表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/90

天音のバイト先にお邪魔したらしい

夏休み…なんて…無い!

投稿遅れてすみません

突然だが俺は今、天音のバイト先に来ている。

というか、電柱の影から息を潜めてバイト先を覗いてる。


何故俺が天音のバイト先に来ているかというと、理由は単純、昨日の夜に天音からデートに誘われたからだ。


昨晩、スマホを開くと天音から「修史、明日の午後は暇?」とメッセージが届いていた。

「暇だよ!」と返信したらデートのお誘いを受けた。


どうやら午後はバイトが無いらしい。

紛れもないアタックチャンスだ。


天音のバイト先は、天音の家の隣にある。

隣といってもピタッと家と家がくっついている訳ではなく、広い路地を挟んでいる。


バイト先のパン屋の店名は「ピーターパン」だ。

パンの種類が豊富でそこそこ人気があり、中でもメロンパンが絶大なる支持を得ているらしい。

焼きたてのパンの香りが周囲に広がっており、店の前を通る人の二人に一人はお店に吸い込まれているような気がする。


外から広い店内の様子が見え、パンを楽しそうに選びトレーに乗せる沢山のお客さんの姿が見てとれる。


(おっ!天音がいた!……きゃわいい)


そんなお客さんの様子を見ながら、愛想良くレジカウンターに立っている天音の姿が確認できた。

営業スマイルかは分からないが、遠目から見ても笑顔が可愛いのは反則だと思う。


笑顔というか、顔が可愛いのも勿論だが、雰囲気というか存在自体が可愛いく思える。

天音がそこにいるって脳が理解した瞬間に、自分の口角が自然と上がるのが分かった。


(天音は俺に気付くかな?気付かないかな?)


ニヤニヤしながらしばらく天音を見つめたが、さすがに目が合うことは無かった。

まあ、この状況で目があったら天音は色んな意味で驚いてしまうだろう。

気付かれなくて幸いだ。



(…さて、そろそろ入るかな)


外からこれ以上覗いてるのも変だと思い、俺はそろりそろりとお店の中に入った。


「いらっしゃいませ!…って修史っ!?」

「よっ!ちょっと早いけど楽しみで来ちゃった」


天音は少し驚いた後、とても嬉しそうに笑った。

仕事場に来られるのは多少迷惑だと思うのだが、そんな様子は一切見せなかったので良かった。


「んっ、そうなんだ。待ってて、あと15分くらいで終わるから」

「おっけー。店内見てるから俺を気にせずに後少し頑張ってね」

「んっ!ありがと!」


俺は天音と軽く話した後、店内をゆっくり見ることにした。

さて、まずはパンの種類から見ていこうかな?


……ん?

なんだか複数の視線を感じるような…。

取り敢えず確認してみる。


「………あっ」


周にいたお客さん達と目が合った。


………どうしたんだい?お客さん達。

そんなにじっと俺を見つめて。

何か顔についてるかい?


気になったので聞いた。


「どうかしましたか?」

「「……はっ!?い、いえ、その……す、すみません!!」」


よく分からないが何故か謝られた。

目が合った瞬間にそっぽ向かれるし。

それに、何だか顔が赤くなってるような…。

……あっ(察し)


…ふぅ、これだからイケメンは困るぜ。

凝視されたり、多分盗撮もされたが気にしない事にした。

俺の盗撮写真なんてファンサイトに沢山乗ってるからね。

まあ、それらは主に学校で撮られたものだけど。


そんなお客さん達の様子を見て、天音は少し怖い笑顔を見せていた。

勿論、俺にも何か言いたそうな目線を向けてきた。


……浮かれたい気持ちもあるが、恋人の前でそんな様子は見せれない。

周りは気にせず、天音を待つことにした。




「500円になります!ありがとうございました!」


テキパキと仕事をする天音を気にしながら、時間が経つのをのんびりと待った。


天音と話をしてから15分程経過した頃、カウンターの近くの扉から天音と同じエプロンを着けた20歳前後の女性が出てきた。

おそらく交代の店員さんだろう。


天音はその店員さんと少し話をした後、俺に「もう少ししたら、連絡する」と言って扉へと入っていった。


……取り敢えずパンでも買おうかな?

