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許嫁が解決して問題なくイチャコ出来るらしい

「よし!いよいよだ!」


スーツをビシッと決め、雫さんの家にやって来た。


「修史くん!おはようございます!」

「おはよ、雫さん!」


雫の家の前では蝶の柄の綺麗なみどりの着物に身をつつんだ、髪の長いとてつもない美人さんが立っていた。

まあ、俺の彼女なんだけどね。←どや顔


「修史くんのスーツ姿もカッコいいですね!惚れ惚れしちゃいます!」

「あははっ。ありがと!そういう雫さんもとっても素敵だよ。…本当に綺麗で…その…俺には勿体ないくらいの彼女さんだよ。」

「そ、そんな事ありません!修史くんの方が、私には勿体ないくらい素敵な彼氏さんです!」

「雫さん…。」

「修史くん…。」


雫の潤んだ瞳が綺麗で、俺は自然と雫を抱き寄せ、その唇に…。


「待て待て待て!玄関先で何をしているんだ二人は!二人がらラブラブって事は分かったから!いつ入ってくるんだってソワソワしていた俺の身にもなってくれ。」


ガラッといきなり玄関が開き、髪の長い眼鏡のおじさんが飛び出してきた。

どうやら、雫さんの父親らしい。


「は、はい、すみませんでした。」

「すみませんお父様。」


慌てて頭を下げた。

いきなりイチャついたところを見られてしまった。

場所を考えずイチャついてしまった事を反省したい。


「まあ、とにかく入ってくれ。」

「はい!失礼します!」


取り敢えず手土産を渡した後、広い和室に案内された。


「まあまあ、座ってくれ。そんなに緊張しなくても大丈夫だから。」


緊張が顔に出ていたようなので、少しリラックスさせて貰った。

話し方からして、雫のお父さんはどうやら優しい方のようで少し気が楽になった。

…あ、でも目が常に死んでいるような?


「修史くん、いつも通りで大丈夫ですよ!あ、お茶入れますね!」

「雫さんありがとう。」


雫さんのお茶を入れる姿を見つつ、心を落ち着かせた。

しかし、お茶を入れ終わった雫さんが、わざわざ置いてあった座布団をピタリと俺の座布団に付けて、俺にくっつくように座ったので別の意味でドキドキしてしまった。

好意は嬉しいのだが、こういう親と話す場面でくっついて大丈夫なのか少し不安になった。


「ほ、本日はお忙しいところ、ありがとうございます。私は雫さんとお付き合いをさせて頂いております松本修史と申します。よろしくお願いいたします。」

「こちらこそ、よろしく。俺は倉橋荘厳くらはしそうご。雫の父だ。

母親の静香もいるにはいるんだがな。君を見て呼ばない事にした。だから、気にせず俺と話をしよう。」

「えっ!?あっ、はい。分かりましたが…。何か失礼がありましたでしょうか?」


俺を見て、雫の母親が呼ばれないというのはどういう事だろうか?

もしかして「一目見ただけで分かる、こいつは雫の相手に相応しく無い!俺の嫁に見せる価値すらない」とでも思われたのだろうか?


「ん?…ああ、大丈夫大丈夫!何にも君に悪いところ無いから安心しな。いやー、実はね、嫁の静香は好みの男だと娘の許嫁であっても手を出すような奴だからさ。君は体型がいいから一目で気に入られて食べられちゃうと思ってね。はっはっは。」

「そうなんですか、お気遣いありがとうございま…す?」


…えっ、ちょっ待って。

雫の許嫁って雫のお母さんと関係が!?

えっ、聞いてないんですが。


「ははっ。驚くのも無理はない。俺も昨日あいつの携帯見て驚いたからな。どっちから手を出したのかは分からんけど、雫の許嫁は俺の嫁と関係があったんだよ。…それにあいつは美人だからもう数人、関係を持ってる奴もいてなぁ。はっはっは。」

「えっ、そ、そうですか。…ははっ。」


反応に困って笑うことしか出来ねぇ。

いやいや、待て待て。

何で荘厳さんはそんな平然としてるの?

ってか、雫の許嫁の件とかどうなるの?

嫁さんに手を出されたんだよね?


「…ん?あ、許嫁の件は勿論無しになったから大丈夫だよ。まあ、許嫁を決めたのは、嫁がどうしてもって言ったからさ。」

「そ、そうなんですか。取り敢えずは安心しました。」

「そうかそうか。」


なんだか拍子抜けした気分だが、取り敢えずは悩みが一つ消えたので良かったと思う。

これで気兼ねなく雫さんとお付き合いができる。

楽しみだ。


「いやー、俺は雫に縁が無かったらあれだと思って保険として許嫁がいてもいいだろうって感覚だったんだけどね。…雫に余計な負担をかけて今では申し訳ないと思っているよ。雫、本当にすまなかった。」

