表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/90

全国大会だったらしい

三月にまとまった連休が…。

頑張るぞいっ!

早香の初戦は、見ていて気持ちのよい、圧倒的勝利だった。

早香走るの姿はかっこよくて美しくて、とても素敵だった。

ますます好きになった。


早香は走り終わった後、直ぐに選手控え室へといってしまった。

ゴールしても喜ぶ素振りすら見せず、何かを考えているようだった。

試合を振り返っているのかな?

……声をかけたかったが、仕方ないだろう。


早香のお母さんの声にも反応しなかったからな。

それだけ集中してるのなら、邪魔しないようにしないと。


「修史くん、早香の決勝まで時間あるから、一緒にお昼ご飯でもどうかな?」

「あ、そうなんですか?それならぜひ!……ん?決勝ですか?」


何だか知らない話が出てきて驚いた。

決勝って何だろう?


「あら?知らなかったの?えっとね、今のグループで一位をとったから、次は決勝戦になるのよ。ついでに、もし早香が次の決勝戦で一位になれば、高校生の日本一になるんだから!」

「な、なるほど。……って、ええっ!?日本一ですか!?」


いきなり話が大きくなっててびっくりした。

……あれ?

そういえば俺はこの大会が何の大会かすら知らなかったわ。

まさか、日本一が決まる大会だったとは……。


「そうよ!どう?うちの早香は凄いでしょ!」←ドヤ顔

「……はい、凄すぎてびっくりしました。」←困惑


俺が知らなかっただけで、早香は相当な実力者だったらしい。

まあ、走りを見て速い方なんだろうなとは思ったけど。

それにしてもまさか、決勝だとは……。

どうりで人が大勢いて、テレビカメラも来ていた訳だ。


(決勝かぁ。次の試合、見るの怖いな。頑張ってほしいけれど…)


ここまで来るのにきっと相当な努力を積み重ねたに違いない。

だが、きっと一筋縄では勝てないだろう。

いや、負ける可能性の方が……。


負けるのは仕方ないのだが、負けたときに早香は凄く悲しむ気がする。

そう考えるとあまり見たくないような、見たいような……。

……もう、結果はどうであれ、俺は早香を抱くと決めた。


ーー


決勝までの時間を潰すために、早香のお母さんと近くのレストランに行って、ご飯を食べつつ雑談した。

早香も誘ったのだが、メッセージに既読すらつかなかった。

きっと、決勝に向けて何か準備でもしているのだろう。


「……でね、早香は昔から凄いのよ!」

「そうなんですか!」


食事中、早香のお母さんが早香の昔の話をしてくれた。


早香は小さい頃から元気に走り回る子で、運動会のかけっことかでは、毎回活躍していたらしい。

そんな早香は、中学生で陸上部に入り、負ける悔しさと勝てた嬉しさをバネに、練習に練習を重ねてどんどん成長していったそうだ。


そして、中学三年生で県の大会で一位をとったらしい。

そして初めて全国大会に挑んだらしい。

結果は三位だったそうだ。


「凄いですね!早香は!」と俺は笑ったのだが、早香のお母さんは少し暗い顔をした。

それとなく理由を聞いてみたら、一位の選手と約一秒の差があったらしい。

早香とは身長も歩幅も結構な差があるらしい。


(一秒差……かぁ。百メートル走の一秒って考えてみればかなり大きいよな?それに相手が黒人とは……。黒人のバネや体格に日本人は……勝てないよな)


黒人の速さは誰もが知っている。

俺は勝とうとすら考えない。


「修史くんの考えている事は分かるわ。それでも、早香ったら絶対に諦めなかったのよ!逆に闘争心燃やして練習量を増やしたのよ!凄いでしょ!」

「……そうなんですか。それは……本当に凄いことだと思います」


早香は強いと思った。

俺にはない精神力を持っている。


「今日ね、その早香に勝った女の子二人も決勝戦に出るのよ!だから早香にとってはリベンジマッチってわけ!」

「本当ですかっ!?それは…いい機会ですね。」

「ふふっ、本当にいい機会ね!楽しみだわ!修史くんは早香の頑張りをしっかりと見ていてあげてね!」


早香のお母さんは、そう言って笑った。

その目から娘が勝ってほしいという気持ちが伝わってきた。

近くで早香の頑張りを見てきた分、俺よりもその想いは強いだろう。


しかし、早香のお母さんの気持ちは分かるが、正直な話、俺は早香が勝てるとは思っていない。

最低な発言だが、冷静に分析した結果だ。


勿論、早香には優勝して欲しい。

しかし、いくら早香が練習したところで、相手もそれなりに練習してる訳だし、それに才能の差だってある。

だから、負けるのは仕方が……。

仕方な……。


(いや!待て!俺のバカ野郎!ふざけるな!)


