イチャイチャと企みをしたらしい
天音との幸せな時間はあっという間に過ぎた。
時刻は午後三時をまわっていた。
ただ天音が近くにいるというだけで、俺の心は満たされていた。
「あ、もうこんな時間。…そろそろ帰ることにするよ」
「んっ、分かった。私も夕飯とバイトの準備するね」
俺は妹のためにご飯を作ったり、その他にやりたいことがあったので帰ることにした。
勿論、名残惜しいが明日もまた会えるのだから問題ないと思うことにした。
天音さんも色々とこの後は忙しそうだ。
俺はゆっくりと立ち上がる。
俺の肩に頭を預けていた天音さんも、俺の動きに合わせて立ち上がった。
そして二人でゆっくりと玄関へと向かう。
「今日はありがとな、天音」
「…こちらこそ…だよ。ありがとう」
天音さんは静かに笑顔を見せた。
俺もつられて笑顔になった。
「…改めてだけど、大好きだよ。これからもよろしくね。」
「…っ!…不意討ちは卑怯だよ。…大好き!」
「ははっ!ありがとね!」
最後にそっと優しいキスをして、天音さんのアパートを後にした。
アパートから離れても、振り替えると天音さんは俺に手を降ってくれていた。
「…本当に…最高だよ、天音さん」
無意識にそんなことを俺は呟いていた。
ー ルンルンな気持ちで家に着いた。
妹が帰ってくるまで時間はあるので、早速俺は行動に移った。
夕飯作りの前にやっておきたい事があったのだ。
「あ、もしもし、母さん?俺だけど」
「修くんっ!どうしたの?何かあったの!?」
俺は母さんに電話をかけた。
電話のコールがなる瞬間に母さんは電話に出たので、その早さに少し驚いた。
心配そうな声で俺に用件を聞く母さんに俺は一つ、お願い事をした。
「母さん、お願い事がある」
「何でもいいなさい!修くんの頼みならお母さん、何でも聞いてあげちゃうから!」
母さんは大きめな声でそう言ってくれた。
俺に甘くて心配だが優しい母さんだと思う。
「実は俺、恋人が出来たんだ」
「……へっ?」
本題に入る前に言っておかないといけないことがあるので、伝えておいた。
「学校に来てから仲良くなった、二人の女の子が本気で好きで俺から告白したんだ」
「ふ、二人!?……まあ、修くんのそんな真剣な声、初めて聞いたわよ。…修くんが本気なのは充分伝わってきたわ。…母親として応援するわよ」
「ありがとう、母さん!」
思いの外、あっさりと認めてくれた。
内心は驚いていそうだけど。
「それで、修くんのお願いって何かしら?」
「それは…二人目に出来た恋人の三森天音って子の過去を調べて教えてほしい。その子、二人の妹のために毎日バイトしてアパートに三人で住んでるんだ。その妹たちもすごくいい子なんだよ!そんな天音を少しでも楽にさせたいっていうのが、俺のお願いだ」
俺は天音を楽させたい。
お金が無いから、無いと生活出来ないから働くのは分かる。
だけど、天音は働き過ぎて、体を壊すこともあるかもしれない。
なら俺がポンとお金を渡せばいいかと考えたが、天音の性格からして決して受けとる事は無いだろう。
だから、バレない程度でサポートしてあげたいのだ。
「…なるほどね。大変ね、その天音って子は。…とってもいい子そうで安心したよ。それで、お母さんは何をすればいいの?」
「母さんには、一軒家を用意して欲しい。賃貸だけど今、天音が住んでるアパートよりも月額は安い値段で。あと、凄く割りのいいバイト先を提供して貰いたい。それを俺から天音に伝えてみるから」
俺が考えたのは、安い賃貸の家に三人で住んで貰い、更には割りのいいバイトで負担を減らしてあげたいという事だ。
一般人の俺がそんな事出来る可能性は無しに等しいが、母さんなら出来ると思った。
「…うーん、修くんの考えはだいたい分かったわ。お金を渡すとかよりも陰でサポートしてあげたいのね。そのくらい、朝飯前よ!直ぐに手続きしとくわ」
「ありがとう!母さん大好き!」
母さんは多分笑顔で俺のお願いを聞いてくれた。
親の権力とお金、前世には無かった力だ。
母さんを頼って申し訳無いけれど、天音の負担を減らすためだ。
頭のキ、優しい素晴らしい母親を持った事を、俺は神様に感謝した。
「……ぁあ」
「あれ?母さん?もしもーし?母さん?」
当然、何故か母さんが黙ってしまった。
「…母さん?」
「……………はっ!?ご、ごめん修くん、嬉しすぎてとんじゃったわ」
「…?」
母さんの言っている意味は良くわからなかったが、お願いを聞いて貰えるようで何よりだ。
