返信が来なかったらしい
朝起きて天音達に挨拶をしてから、自宅へと帰った。
「もう!お兄ちゃんったら!…寂しかったんだからね!」
妹がぷんすかして待っていたが、朝ごはんを一緒に食べる頃には機嫌が治っていたので良かった。
ごめんごめんと言いつつ、頭を撫でたのが効いたのだろう。
妹を小学校まで送った後、学校へと向かった。
何人もの小学生と目が合って嬉しかった。
「おはっ!修史」
「おはようございます、修史さん」
電車で二人と合流して一緒に登校する。
電車は混んでいたため、二人と肩が触れていい気分だった。
他愛もない雑談をしていると、いつの間にか学校へと着いていた。
「松本くん、おはよ!」
「修史さん、おはようございます!」
「おはよー!」
最近は学校の女の子達に挨拶をされるようになったので、軽く手を振りながら挨拶を返すようにしている。
前の世界で女の子から挨拶される機会が少なかったため、嬉しかった。
「キャー!松本くんかっこいい!」
「わ、私、松本さんと挨拶を!キャッ!」
((いいなー、あの人達は。私なんてドキドキしちゃって近付くことすら…。くぅ~、羨ましい!))
挨拶を返すのは当然だ。
挨拶をしてくれた女の子達の反応を見ていると楽しいしね。
あぁ、顔を赤らめて…ふふっ。
でも、中には俺に話しかけようとして諦めていく女の子達もいるのが分かるので少々残念だ。
…もっと気楽に接して欲しいのだが。
「よお!修史。お前はいつもと変わらない人気だな!」
「おっす、修史。…相変わらず女子に騒がれて大変だな!」
そう、こんな感じに気軽に話して欲しい。
今俺に声をかけたのは同じ学年の数少ない男子の二人だ。
「野郎に声をかけられても嬉しくない」とか思ってはいけない。
確かこいつらは…凱と哲哉だったっけな?
身長が俺よりも高く、スラッとしている爽やか青年が凱。ナイスガイだ。
哲哉は俺よりも背が低く、まだ幼さが抜けていない顔立ちの可愛い系男子だ。
最近よく声をかけてくれるようになったいい奴らだ。
まあ、少ない男子で数少ない話が出来るやつではある。
下駄箱を開けて落ちてくるラブレターを一緒に拾ってくれた事もあったっけなー。
……まあ、いいや。
凱と哲哉はいつも二人でつるんでいるので、一部の女子からの圧倒的な人気を誇っている。
この世界の男性の半分は男が好きなので、そういうのが好きな女性も少なくはない。
この学校の漫画研究会のBL漫画のネタにもされているそうだが、その事は二人とも全く知らないらしい。
……そういえば俺はネタになってるのかな?
なっているならBLではなく、ノーマルでお願いしたい。
「女子に話しかけられるのは、俺は嬉しいから大丈夫だよ。皆優しいしね。」
「そうか?それならいいが…。ってか、修史は相変わらず、イケメンだな」
「だなっ!凱の次くらいにかっこいいな!」
「おっ!良いこといってくれるじゃねーか、哲哉。お前もイケメンだぞ!」
「お、マジで!サンキュー!」
「「はっはっは~!じゃあなー、修史」」
二人は笑いながら去っていった。
…お互いの腰に手を回しながら。
やっぱり二人はできているのかもしれないと疑ってしまった。
ついつい想像してしまい、俺の脳内が汚された気がした。
俺はやっぱり根っからの女好きみたいだ。
「修史はやっぱりモテモテだな!」
「修史さんは人気者ですね!」
「ははっ!友達が増えそうで嬉しいよ」
そんな登校までの出来事を楽しみながら、教室に向かった。
「修史くんおはよー!昨日は忙しかった?」
「松本くんおはっ!メッセージ送ったけど届いてたかな?」
おっと、何やらクラスメートの女の子達に囲まれてしまった。
教室に入った瞬間だったので、せめて席に座りたいの…だが。
可愛いから許す!
「えっ?メッセージ?ごめんね、昨日は忙しくて見てないんだ!ちょっと待ってね」
慌ててメッセージを確認すると、そこには100件を越えるメッセージが入っていた。
ほとんどがクラスメートのものだった。
確かになんか携帯の画面の上の方に通知が沢山来ていたが、天音の件で忙しくて見てなかったのだ。
「あっ!ごめんねー、皆。やっぱり気付いて無かったみたい!」
テヘッ!と可愛らしく謝る。
こうすると大抵許してくれるんだ!クラスメイトは優しいから!
「もー、てっきり嫌われたかと思って怖かったよ!」
「良かった!ちゃんと届いてたんだね!」
「いやー、忙しくてね。皆、ほんとにごめんね!」
皆を不安にさせてしまったみたいなので反省する。
どうやら「私、嫌われてるのかな?」とか「迷惑だったかな」とか、「修史君の身に何かあったんじゃ?」など思ってしまったらしい。
申し訳ない!正直少しめんどくさいかもしれないけど頑張るぜ!キラッ!