俺は何をネガティブに考えているのだ!

大好きな早香が勝ってほしい!

優勝して欲しい!


そう願うだけで勝機が舞い込んで来るかもしれない。

当事者の早香が諦めて無いのに、俺が勝手に諦めてどうする?

負けるって決めつけてどうするんだ!


……早香は強い!

誰よりも強い!


俺は早香のお母さんの言葉にしっかりと笑顔で答えた。


「勿論です!早香の勇姿、きっちりと目に焼き付けておきます!」


俺の言葉に、早香のお母さんは満足げな表情を見せた。


ーー


食事も終わり、競技場に戻ってきた。

奢ってもらって感謝だ。


決勝だからか人も増え、前の席に空きはなかった。

なので少し後ろの席の端に座った。

早香のお母さんと一緒に応援する。


しばらくして、早香が控え室から出てきた。

先ほどと違って表情は柔らかくなっていた。

緊張をほぐして、リラックスしているのだろうか?


「早香!頑張ってねー!」


早香のお母さんがそう声をかけると、早香が気付いてこちらを向いた。

早香はお母さんに向かって軽く笑みを浮かべた。


……可愛かった。

なので俺も一応、手を降って早香にアピールした。

それに気付いた早香と目が合った。


(察するかなぁ?)


俺だと気付いたらいいなぁと思った。

少しの間、時が止まったかのように見つめ合い、早香の表情が驚きでいっぱいになった。


そんな早香に向かって口パクで「頑張って!応援してるよ!」と言っておいた。

早香にその思いが伝わったようで、満面の笑みを浮かべてくれた。

そして早香は、「ありがとう!」と言って、アップをしに向かっていった。


感覚的な問題なのだが、何となく早香に何か力が宿ったように感じた。

まあ、そんな事より、早香の笑顔が可愛すぎるのが問題だったのだが。

心の中で暴走する「抱き締めたい」という欲求を押さえつけるのが大変だった。


ーー


少しして、いよいよ決勝戦が始まった。

八人による決勝だ。


今年は一年生三人が決勝に並ぶという、異例の大会らしい。

一年生は中学生全国大会の上位三人、黒人の女の子二人と我が恋人の早香。

その他は他校の精鋭達だ。

予想通り、厳しい試合になりそうだ。


八人が並び、各自調整をする。

早香を見てみたが、とても落ち着いた表情をしていた。

何故か少し楽しそうに見えた。


会場にアナウンスがかかる。

そろそろ時間だ。

再び会場が静かになる。


そして……


パンッ!


いよいよ、勝負が始まった。


全員が揃ってスタートする。

遠くから見ていても、かなりの迫力だ。


そしてスタート直後、早香が一歩先頭に出た。


(早香いいぞ!完璧なスタートだ!)


早香は上体を起こしつつ、加速を重ねる。

その加速力でこのまま皆を引き離して欲しいと思った。

だが、流石は決勝戦。


誰一人引き離される事ない。

……いや、それどころか黒人の女の子二人はあり得ないくらいの加速をして、早香との差を縮めていく。

うん、このままだとまずい。

本当にまずい。


えっ、ヤバいよ!

冷静に見てる場合ではないよ!

抜かれちゃうよ!


俺は焦った。

だが、直ぐに焦ったところで無意味という事に気付き、魂を込めて応援した。


(早香、逃げ切ってくれぇ!)


早香が更に加速し、他の女の子と差を開く。

しかし、黒人の女の子二人は、また加速して早香と並んだ。

そしてそのまま早香は抜かれ……なかった!


俺の祈りが少し届いたのか、早香がスピードに乗ったのかは分からないが、横並びになったまま差が開かない。


先頭に早香と黒人の女の子二人、少し離れてその後ろに他の子が並んで走っている。


三人による、優勝争いが確定した。

ゴールまで残り二十メートル程しかない。


俺は祈るように早香を見つめた。


果たして早香は優勝できるのか!?


それは置いといて、この小説でR18行為をしても運営さんは見ていないから大丈夫なのではないか?

…大丈夫!多分大丈夫だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