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プレゼントをこっそり渡したらしい


理沙が泣き止み、疲れたのかウトウトしだした。

スマホを確認すると時刻はもう深夜三時をまわっていた。


パーティーで主役として立ち回って、俺が寝ている間に起きていてくれて、更に告白までしてくれて、誕生日なのに休みなく動いていたから、そろそろ限界に近いのだろう。

…頑張りすぎだよ、理沙。


「理沙、お疲れ様。今日はもうお風呂入ってゆっくり休みなよ。」

「…嫌ですわ…。修史様が帰るのをお見送りしてからじゃないと寝ませんわ。今寝てしまって、朝起きたら修史様がいないなんて…寂しいですもの…。」


理沙は悲しそうにそう言った。

…ふむ、何を言っているのだろう?


どうやら理沙は俺がこの後帰ると勘違いしているみたいだ。

深夜とか恋人関係とか、そこら辺の考えはどうしたのだろう?

…俺、帰る気などさらさら無いのだが?


まあ、この世界では男性が女性の家に泊まる事が極端に少ないから、すぐに帰ってしまうと思われるのも無理は無いだろう。

無防備に泊まれば、普通は女性に襲われてしまうような世界だからね。

この世界の男性にとっては、女性の家に泊まるという選択肢は無しに近いのだろう。

…俺はこの世界の倫理観など感じないからね。


取り敢えず俺は勘違いしている理沙に教えてあげた。


「大丈夫だよ理沙!俺は明日のお昼頃まで帰らない予定だから。今日は泊まっていくよ。」

「ふぇっ!?ほ、本当ですか!?」

「ああ、勿論だよ!」


理沙の眠そうな目がパッチリと開いた。

そんなに驚く事だろうか?


「今日は一緒に寝て、起きたら一緒にご飯食べて、それからはしばらくダラダラするつもりだったんだけど…迷惑かな?」

「…えっ!?いえいえ!迷惑だなんてどんでもないですわ!…そうですわよね…こ、恋人…ですもんね!」


理沙はなぜか頬を赤らめていた。

若干言い回しが気になったが、取り敢えず安心してくれたみたいなので良かった。

今日は早く休んで貰うとしよう。


「…?まあ、だから早くお風呂入ってきな、理沙。」

「は、はいっ!入念に入ってきますわ!」

「えっ!?う、うん。ごゆっくり。」


理沙は急いで部屋から出ていった。

廊下から何やらメイドさんの名前?を呼ぶ声が聞こえた。

メイドさんに体を洗って貰うのだろうか?

俺もそうしたいのだが…。


「…あー、俺も早くお風呂入りてー。」

「準備は出来ておりますがお入りになられますか?」

「うおっ!?」


後ろから声をかけられて振り返るとそこには水無月さんがいた。

ビックリした。

某スナイパーのセリフを借りて「俺の後ろに立つな!」の言ってやりたい。


「…ちなみにいつからいた?部屋の中に。」

「………知らない方がいいのでは?」

「あっ、はい。…取り敢えずお風呂に入りたいのでお願いします。」

「かしこまりました修史様。」


(…何も考えないでおこう。)