「誰も嫌ったり迷惑だとか思ったりしてないから安心してね。気軽に声をかけてよ!昨日のメッセージだけは既読だけになっちゃうけどね、そこは許してね」
「「やったー!うん!分かったよ!」」
多くのメッセージが来ると対応はキツイが、今日の夜にくらいは頑張ろうと思った。
クラスメートとある程度雑談をしてから、俺は席へと向かった。
いつの間にか、早香と天音も登校していたみたいで、いつもの三人が揃って俺を待っていた。
愛する妻よ、待たせたな!…なんてねっ!
「おっはよー!修史!」
「おはよ、修史。」
「おはよー!早香、天音。」
また、いつも通りの楽しい学校生活がはじまった。
クラスメイトも可愛いが、俺の目にはずば抜けて早香達が可愛く見えていた。
ー ホームルームが終わり授業が始まる頃 ー
携帯を弄りながら、昨日のメッセージに既読をつけていた。
「やっほー、今、修史くん何してる?」とか「突然ごめんなさい、お話しませんか?」とか「こんばんわ!暇ですか?」とかそれぞれ個性の出るメッセージが入っていた。
異性に最初のメッセージを入れるとき、何と言うかは女性慣れしていない前世の俺なら悩みに悩むのだ。
そう考えると、もしかしてクラスメートの何人かは同じように悩みに悩んだのかもしれない。
想像したら申し訳なく思うと同時に、ニヤけてしまった。
そんな風に思いつつ、既読作業をしていると天童院さんからもメッセージが入っていた事に気がついた。
メッセージの内容としては、ファンクラブの件について話がしたいということだった。
勿論それはいいのだが、彼女は今現在、登校していない。
(天童院さん休みかな?どうかしたんだろ?)
気になったので、連絡を入れておいた。
『勿論いいよ!昨日は連絡出来なくてごめんね!今日、天童院さん休んでるけど、大丈夫?』
返信出来なかった件を謝りつつ、大丈夫かどうかの連絡を入れた。
「心配しているよ」的なメッセージを入れることで好感度を上げ…なんでもない。
「はーい、それじゃ、授業をはじめます。」
おっと、授業が始まった。
俺は急いでスマホをしまった。
ー
順調に授業が進み、放課後になった。
授業で分からないところが無かったので良かった。
まあ、それはいいのだが…。
一つ気がかりな事があった。
それは天童院さんからの連絡が無かった事だ。
(大丈夫かな?)
俺は心配になっていた。
その理由の一つとして、俺がメッセージをいれると、すぐに返信されるのが当たり前になっているからだ。
この世界では…ね。
現に返信までにかかる時間の最長記録を天童院さんが叩き出している。
前の世界なら、女の子からの返信が無いことなど数多かったが…。
この世界だからなぁ。
唯一の救いは既読がついでにいないことだが、それも心配の要因になっていた。
寝ているのか、もしかしたらスマホを開けないほど苦しんでいるのかもしれない。
「じゃあね!修史!部活いってくる」
「修史…また明日。バイトあるから行くね」
「修史さん、お稽古があるのでお先に失礼します」
「三人ともじゃーね!また、明日!」
早香と天音と雫さんを見送った。
取り残された俺は、天童院さんが心配だったので、教室に残っていた担任の佐藤先生に声をかけた。
「佐藤先生ー!」
「あ、松本くんどうしたの?」
「今日、天童院さん休んでますがどうかしたんですか?」
「えっと、風邪だと聞いていますよ」
ふむ、風邪程度なら今日ずっと連絡無いなどおかしい。←そこまでおかしくない
…どうしよう?見に行っちゃおうかな?…お見舞い大作戦…とか。
「わかりました。…ちなみに天童院さんの住所って教えて貰えたりしますか?」
「えっ、住所ですか!?うーん」
「佐藤先生!お願いします!」←上目遣い
「…っ!まあ松本くんなら…大丈夫でしょう!ねっ!」
「はい、勿論です!ありがとうございます」
佐藤先生に住所を教えてもらい、俺は教室を出た。
(ふふっ、松本君ったら…可愛らしわね。…それにしても良かったわ。このクラスに馴染めたみたいで。毎日、女の子に囲まれて…女の子の心配をして…)
佐藤恭子はにっこりと微笑んでいた。
(でも、そんな彼も前の学校では…。…ううん、過去の事を松本君が気にしてないなら私も気にしちゃダメね。…これから先、また悪い女の子に巻き込まれないといいけど…)
教室を飛び出す修史の背中を見ながら、そんな事を思っていた。
担任の先生にそんな心配をされているなんて、修史本人は気付かなかった。また佐藤恭子も、修史が過去の事を振り返らないどころか、全く知らないという事実に、気付かなかった。
いや、気づくはずがなかった。
男キャラ、いらない
ハーレム作りたい




