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看病してもらったらしい

「おっはよー!…ってあれ?修史は?」


早香が教室に入り、いつも通り修史のいる席に向かって挨拶をしたが、当の本人はそこにはいなかった。


「おはよ、早香。修史はまだ来てないみたい。」

「おはようございます、早香さん。修史さんは朝の電車にも乗っていませんでしたよ。」

「そ、そうなんだ。なんだか珍しいね。朝に修史がいないなんて。」


早香、天音、雫の三人は修史はそのうち来るだろうと思って朝の時間を過ごした。

しかし、ホームルームの時間になっても修史は来なかった。


「はいはーい、皆さん席に着いて下さい。ホームルーム始めますよ。…えー、皆さんお気付きだと思いますが、修史くんは今日はお休みすると連絡が入っております。」

「「ええっー!」」


修史が休む事をクラスメイト皆が残念に思った。

早香、天音、雫の三人もテンションが下がっていた。


「体調不良だそうですよ。風邪かしら?皆さんも風邪は流行っているみたいなので、気を付けてくださいね!」


佐藤先生の言葉を聞いて皆が「大丈夫かな?」と心配するなか、一人顔色の悪くなっている生徒がいた。

それは天童院理沙だ。


(ど、どうしましょう?わ、わたくしがきっと風邪を移したのですわ。あわわっ。修史様になんて事をしてしまったのでしょう。…最低ですわ、わたくし。)


ホームルームが終わっても理沙はずっと自分を責めていた。


そんな時、担任の佐藤先生が理沙に近付いた。


「あ、理沙さん。修史くんから伝言を預かっていますよ。修史くん曰く、「わたくしの風邪が移ってしまったとか考えないでね。違うから。熱もないし、大丈夫だから。天童院さん病み上がりなんだから、また風邪をひかないように気を付けてね!」だそうです。確かに伝えましたからねー。」


そう伝言を告げると佐藤先生は教室を出ていった。


(修史様ったらそこまでわたくしの事を考えて下さったのですね。…本当に何て素敵な殿方なんでしょうか。…修史様がお見舞いに来てくださったのなら、わ、わたくしも修史様のお見舞いに行くのは当然ですわよね!)


天童院理沙はお見舞いに行くことを考えていた。


そのころ、いつもの三人も修史の席を見つめて、修史のいない寂しさを感じつつ、心配していた。


「修史風邪だってね。心配だね。」

「ほんと。心配だね。」

「修史くんいないとやっぱり寂しいしね。」


修史がいないといつもの元気が出せない三人だった。

修史のいない影響は大きかった。


「放課後お見舞いにいってくるよ。」

「えっ!?天音ずるい、私も。」

「それなら私もいきたいです。」

「じゃあ、三人で行こ!」

「「おー!」」


三人もまた、修史のお見舞いに行くと決心をしていた。




ー その頃、修史は…。


(…ヤバい、本格的にダルいし、結構苦しいな。…うっ、吐きそう。)


一度寝付いたけれど、苦しさで起きてしまった。

気持ち悪いので起き上がり、トイレへと向かうことにした。

しかし、起き上がるのもしんどく、壁に寄りかかりながら歩くのがやっとだった。

なんとかトイレに着くことが出来たが盛大に戻してしまった。


(…懐かしいな。一人暮らしの時にインフルエンザにかかった時もこんなんだったな。…辛い。)


一人暮らしの時に風邪やインフルエンザにかかった事があったので、慣れてはいたが辛い事には変わりがなかった。

部屋に何とか戻り、横になったがご飯を食べる気にはなれず、仕方なしに薬とポカリを飲んで再び眠ることにした。


お昼の時間になり、再び目が覚めたが一向に良くはなってなかった。

再び熱を計ると少し上がっていた。


(こりゃ、妹呼ぶしかないかな?でも、大丈夫って言っといて呼び戻すのはなぁ。天音かな?天音かな呼ぶとしたら。…あ、でも楓ちゃんと日和ちゃんに移るかもしれないし。そもそも俺のクラスの一人だけ呼ぶのはまずそうだな。…うん?それなら…。)


俺はスマホの連絡先一覧を開き、愛奈にメッセージを送った。

愛奈、君に決めた!


修史: 愛奈,俺のクラスに内緒で俺の家来てくれないかな?

愛奈: ん、どうした?何かあったのか?

修史: 実は熱出ちゃってさ。一人じゃきつくて。

愛奈: お、いいぜ!任せとけ!看病してやるよ!

修史: 本当に悪いな。お礼はきちんとするから!

愛奈: 気にすんなって!いいってことよ!


…愛奈たん、かっこいいぜ。

あんな幼児体型なのになんてたくましいのだろう。

俺は愛奈に住所を送り、頑張って玄関の鍵を開けて再び眠りについた。


(修史があたいを頼るなんてな。…なんだか嬉しいな。…よし、張り切って看病するぞ!)