俺は水無月さんに案内されてお風呂に入った。

水無月さんが体を洗ってくれ…たりはしなかったので、普通に一人で体を洗いゆっくりと疲れを癒した。


本来なら理沙とお風呂に入ろうかとまで考えていたのだが、流石に疲れたのでそれは次に泊まるときのお楽しみにしておく。

俺のエクスカリバーが暴走するかもしれないしね。


けっこう長めのお風呂になってしまったので、急いで髪を乾かし用意されたパジャマに着替えて部屋に戻った。

プレゼントはパジャマのポケットにしっかりと移した。


「修史様、こちらをどうぞ。」

「…今日は必要無いので。」


部屋に戻る途中に水無月さんからなにかを渡されそうになったが、しっかりと断っておいた。

なにかとは何かは察してほしい。


「ごめんごめん。長く入りすぎちゃったよ理…沙…っ!?」


部屋のドアをあけて中に入ると、理沙がベットで待っていた。

下着が完全に透けて見える青いベビードールを着て。


心なしか顔が赤く火照っているように見える。


「修史様ぁ…。」


理沙が胸に手を当てて、小さな声で俺の名前を呼んだ。

これは誰がどう見ても誘っているようにしか見えないだろう。

控えめに言ってエロい。

今すぐ脱がしたい。


だが、ここはグッとこらえる。


「…もう夜遅いから寝よっか。」

「えっ…あっ…修史様…その…。」

「今日は色々と理沙は頑張って疲れたね、お疲れ様。もう遅いし、翌日に疲れを残すのは良くないから今からゆっくりと休むといいよ。」

「あっ…そ、そうですわね!…今日はもう…休みますわ!」


残念そうな顔をされた。

有無を言わせぬ言い方をしてしまって、申し訳ないと思う。

期待させといて、いざホテルに誘ったら上手くはぐらかす、前世での女性のような立ち回りをしてしまって心が痛い。


だが、今日は仕方がないだろう。


俺はすぐに理沙のベッドの上に上り、横になった。

理沙はまだ、上体を起こして俺を見つめている。


「ほら、理沙。入ってきな。」


俺は毛布を肩まで被ってから、半分捲って理沙に入ってくるように促した。


「えっ…その…お、お邪魔いたしますわ。」


理沙がそろりそろりと毛布の中に入ってきた。

ついでにさりげなく腕枕をしてあげる。

俺の作ったスペースにすっぽりと理沙は収まった。


理沙はなかなか体温が高かった。

少し暑いが幸せなのでそんな事は気にしないことにした。


「…理沙…誕生日おめでとう。そして恋人になってくれてありがとな。…おやすみ。」

「こちらこそですわ。ありがとうございます修史様。…ずっとずっと大好きですわ。…おやすみなさい。」


その後、少し話をしてから理沙の頬に軽くキスをした。

そして寝ることにした。


理沙は嬉しそうにした後、俺に体を更にくっつけてから目を閉じた。

それからほんの数十秒後、スゥスゥと小さな寝息が聞こえてきた。


「…理沙…寝た?」と声をかけてみたが返事は無かった。

色々と疲れていたのだろう。

糸が切れるように眠ってしまったようだ。



理沙が眠った事を確認したので、俺は自分のポケットからプレゼントの指輪を取り出した。


俺は理沙が起きないようにそっと左手の薬指にはめてあげる。

指輪をはめる指にはそれぞれ意味があるが、左手の薬指は絆や愛を深め、願い事を叶えるという最強の効果があるとされているらしい。


理沙は寂しがりな方なのですぐに俺の存在を感じられるプレゼントがいいなぁと思って指輪を選んだのだ。

指輪を見て俺を思い出し、寂しくないようにして欲しい。


俺の込めた意味合いはそんな感じだ。

まあ、実質、婚約指輪にあたるものになるだろう。

婚約指輪とか結婚指輪の違いや意味は、前世で縁が無かったので詳しくは知らないが。


(…これからもっと愛が深まりますように!)


俺はプレゼントした指輪に願いを込めてから、寝ている可愛い理沙の頭を撫でる。

今日はとても良い日になった。

きっと明日も良い日になるだろう。

幸せで思わず笑みがこぼれる。


「おやすみ、理沙。」


理沙に軽くキスをする。

そして、朝起きたときどんな反応を理沙がしてくるのかを楽しみに思いながら眠りについた。



ー そして朝になった。


「しゅ、修史!こ、これっ!これはっ!?」

「…んーっ?」


なにやら理沙が騒がしくて目を覚ますと、指輪を指差して何かを訴える理沙の姿があった。

目を見開いて口をパクパクさせて言葉を失っている。


だが、そんなことよりも昨日のセクシーな格好のままなので、目のやり場に困ってしまった。

明るいので昨日より更によく見えた。


男の朝の生理現象が悪化しないように抑えつつ、にこやかに教えてあげる。


「ふふっ、驚いた?プレゼントだよ。理沙への誕生日プレゼント。喜んで貰えたかな?」

「そ、そんなの…勿論ですわっ!う、嬉しすぎてこう…な、なんとおっしゃったらいいのかわかりませんわ!」


焦っている理沙もなかなかエロかった。

間違えた、可愛らしかった。


「喜んで貰えて良かったよ、理沙。おはようのチューしたらご飯にしよっか!」

「えっ、お、おはようのチューって…あっ…んっ…っ!!」


取り敢えず、プレゼントは嬉しかったみたいで良かった。

寝起きの理性が働く前に本能的にイチャついてしまったのは反省しようと思う。


その後は、理沙と朝食を食べて着替えてから、映画を見たり広い庭を散歩して過ごし、昼食前に理沙の家を後にした。


俺の家まで水無月さんが車で送ってくれたが、その車にも理沙は乗って来てお見送りをしてくれた。

朝起きてから家に着くまで隣には理沙がいたので、ずっとイチャついていた。


屋敷にいた大勢のメイドさんたちの、理沙を羨ましそうに見つめていたのを思い出すよ。


「修史様ぁ!ま、またいつでも遊びにいらして下さいませ!お待ちしておりますわ!」

「勿論だよ!またねー!」


車が見えなくなるまで理沙はこちらに向かって手を振ってくれていた。

少し寂しそうだったが、指輪を見て寂しさを和らげて欲しい。

また、次に合うときが楽しみだ。


俺は理沙を乗せた車が見えなくなった後、家に入った。


「お兄ちゃん、お帰りなさい!」

「ただいま、芽亜!」


元気に出迎えてくれた妹の頭を撫でつつ、午後は家でくつろぐ事に決めた。


(…理沙、そして神様、本当にありがとう。)


心の中で、昨日と今日の素敵な思い出をくれた理沙と、この世界に送ってくれた神様に改めて感謝した。


投稿の間が開いてしまい、申し訳ないです。


読者の中で女性に指輪をプレゼントした事がある人の話を聞いたり出来たら良かったんですが。

作者は勿論、非リア充ですから…(涙)


では、また次話で!


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