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天音と恋人になったらしい





「それは…天音さん、君なんだ!…俺と付き合ってください!!」


俺は気持ちを伝えた。

一時の静寂が流れる。


「……」


天音さんは普段と変わらない表情…いや、目を見ると分かるがかなり困惑しているみたいだ。


「お願い…します!」


俺は頭を深く下げた。

俺は早香と天音さんが好きだ。

この世界に来てから何度か二人には惹かれる場面があった。

いつも楽しく接していた。

きっかけを誰かに話せば、「それだけで好きになったの?単純だね」と、きっと言われるだろう。


そうだ、俺は単純だ。

単純で自己犠牲型の、前の世界で何も出来なかった人間だ。

だけど、1つだけ俺という人間に関して自信を持って言えることがある。

それは…


「愛した女性を大切にできる」


俺の天音さんに想う大切とは、相手の気持ちを思いやり、困った時は力関係なく話し合い、相手を愛して人生を歩んでいく事だ。

前の世界での父と母の離婚、それがあったから分かったことかもしれない。


子供の時、夜中に聞こえてくる父の怒声やすぐに泣く母の声。

無駄遣いの多い母、子供の事を考えずに休みの日にも遊びに出かける父。


離婚した後、お互いがお互いの悪いところばかりを子供に言う。

原因はどちらにもあるというのに、どちらも被害者面だった。


大人って嫌だなと思い始めたのはその時からだろう←ちなみにこの想いから大人よりも子供の方が好きになっていく


そんな経験は俺にとって財産になった。

見て、聞いて、しっかり考えて学んできた。

だから、俺は天音さんを大切にできると確信している。

両親の足りなかった思いやりを俺は持っている。


だから、俺は天音さんに自信を持って手を差し出している。

大好きだから、愛しいから、何より大切だから。



ー 手を差し出して少し時間がたった。


「…ひくっ…っ!…えっ…ぐ…っ」


…何故だろう。

すぐ前から嗚咽の混じった泣き声が聞こえてきた。

薄目を開けると床にポタポタと水滴が落ち、小さなシミになっていた。


俺は慌てて顔を上げて天音さんを見た。


「っ!ど、どひたの天音さん!」


動揺して噛んでしまったが天音さんは号泣していた。

ぬぐってもぬぐっても流れてくる涙に苦戦するようにボロボロと泣いていた。


「ど、ど、どうしよう!?取り敢えず落ち着いて!」


女の子が泣いてしまった時にどうするか、それを考える前に体が勝手に動いた。

俺は天音さんを抱き締めていた。


(何してるんだ俺?…いや、でも…)


慌てて離れなきゃとかいつもなら思っているだろう。

でも今はこれが正解な気がした。

現に天音さんは俺の背中に手を回し、胸で思いっきり泣いていた。


「落ち着いて、深呼吸して、ゆっくり待つから」


天音さんを抱き締めながら、ゆっくりと一定のリズムで背中をポンポンとたたく。

しばらく、天音さんが泣き止むのを俺はじっと待っていた。



ー 結構な時間が立ち、ゆっくりとした呼吸が聞こえる。


天音さんは大分落ち着いた見たいで、ゆっくりと俺の胸から顔を離した。


「…落ち着いた?」

「……んっ。」


天音さん目の回りが腫れぼったくなってしまっているが、小さく返事をした。


「…どうした?」

「…色々…。それで…。」

「…なるほどね。」


天音さんにどうして泣いたのかを聞いたら、色々と思うことがあって急に涙が溢れて来たらしい。

思うことの中には俺からの告白を喜ぶような部分もあれば、私なんかがという自分を卑下するような感情も含まれていたみたいだ。


「…天音さんは素敵な人だよ」

「……違…う…」

「俺にはすごく魅力的に見えるよ、自信を持って」

「……」

「だから、どうか!…どうか、俺の恋人になってください」

「…っ!」


そう言ってもう一度、俺は天音さんを抱き締める。

天音さんは一瞬止まったが、俺の背中をさっきより強く抱き閉めていた。

そして、もう一度、涙を流していた。


「優しいところが好き。思いやりのあるところが好き。人の表情を良く見てるところが好き」

「……」


天音さんの耳元で、俺が天音さんの好きなところを順々に行っていく。

何故なら天音さんは自分を素敵ではないと否定した。

だから俺が素敵なところ、もとい、好きなところを教えてあげる。


「心が強いところが好き。妹二人の事を思いやって、頑張ってバイトして、家事をして、高校に通って勉強するなんて天音さんが強くて妹さんが大好きだから出来たことなんだよ」

