二人で何とかすると決めたらしい
作者はお盆に実家に帰省していました。
親父と酒を飲むのが楽しかったです。
「彼女はいるのか?」と質問されたので、「二次元になら」と答えました。
…父は苦笑いしてました。
雫さんに告白された。
(凄く嬉しい…。俺も雫さんが好きだから…良かった!…でも、告白ってそんなに悲しそうな顔をしてするものじゃないぜ、雫さん。)
告白は顔を赤らめて恥ずかしそうに言ったりするものだと思っていたが、雫さんは違った。
涙を流していた。
原因は、雫さんに許嫁がいるからだ。
雫さんは俺の事が好きなのに…。
(許嫁…か。そういえば調べた事あるな。前の世界とは感覚が違うんだよな確か…。)
許嫁とは、簡単に言えば親同士が決めた結婚相手がいるということ。
それは、この世界の女性にとって、とても贅沢な事だ。
男女比の差が広く、結婚出来ずに一生を終える女性が多い中、結婚が約束されているからだ。
この世界の何人もの女性が、許嫁のいる女性を羨ましがっているだろう。
そのためこの世界では、許嫁の話を無しにする、女性側が断る事など、世間一般的に考えてあり得ないことなのだ。
断る方がおかしいと考えられてしまうのだ。
(雫さん、ごめん…。君が不安そうにしている中、俺には…なんとか出来る自信しかないよ!)
雫さんはおそらく「断れるはずが無い」とか、「話を無しに出来る訳がない」とか考えているのだろう。
(雫さん、君が好きになったのが…俺で…本当に良かったよ。)
涙を流し俺を見つめる雫さんの頭をそっと撫でる。
そして優しく抱き締め、耳元で返事を伝えた。
「俺も雫さんが好きだ。だから、俺の恋人になってくれ。…愛してる。」
俺は、許嫁を解消して俺と雫さんがラブラブイチャイチャを堂々と出来る環境を作ってみせる!
俺にとって世間体や許嫁関係など、どうでもいい事だ!
…だいたい、親が子供の結婚相手を決めること自体、俺にとっては間違っている事だと思う。
権力関係とか利益関係とか親同士の関係とか、何か事情があったとしてもそんな事は知らん。
俺と雫さんのイチャコラ生活に支障をきたす問題など、あってはならない事なのだ!
「…っ!…修史…くん。…ありがとう、本当にっ!本当に大好きだよ…。でも、許嫁を断る事は…出来ないの…。…だからっ!」
俺と違って雫さんは、まだ付き合うことが無理と考えているみたいだった。
諦めたくないけど諦めるしかない、そんな気持ちが伝わってきた。
気持ちの切羽詰まって、悲観的な言葉を言おうとしている雫さんの口を、俺は自分の口で塞いだ。
「…っんむ!?…んっ…あっ…。…んっ…。」
目を瞑っているため、雫さんがどんな表情をしているのかは分からない。
しかし、その柔らかく潤いのある唇は、俺を素直に受け入れていた。
「…んんっ!?…あっ…んっ…ふぅ…んっ。」
唇を当てるだけでは雫さんの気持ちが変わらないかもしれない。
気持ちを変える為に、更に深い大人のキスをした。
そしてゆっくりと唇を離し、雫さんを見た。
「…はぁ…っ…はぁ……っ…。」
キスの効果はあった。
先ほどとは打って変わって、幸せそうでとろけた表情の、最高に可愛い雫さんになっていた。
そんな雫さんを抱き締めて耳元で囁いた。
「結婚っていうのはね、雫さん。君が心から『幸せ!』って思える事が一番大切な事なんだよ。…二人の幸せの為に、雫さんの親を!許嫁相手を!納得させてやろう!俺も協力するから!」
雫さんは俺の言葉を聞いて、今度は声を上げて泣いた。
「…っ…うん…。…ありがとう…本当に…ありがとね…。…大好き。」
雫さんの親や許嫁相手が何を言うかは分からない。
でも、納得させてみせる!
