今日という日を忘れないらしい
早香と一緒にお風呂に入った俺は、当然のように早香の部屋へと向かった。
ここまできたなら、一緒に寝たいからね。
リビングで一人寝るのは嫌なのだよ!
「ど、どうぞ!散らかってますが……」
二階へ上がってすぐの部屋に案内されたので、ドアを開けた。
若干緊張気味の早香を横目に、内心恐る恐る部屋へ入った。
(おお!これが女の子……もとい早香の部屋か。おおっ、なんだか少しそわそわする。)
早香の部屋は片付いていて、とても綺麗だった。
活発女子の部屋だから少し散らかっているイメージを持っていたが、とてもシンプルで片付いていた。
ベット机やタンスなど、ほぼ必要最低限なものが大半だったが、所々にある三毛猫の置物や黒猫のクッションなどが可愛らしく、女の子らしさを感じた。
早香はどうやら俺と同じく猫好きみたいだ。
「……ちょっと緊張するなぁ。失礼します」
「う、うん。」
少し緊張しながらいい匂いのする部屋に入り、真ん中に置いてあるテーブルの横に座った。
女の子の部屋って何でいい匂いがするんだろうね?
女の子の部屋の香りの香水とかあったら売れそう……変な事を考えるのはやめておこう。
早香は水玉模様の掛け布団のベットに腰を下ろしている。
俺は近くに座りテーブルに肘を置きつつ、早香に話しかけた。
「……今日は色々あったね。本当に内容の濃い1日だった。」
「うん……ほんとだね。……私、修史くんに好きって言われた時、すっごく嬉しかったよ!ぜーったいに今日という日を忘れないからね!」
(忘れないというより忘れられないよ。今までの人生で一番幸せだったんだもん!)
俺の目を見て早香は少し照れくさそうに笑った。
俺も何だか照れくさいが、素直に嬉しいことを言ってくれたと思った。
付き合った記念日とか覚えてるカップルにイラつく事の多かった記憶のある俺だが、流石に今日の事は忘れないと思う。
忘れないというより、忘れることなど出来ないって言った方が正しいかな。
「ありがと。今日は二人の記念日になったね。来年もこんな風に二人で過ごしていたいね」
そう言うと早香はハッとしたかのように顔を上げ、滅茶苦茶嬉しそうな顔をした。
「うんっ!来年も……そ、その先も……一緒にいられたら嬉しいな」
照れながら早香はそう言った。
しかし、その後、自分の発言が少し重いと思ったのか訂正しようとした。
だが、俺は訂正などさせない。
早香が言い直す前に話始める。
「早香、ありがと。恋人同士になれたんだから辛いことがあっても支え合っていこうな。もし何か悩み事とか嫌な事とかあったら、いつでも相談に乗るからね。よろしくな早香」
支えあって話し合って、お互いの意見を聞き合って。
そうすればこれからも仲良く過ごしていけると思った。
「……えへへっ、ありがとねっ!よろしくね、修史くん!も、もちろん修史くんも、悩み事とかあったら私に相談してね!」
「もちのロンギヌスの槍だよ」
「えっ?」
「勿論だよ。ありがと」
少しスベってしまった。
それは良いとして、二人の間に「困ったり悩んだりしたら相談!」という約束が出来たのは良いことだろう。
「…でも修史くん隠し事上手そうだからなー」
「安心しな!早香に隠し事なんて(少ししか)しないから」
早香の力になれるように、恋人としてお互いを支えあえるように頑張りたいと思った。
隠し事も極力避けたいと思った。
まあ、この世界は一夫多妻制だから前の世界でいう浮気を堂々と出来るからいいよね。
男は浮気をするように脳の構造が出来ているみたいだし。
秘密にすることは、違う世界にいた事とかそういうことだけで大丈夫だろう。
そんな事を話していると、早香がベッドをポンポンと叩いて隣に来るように誘ってきた。
一緒に寝ようという事なので、俺も立ち上がりゆっくりと隣に座る。
下半身の一部に若干のエネルギーが……なんでもない。
「えへへっ!修史くんが隣にいるなんて夢みたいだね!…えいっ!」
早香はベットに座っている俺の膝に頭を乗せてきた。
ちょっと危なかった。
ナニがとは言えないが。
(ああ~!修史くんの膝枕だ~!夢にまでみた膝枕幸せ~!!)
