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悪魔令嬢  作者: 滝革患
23/27

ヤミュエールルート

私はリボンを取りに行かなかった。


しかし翌日、魔界の雰囲気がいつもと異なるのを感じ、屋敷の外へ出た。


そして、早朝から黒い魔界に相応しくない白き姿を目の当たりにする。

「これを届けに参りました」

天使の長であるヤミュエールは、供も連れずに単身でこちらに出向いたらしい。


どうして来たのか、なぜ私のいる屋敷がわかったのか、聞きたいことはある。


私はヤミュエルのことを一方的に気にかけている。

しかし、あの顔会わせの時点では彼から見れば私はその辺りにいた悪魔の小娘。


それなのに、リボンを渡すためにわざわざ出向くなんて、これは夢だろうか。


受け取りに行こう。

何かに足を取られ、前に倒れる―――――。


「危ない…!」

挿絵(By みてみん)

その前にヤミュエルがそれを受け止めてくれた。


「…大丈夫ですか?」

私は気恥ずかしくなって、ヤミュエルからはなれる。

すると心配そうな視線を向けられた。

いつも見ていた相手から逆にこちらが見られている。

なんて不思議なことだろう。


私は彼の手からリボンを受けとる。

「リボン、返しに来てくれてありがと…」

そう言って、私は屋敷に入ろうとヤミュエルに背を向けた。


「待ってください」

手をつかまれて、気がつけばヤミュエルの顔が近くに迫っていた。




さらりとした長い金の髪が、私の頬に触れる。


いったいどういうつもりかと、しばらく待ってみると、リボンを私の髪に結んだ。


「え…?」

甘いロマンスを期待していたが、まったくそんな気配はなく、拍子抜けしてしまう。


相手は天使だから仕方がない。

だがしかしなぜ彼がリボンを着けてくれたのか謎だ。



「こほん!!」

「お~い」

この咳払いと、聞き覚えのあるまのぬけた呼び声。

「なんの用?」

せっかくの二人きりの空間が、チェギスとロレウスのせいでぶち壊し。


「公共の場でイチャイチャするな」

「人前でイチャついて何が悪いの」

そんなこと気にするなんて人間の思考はわからない。

そもそもイチャつきたくてもつけていない。

相手は奥ゆかしい天使なのだから。


「お天使長サマはいいな~魔界に自由に来れて~暇なのか~?」

チェギスはそんなに天界に行きたいのかしら。


「はい…暇なんです」

「へービスティエは暇潰しの相手ってことかー」

セポルまで沸いた。


「私は彼女にリボンを届けに来ただけです」

ヤミュエルはチンピラ3名に絡まれても、苛立つそぶりを見せず。

淡い微笑みをたたえ、飛び去っていった。


暇潰しでもほんの少し会話が出来たことは、すごい進歩。



「天使のくせに色恋にうつつを抜かしおって」

「そういえば天使は皆神様を愛さないといけないんだよねーかわいそー」


いままで目を背けてきたけどヤミュエルは天使長だから一番神を愛しているに違いない。


魔王ならまだしも、悪魔の私が神に勝てるはずもない。


「相手は天使にとって敬うべき神、刷り込みの愛、というやつか~」


三人はたぶん天使が気に入らないからわざと、彼にネチネチと絡んだに違いない。

悪魔にとってはただの軽口だけど、天使長のヤミュエルは周囲にいるのも甘ちゃん天使だ。

だから悪意ある絡みに慣れていなそう。


――ヤミュエルは帰ったので、私は外にいる必要がない。

というわけで三人に絡まれる前に屋敷に戻る。


「まあ待てビスティエ」

「私は用なんかないわよ!!」





「天使は諦めて、悪魔で手を打てよ~」

あいかわらず語尾がイラつく話し方をするチェギス。


「はあ!?」

「身分違いの恋ならそこらにいる下位悪魔でも、禁断の恋ならお前のお兄様でもできるだろう?」


「なんでよりによってビスキュイお兄様!?行方不明なのに!!」

「そういう問題?」


挿絵(By みてみん)

今のいままで忘れていたけれど、私にはビスキュイという兄がいる。

何年か前に人間界に遊びに行ったきり、連絡がないのだ。


悪魔にとって年数など息をしている間に経過するので、細かくは覚えていないが。


「ビスティエ、お前は悪魔だろう…天使など悪魔をもっとも嫌う存在だぞ」

たしかにそうだ。

やはり、私がヤミュエルに恋なんておかしいのかもしれない。


いや本当に、悪魔が天使に恋なんて変だわ。

やっぱり私がヤミュエルに興味があるのは白くてフワフワな羽、別の世界の権力者という肩書きなんだから。

間違いなくきっとそう。



天界に来たはいいが、ヤミュエルの部下、フィッシエルに門前払いをくらってしまった。


「会わないと眠れない!!お願い!」

私はフィッシエルの服の襟をつかんで揺さぶる。


「ワガママは彼氏に言え!」

「なによ!私が下からお願いすることなんて滅多にないんだから!!」


「上からのお願とはなんだ」

「決まってるでしょ、命令よ!!」

相手が魔王か公爵でない限り、私は怯まない。


「ビスティエ=コンビフス…」

「ややや!!ヤミュエル!」

まさか後ろから現れるなんて、不意打ちすぎる。


「ここは天界ですよ」

「わかってるわ」

「早く帰ったほうが」

前は言われなかったのに、私がコンビフス家(悪魔侯爵)の娘だと知ったからなの?


「そもそも悪魔の小娘が天使長に何の用があると?」

フィッシエルが眼鏡を指でおし上げる。


「…眠れないからよ」

「は?」

「眠ろうとしてもヤミュエルの顔が浮かんで眠れないのよおおお!!」

私はたまらなくなって逃げた。

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