俺は雫さんを抱き締めつつ、心に闘志を燃やしていた。
ー しばらくして、雫さんは落ち着いた。
若干不安そうだが、笑顔を見せていた。
「雫さん、後日改めてこの家に来るよ。そしたら君の両親と話をしよう。」
俺はにっこり笑ってそう言った。
雫さんは深呼吸をしてから「はい」と返事をした。
雫さんの完璧な笑顔を見るために、全力を出すと決意した。
ー
雫さんの家を出る前に少しだけ、許嫁が決まった経緯や許嫁相手の事を聞いた。
簡単に言うと、雫さんの家は代々大地主でお金持ち。
そして許嫁相手の家も同じく地主らしい。
詳しい経緯は雫さんにも分からないが、中学生の時に許嫁の事を突然教えられてそれから年に数回会っているらしい。
…何だろう?お金や土地の事が絡んでいそうで、嫌な気分だ。
両親は特に母親がとても厳しいらしく、雫さんは反抗すらした事が無いらしい。
…だから今回の事に対してほぼ諦めていたのかもしれない。
親に縛られるってあまり良いものでは無い気がした。
俺は雫さんと違って悠々と過ごして来たからね。
…前の世界の父親を思い出すよ。
煙草を吸いながら『自由に生きろ、他人を思いやれ、男を磨け』って言ってたなぁ…。
まあ、それはさておき、雫さんの許嫁の年齢は二歳年上の17歳で、少しふくよか?な男性らしい。←雫さんの言い方が曖昧だった
雫さんが高校生になって二人きりで会わせられる事が増えたのだが、視線を胸に向けられたり、自分勝手な性格でどうにも好きにはなれないらしい。
…雫さんはその男の長所も述べてはいたが、言い方がタジタジだったので信用は出来なかった。
今日聞いた印象だけでは、両親も許嫁もあまり好感の持てる人では無さそうだが、取り敢えず会うしか無いだろう。
凄く嫌な予感がするが、気を引き締めてその時に備えようと思った。
…もしかしたら、また母さんの財力を頼ってしまうかもしれないが、極力自分の力だけで頑張りたい。
ー 雫さんの家を後にして家に帰った ー
「ただいまー。」
「おっかえりーお兄ちゃん!…あれ?お兄ちゃん…どうしてそんなに怖い顔してるの!?…な、なにかあったの?」
元気に出迎えてくれた妹が、俺の顔を覗き込みながらそんな事を言っていた。
怖い顔をしているだろうか?
まあ、勝手に許嫁関係を作った、雫さんの親に怒っていたのかもしれない。
きっと親にも雫さんを思っての考えがあったのだとは思うが、それでも納得は出来なかったからね。
…いけないいけない。
マジ天使の妹の前でこんな顔を見せるなんて、兄失格だ。
次から気を付けよう。
俺は自分の頬を叩いて気を取り直した。
「大丈夫、ただ明日のテストが不安だっただけさ。」
「そ、そっか!お兄ちゃんならきっと大丈夫だよ!…そ、それにお兄ちゃんが将来困ったとしても…芽亜がいるから…何の問題もないよ!」
妹は適当に嘘をついた。
妹はそんな嘘に対しても健気に答えてくれていた。
「…ふぅ…。ありがとな、芽亜。お兄ちゃんが将来困ったら、養ってくれな!」
「うん!任せて!芽亜がいれば安心だからね!」
ちゃっかりクズ発言をしつつ、今日は疲れたので早めに休む事にした。
明日はテスト本番なので、集中しないといけない。
雫さんが明日、集中してテストが受けられるかの心配ではあるが、取り敢えず今日はそれを忘れてベッドで横になった。
「えへへっ、お兄ちゃんと毎日一緒に寝られるのって、すっごく嬉しいよ。お兄ちゃん大好き~!」
妹はいつも以上に俺に甘えて来てくれた。
それが今日は特に嬉しかった。
疲れた心や体がいつも以上に回復出来たからだ。
メンタルリセットォー!
「ありがとな、芽亜。お兄ちゃんも芽亜が大好きだぞ!」
今日は妹をいつもよりも多く、抱き締めたりなでなでして心を落ち着け、妹の温もりを感じつつ眠りについた。
明日からテストなので、集中して頑張ろうと思った。
そして雫さんにも落ち着いて頑張って欲しいと思った。
雫さんと修史は無事に問題を解決できるのか!?
その前に、テストの結果の話を挟みます。