俺が膝枕をする側になっている。
太ももにかかる程よい重さが心地よい。
俺はそんな可愛い早香の頭とおでこをゆっくりと撫でる。
「俺も夢みたいだよ。大好きな人とこうやって過ごせるって凄く幸せだね!」
「だ、大好きだなんて…。改めて言われると…な、何だか…すっごく嬉しいよっ!あ…っ……その…ありがとね!」
早香は顔を手のひらで隠して照れていた。
隠しきれていない口元がガッツリにやけていた。
ーー
その後、しばらくイチャイチャしながら雑談をしていたが、流石に眠くなったので寝ることにした。
時刻はいつの間にか丑三つ時になっていたしね。
丑三つ時……って何で丑三つ時って言うんだろう……。
まあ、眠いからどうでもいいか。
「ふぁーあ。…あくびが出た。眠いからそろそろ寝よっか早香。」
「う、うん。そうだね。私も眠いかも。」
「よいしょっと!」
あくびの顔を手で隠しつつ、早香の体をそっと起こした。
早香は起き上がるとベットの上を少しハイハイして、布団に潜り込んだ。
眠いかもと言っていた割にはとても機敏な動きをしていた。
うん?何だか目がギラギラしているような……。
「…ねぇ、修史くん…。は、入って!」
「…お、おう」
掛け布団をめくって隣に寝るように早香は誘導してきた。
いいんすか入って。
本当にいいんすか?
……ありがとうございます。
ドキッとしつつもお邪魔する。
横になると、ベッドの柔らかさや早香の優しい香りをより感じることが出来た。
好きな人といざ一緒に寝るとなると、心臓の鼓動が小動物並みに早くなった。
バサッ!
「えへへっ!修史くんの匂いだ。」
「は、早香!?」
ベッド入って色んな事を思っていたら、早香はいきなり俺に抱きつき、胸に顔を埋めてクンカクンカしてきた。
俺の片足にガッチリと早香の足が巻き付き、腕でも俺の胴体を強く抱き締めている。
くっ、耐えろ、俺の聖剣エクスカリバー!
早香は匂いフェチなのか知らないが、そのまましばらく動いてくれなかった。
胸元が早香の呼吸で少し熱くなった。
いきなりのことだったので、心臓が痛くなるくらいドキドキした。
「あっ!ご、ごめんね!」
しばらくして満足したのか、早香は俺から離れた。
離れたといってもピトッとくっついていることには変わりは無いけどね。
…少し苦しかったのは内緒だ。
「大丈夫大丈夫。……さて、さすがに遅いから寝よっか!……おやすみ、早香。」
「う、うん。おやすみなさい、修史くん」
これ以上起きていると、ノクターンノベルで見るような展開になってしまうので、理性に頑張ってもらい大人しく寝ることにした。
さりげなく、早香に腕枕してあげることをも忘れない。←やってみたかった
電気は消したので分からないが、多分喜んでいるだろう。
俺にくっついている早香の存在を感じながら目を瞑った。
俺は安心したのか眠さがピークになったのか、ドキドキしてたのがすぐに収まった。
ーー
5分くらい静かな時間が続き、俺の意識も夢の中に移ろうというときにスッと早香が動いたのがわかった。
チュッ!
(っ!!?)
かなり眠いので反応が遅れたが、ほっぺに柔らかくしっとりした感覚がしたので、いきなりキスされたのだと分かった。
いきなりの事にビクッとしてしまったが、とても嬉しかった。
「これからも、ずっとずっとよろしくね!大好きな修史くんっ!」
早香は耳元で小さく、そう俺にささやいてきた。
俺ももちろん早香に返事を返す。
「俺の方こそ…ずっとずっとよろしくな。大好きな早香」
そう最後に早香に小さく早香に言うと、暗闇で見えないが早香が笑顔を見せた気がした。
そして俺はすぐに眠さの限界が来たのか、糸が切れたように眠りに着いた。
今までで、生きてきた中で一番心地のよい、最高の睡眠だった。
(修史くん…大好きだよ。これからもずっと側にいてね!私はいつまでも修史くんを好きでいるからね!)
チュッ!
修史が寝た後、早香はもう一度修史にキスをした。
そして、幸せを噛みしめつつ、早香も眠りに着いた。
最高に幸せそうな表情で眠る二人の姿を、カーテンの隙間から入ってくる月明かりがそっと照らしていた。




