこかで見た事あるような?)
修史の願い事の一つ、「モテたい」の効果か、新たなフラグが生まれて行くのであった。
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