愛奈はルンルンな気分で学校を早退し、修史が送ってきた住所へと向かった。




「お、そろそろ着くはずなんだけど、ここか?…で、でかい家だな。修史はお金持ちだったのか。」


愛奈は驚きながら、インターホンを押した。

しかし、返事は無かった。


(修史寝てるのかな?うーん、ここは入るしかないな!)


鍵を開けてあると言われていたので、愛奈は恐る恐るドアを開けて中に入った。


「お!修史の靴があるなら間違いなさそうだな。おーい、修史何処だ?来てやったぞー。」


愛奈が呼んだが返事は無かった。


「何処だ?探すか。」


愛奈は家の中を見て回った。

そして、開いているドアがあるのに気付き、中を見たところ寝ている修史を発見した。


「お、いたいた。…寝てるのか。」


ベットに寝ている修史の横にてくてくと近付ついた愛奈は、修史が目を瞑っていることに気がついた。

それと、全く手の着いていないご飯にも気がついた。

芽亜が朝に用意してくれたのに、食欲が無いからと修史が食べなかったご飯だ。


(起こすのも悪いかな。…いや、でも何も食べてないと治りが遅くなりそうだし。…起こすか!)


愛奈はベットに上がり、修史の肩を軽く叩いた。


「おーい、修史、起きろ。だめだろ、ご飯食べないと。…おい、起きろってば。」

「うーん、芽亜?もう少し寝かせて。」

「おい、あたいは妹じゃねーぞ。ほら、熱冷ましシート変えたり、体拭いたりしてやるからとっとと起きろ。」

「…うーん…。うん?あれ?愛奈?」


俺は目を覚ました。

寝ぼけ眼を擦りながら横を見ると膝立ちでベットに乗っている愛奈がいた。

…あ、そうだ、呼んだんだ愛奈を。


「お、起きたか修史。来てやったぞ!」


無い胸を貼って笑顔を見せる愛奈は可愛かった。

その姿を見たとたん、熱で気が参っていたのか甘えたくなり俺は愛奈の腰に抱きついた。


「愛奈~!来てくれたんだね!辛いよぉー!」

「あわわっ!こ、こら。抱きつくな修史。」


愛奈の体は細くて暖かかった。

制服のスカート越しに愛奈の太ももに頬っぺたを当てると、若干の柔らかさを感じる事ができ、心地よかった。


「スリスリするな!辛かったのは分かったから、取り敢えず放せ~!」


…愛奈たんに怒られて剥がされてしまった。

ぐすん。


「はぁはぁ。全く、修史って弱ると人が変わるのか。知らなかったぜ。ほら、さっさとご飯食え!何にも食べてないんだろ?」

「うーん、でも食欲無いからな~。」

「いいから食え!」


性欲と睡眠欲ならあるのだが、食欲が無いので食べる気にならなかった。

しかし、愛奈に注意されたので大人しく従った。

体を起こし、熱冷ましシートを変えて貰い体温を計る。

熱は多少マシになった程度だった。


「ほら、温めてきたから食べろ。口開けて。」

「あーん。」


愛奈にご飯を食べさせて貰い、薬を飲んだ。

愛奈がいるおかげか気持ち的に楽になった。


「よし、後は寝れば治るはずだぞ。」

「本当にありがとう愛奈。」

「他にして欲しい事とかあるか?」


愛奈にそう聞かれたので、汗でベタついた体を拭いて貰うことにした。


「頼むわ。」

「はいよ!」


上半身裸になり、背中を拭いて貰った。

この世界の女の子なら俺の上半身裸を見ただけで、鼻血を出したり悶々としたりするのだが、愛奈はしれっとしていた。

無垢な女の子だ。


妹ですらガン見して恥ずかしそうにするのに。

…無垢な愛奈に色々覚えさせて…はっ!いかんいかん、変な想像をしてしまった。


「よし、拭いてやったぞ。」

「ありがとう!じゃあ、次は下半身を…。」

「っ!そ、それは自分でやれ!」


流石に下はダメだった。

でも、珍しく愛奈は恥ずかしがって焦っていた。

…愛奈のお母さん、あなた、娘に少し性教育しましたね?

愛奈がどの程度まで知っているのか、詳しく聞きに今度行きますからね!←第13部参照


「よし、もうあらかた終わったな。…修史が寝るまで側にいてやんよ!そしたら、あたいは帰るからな。」

「ありがとう愛奈。助かったよ。おやすみ。」


俺は目を瞑り、意識を手放した。


「…さて、帰るかな。」


ガシッ


「ん?」


意識は手放したが、愛奈は手放さなかった。


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