「……」


本当に天音さんは頑張って来たと思う。

俺には分からないくらい、大変だったと思う。


「口調がいい。そのつり目が可愛い。手を握ると安心する。スレンダーな体型が好み。無い胸が好き。」

「……」


天音さんが苦労した記憶以上に、幸せな記憶でいっぱいにしてあげたい。

その思いが俺の中から沸いて溢れた。


俺は天音さんをゆっくりと離し、向き合って今度こそ返事が貰えるようにしっかりと伝えた。



「もう一度言うよ。…大好きだ。俺の側にいて欲しい。俺の恋人になってくれ!!」



うつむいていた天音さんと目が会った。

涙目ではあるが、いつもの落ち着いたつり目がしっかりと俺を見ていた。

小さく息の吸う音が聞こえ、天音さんは口を開いた。



「…こんな私で良ければ、よろしくお願いします」



涙で潤んだ目を細めて、今までで最高の笑顔を天音さんは俺にくれた。

天音さんが彼女になってくれた嬉しさや、天音さんに対する愛が溢れて、俺も目からポタポタと涙を流した。


そんな俺を見て、天音さんは静かに微笑んでいた。




ー 告白が終わった後は、二人とも疲れたのでしばらく手を繋いで肩を寄せて座っていた。


「…あ、学校のこと忘れてた」

「…今日は仕方ないよ。修史・・

「…だな。一応、先生に連絡しとくわ。天音・・もしなよ」


「…ん、修史とはタイミングずらしてやっとく」

「何で?」

「二人一緒に連絡来たら、怪しまれるから」

「なるほどね!そうして!」

「うん」


大分落ち着いた俺たちは現状を思いだし、それぞれ忙しく携帯を操作した。

案の定、早香から先生から雫さんからメッセージが来ていた。

体調悪いから休むとの旨を伝えておく。


「よし、終わった。今日は休むって言っといたよ」

「おけ。先生以外には連絡終わったよ」


二人とも不安要素は無くなったので一安心した。


「そういえば修史、さっき、さりげなく私の胸の事、無い胸っていってなかった?」


ギクッ (やばい言ったかもしれない)


「ききき、気のせいだよ。なななにかの間違いにゃ!」

「動揺しすぎて語尾おかしくなってるけど!?」

「…ははは」


笑って誤魔化しておいた。


「胸とかは気にしないよ(たぶん)。俺は天音の全部が好きだからね。ははっ!」

「…っ!…ん、私も修史の全てが好きだよ!性格も見た目も」

「天音…!」


好きと言われて嬉しかった。

これからも仲良くやっていきたいと心から思った。


「…改めてよろしくな、天音」

「…ん、こちらこそ、よろしく修史」


再度お互いを恋人同士と認識し直したところで、自然とお互いの顔が近付いた。

お互いの瞳から目が放せなかった。


「天音…」

「修史…」


唇がそっと触れた。


「…っ…ん…!」


…俺は幸せでいっぱいになった。

しっかりとしているがそれでいて柔らかい天音の唇に、俺は時間を忘れてキスをした。

むさぼりつきたいのを我慢して、じっくりと長い時間、天音に愛を伝えていた。


早香も天音もこの世界で出会い、恋人になった大切な人。

二人の笑顔をいつまでも見ていられるように、俺は男として、松本修史としてこれからも頑張ろうと再び決意した。



天音さんとのエピソードはほぼ終わりです。

次話からは日常イベントです。


多少文章の修正いれるかもしれません。

この作品では若干、貧乳やらロリ要素やら妹要素やらが多くなってしまいますがご了承ください。


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