「また、準備出来たら連絡してね!」
「勿論よ、任せなさい!修くん愛してるわ!」
「俺もだよ母さん。ありがとね、それじゃ!」
俺は電話を切り、フウと軽く息を吐いた。
天音の負担がこれで減ってくれる事を願いながら、俺は夕飯の支度を始めた。
ー 一方その頃、母親は…
「松本社長、大丈夫ですか?顔が赤くてにやけ過ぎて崩れてますけど?」
そう心配そうに修史母を見つめるのは、親友兼仕事仲間の柏木桜子だった。
「ああ、桜子、聞いて聞いて!修くんからお願い事されてね、その途中で美人で優しくて頼りがいのある母さんが世界で一番大好きだよって言われたのよ」←そこまで言ってない
「…そ、そうなんですか、良かったですね…。母親想いのいい息子さんですね」
(絶対聞き間違えでしょ。また社長の息子自慢が始まるのかなぁ)
桜子は内心は呆れつつも、社長の機嫌をとった。
「そう!!本当にいい子なのよ!完璧な息子よ!大好きって言われたのすっごく久々だったから、体の痙攣が止まらなかったわよ。ハァハァァ……」
「け、痙攣ですか…。そ、それは良かった?…ですね」
「本当よ!最高だったわぁ!あー、録音しといてよかったわ!これは使えるわ」
桜子は内心ドン引きしつつも、表情には出さなかった。
「何に使うかは聞きませんが、体調に問題なくて良かったです。…さあ、会議に戻りましょ!」
「分かったわ!…あ、その前に下着変えてくるわね!」
「っ!?あんたは息子の声だけで何感じとんねん!」
桜子はつい耐えきれずにツッコミを入れた。
修史想いのいい?母親とその親友の桜子であった。
ー ガチャ 「たっだいまー!」
「お、帰って来た。」
「お兄ちゃん、いるー?」
「いるよー、お帰り!」
「やった!」
家で夕飯を作り終えた時、ちょうど妹が帰って来た。
バタバタと走って急いで俺の元まで走ってきた。
「どうする芽亜?お風呂にする?ご飯にする?」
「お兄ちゃんにする!」
おっと、二択のはずだが一つ選択肢を増やしてきた。
まあ、注文を受けたなら仕方がない。
「おっけ!さあ、俺の胸においで!」
「わーい!」
芽亜が胸に飛び込んで来たので、抱き締めながら頭を撫でてあげる。
「えへへー、お兄ちゃんの香りだ!昨日はお兄ちゃん成分が足りなかったから、補充しないと!」
「ははっ、そうかい。存分に補充しな」
「じゃあ、チューもして!」
「はいはい!」
ほっぺに軽くチューしてあげた。
ひとしきり妹とイチャイチャして、それからはご飯やお風呂を済ました。
「昨日は楽しかった?お兄ちゃん」
「ああ、天音に告白も上手くいったし、妹ちゃんたちも可愛くて最高だったよ!」
俺は昨日の事を思いだしながら、咄嗟にそう言った。
「…天音?…妹ちゃんたち?」
「…あっ」
言った後で気付いたが、この発言はもう少し丁寧に説明していた方が良かったかもしれない。
現に、妹のほっぺたがどんどん膨らんで…。
「恋人さんはまだしも、一番の妹は芽亜なんだからね!」
やっぱり、妹はぷんすか怒ってしまったようだ。
だが、二人目の恋人の受け入れはすんなり言ったので結果オーライかもしれない。
「勿論だよ、芽亜。心配しないでって!一番の妹は芽亜だから安心して!」
「…ふんっ!」
おっと、思いの外強めに拗ねてしまった。
こういう時は少し強引に行くのがいいかもしれないと考えた。
「芽亜、大好き!チューしよ!」
「ふぇっ!?うむっ、むぐぐ!?」
俺は妹の両手をおさえて激しくキスをした。←セクハラではないはず
「むっー!むぐっ!…ふぁぁっ…」
「これで芽亜が妹で一番好きって分かってくれた?」
「……ふぁい」
妹はトロンとした顔で俺を見つめていた。
妹にやきもちを焼かせないように、発言には気をつけてこれからも大好きな妹を大切にしようと改めて思った。
「…も!もう!今日のお兄ちゃんは強引なんだから!…でも、そんなお兄ちゃんも大好き!」
「…ありがと、芽亜」
俺の妹は結構ちょろいかもしれないと内心思ってしまった。
こうしてあっという間に今日は終わった。
明日もどんな楽しい一日が待っているのだろうと期待を胸に秘めて、また妹とイチャイチャしてから眠りに着いた。
柏木桜子は修史の母親の親友であり、仕事仲間です。
秘書的なポジションです。
ただ、社長に振り回されてばかりいます。
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