「…お父様…。い、いえ今回の事で私は成長することが出来ました。それと…今まで勝手に怖がってごめんなさい。」

「…っ。いや、俺も悪かった。自分の言いたいことが素直に言えない環境を作ってしまって。…本当、ごめんな。」

「…お父様…。」


荘厳さんは雫の頭を撫でた。

二人とも今にも泣きそうだった。

二人の仲直りを見て俺は「親子っていいな」と感じつつ、前の世界の父親を思い出していた。



それからしばらくは雑談をしたり、お茶を飲んだりして寛がせてもらった。

荘厳さんは変わったところが多いだが、頭のキレるとても今優しい人だった。


「そう言えば、実は俺、君の名前を何処かで聞いた事あるような気がしてたんだが…。何だろうね?」

「お父様、それは修史くんに聞いても分からないと思うのですが。」

「ははっ、そりゃそうだ。…そうだ!それならパソコンで調べるからちょっと待っててくれ!」


そう言うと荘厳さんは慌ただしく何処かへ行ってしまった。


「変わった人だけど、いい人だね、雫さん。」

「そうですね、私の自慢のお父様です。えへへっ。」


雫の笑顔を見て、疲れが一気に抜けていくのを感じた。

心から笑顔になれる環境が出来て、本当に良かったと思う。

…幸せだ。


「雫は本当に素敵だな。改めてこれからもよろしくな。」

「は、はい。こちらこそよろしくお願いいたします。修史。」


二人の距離が更に縮まった気がした。

そしてまた、自然とお互いに顔が近付き、俺は雫のしっとりとした綺麗な唇に、自分の唇を…。


「パソコン持ってきたぞ。」

「「っ!?」」


何故か音もなく背後にいた荘厳さんに、心底驚いた。


「惜しかったな、修史くん。まあ、二人が相当にラブラブなのは分かったから親としては良かったよ。…それでも娘のキスを見るのはまだ抵抗がねぇ。」

「お、お父様!」

「ははっ、ごめんごめん。」


雫は顔を赤くして怒っていた。

そんな雫も可愛かった。



「それじゃ、検索するぜ。」


何処かからパソコンを持って来た荘厳さんは何やら俺の事を調べ始めた。

雫さんも興味があるのか、荘厳さんの隣へ移動してパソコンの画面を覗いていた。

…隣がいなくなって寂しい。


「…えっ!?これって…。ええっ!?」

「えっ!?修史って…ええー!?」


なんだなんだどうした?

俺の情報なんてファンクラブの事くらいしかないだろう?

何でそんなに驚いているんだ?


「どうかしましたか?」


呆然とパソコンを見つめる二人に声をかけた。

少し沈黙が続いた後、急に荘厳さんが話し出した。


「修史くん…いや、息子よ!これからも雫をよろしく頼むな。喧嘩してもすぐに仲直りするんだぞ!大切にするんだぞ!そして早く結婚しろ…じゃなかった。いつ結婚しても良いように準備をしておくからな!」


いきなりだが、荘厳さんにそう言われた。

…驚いたが、心の底から嬉しかった。

認められた事、応援される事、理解して貰えたこと。

俺は感動しつつ、雫を大切にするという誠意を見せた。


「荘厳さん…。」

「お義父さんと呼べ。」

「お義父さん、ありがとうございます!必ず必ず雫を幸せにします!」


深々と頭を下げた。

お義父さんも満足そうに笑っていた。


「…お父様、修史くん…!」


雫は感動のあまり口を押さえて泣いていた。

そんな雫に俺は声をかけた。


「雫、愛してる。俺についてきてくれ、幸せにするから!」

「…はいっ!私も修史くんを必ず幸せにします!…愛しています。」


お互いに見つめ会い、笑った。

そんな俺らを見て、今度はお義父さんは少し泣いていた。


「ところでパソコンには何が書いてあったんですか?」

「いやー、その…。君が知り合いの息子って分かっただけだ。だから、驚いたけどそれと同時に安心したのさ。」

「私も驚きました。修史くんの事が新たに分かって幸せです。」

「そ、そうですか。まあ、好印象で良かったですよ!」


何が乗っていたかは知らんが、多分母さんの事だろう。

まあ、何でもいっか!

面倒な問題も無くなったからね。



雫の家で夕飯をご馳走になった後、夜遅いので帰る事にした。

泊まってもいいと言われたのだが、遠慮した。


調子に乗って雫に手を出してしまうかもしれないからだ。

一番最初は早香って決めてるからね!←変な決め事


門の前まで二人は見送りに出てきてくれた。


「本日はありがとうございました!」

「おう!こちらこそ!俺と嫁の問題は気にせず二人で仲良くやってくれな。」

「はい!」

「修史、今日は本当にありがとう!ま、また夏休み中にお会いしましょうね!」

「勿論だよ、雫。それではお二人とも失礼します!」


こうして二人に見送られて雫の家を後にした。


拍子抜けする場面もあったが、これで明日からまた、楽しい楽しい夏休みが始まる。

期待を胸に帰り道を急いだ。


早く早香に手を出してほしい


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