せっかく来たのに何も買わないのも嫌なので、いくつかパンを買っておいた。


ちなみに天音と交代した店員さんは、俺を接客する際にとてもテンパっていて微笑ましかった。

いくらなんでもパン4個で一万円代にはならないと思う。

レジ打ちでミスするのは微笑ましいが、金額を聞いて焦ってしまった。



パンを買い終えた時、スマホを確認すると天音から「裏口に来て!」とのメッセージが入っていた。

なので、返信をしてからお店の裏口へと向かった。


裏口に着いてから数秒後、裏口のドアがガチャっと開き、可愛い可愛い天音が出てきた。


「ごめん、待たしちゃって」

「いや、待ってないぞ」

「そう?お店に来てから30分くらいは待ったんじゃない?」


俺が勝手に早く来ただけなので、天音が気にする必要は無い。

気を使わせてしまって申し訳ないくらいだ。


「早めに来たのは天音の働いてる姿が見たかっただけだから」

「そ、そう?なら良かった。……ちなみに見てどう思った?」

「うーん。なんだろ?流石だな…って思ったかな?」

「なんだそりゃ」


二人で笑った。

可愛かった!と言った方が良かっただろうか?

まあ、今は面と向かってそう言うのは恥ずかしいので後にする。


「それじゃ、修史。取り敢えず家に行こっか。……楓も日和も今はいないしね。」

「おう!……ん?」


何か重要な事を言っていた気がしたが、取り敢えず天音の家にお邪魔する事にした。



「お邪魔しまーす」


天音の家は新築なので、新築特有の匂いがした。

木の匂いだろうか?

嫌いではない。

リビングに移動した時、天音が話しかけてきた。


「ご飯作ってあるよ。食べる?」

「えっ!?それはぜひ!天音の手料理楽しみだなぁ」

「んっ、あまり期待はしないで。それじゃ、暖めるから修史は座ってて!」

「了解、ありがと!」


手料理とは…うん、素晴らしい。

前に食べたときも美味しかったし、ワクワクする。

いい俺のお嫁さんになりそうだ。


俺と食べる予定で作っておいたのかな?

そうだったら嬉しい。


俺は天音に言われた通り、テーブルの椅子に座って待つことにした。

キッチンで作業をする天音を見たり、ついでに辺りを軽く見渡した。


「ん?あれは…」


ふと、テレビの近くのソファーに見たこと無い、可愛いウサギの人形が置いてあることに気付いた。

なかなかに大きい。


楓ちゃんのだろうか?

それとも日和ちゃんのかな?

どちらにせよ、きっと天音がプレゼントしたに違いない。

きっと喜んだだろうなぁ。

…ふふっ、想像するだけで微笑ましい。

後で天音に聞いてみよう。


……ん?そう言えば楓ちゃんと日和ちゃんは?

いつもなら真っ先に俺のところに駆け寄って来て、抱きついてくれるのに。


「ご飯出来たよー」


そんな事を考えていたら、天音がご飯をテーブルに乗せて、俺と向かい合う形で座った。

取り敢えず聞いてみる。


「天音、そういえば楓ちゃんと日和ちゃんは?」

「んー?言ってなかったっけ?今日は二人とも友達とお泊まり会するみたい。明日のお昼頃帰るってー」

「へぇー、そうなんだ」


初耳だと思う。

二人共いないなんて寂しいなぁ。


「んっ。…取り敢えず冷めないうちに食べよ」

「ん、そうだね。ありがとう。」


取り敢えずお腹空いてたので二人で「いただきます」をしてから食べ始めた。

うん、相変わらず天音の料理は美味しい。

幸せな気持ちになる。


美味しいのでモグモグ食べる。

モグモグ…。

モグ……ん?

……あれ!?もしかして明日の昼まで天音と二人きり!?


「天音っ!」

「んっ?どうしたの?そんな大きい声上げて?」

「えっ?あっ、その……今日泊まっていい?」

「……ん。いい…よ?」


少し恥じらいつつも天音はいいよと言った。

天音のこんな表現は初めて見た。

なんかこう…来るものがある。


「そ、そうか!ありがとう。そ、それにしても天音のご飯は美味しいな」


決して恥ずかしくなって話題を変えた訳ではない。

決して!


「んっ、ありがと!修史にそう言って貰えると嬉しいよ。」


天音の本当に嬉しそうな笑顔を見せた。


俺はその笑顔に胸がときめき、同時に沸き上がってくる衝動を感じた。

天音はそんな俺の心を察してか、頬を赤く染め軽く俯きながら、心の中で何かを考えている様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