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悪魔令嬢  作者: 滝革患
21/27

アルセルend

「で、アルセルたちはここでなにしているの?退屈?」

まさかずっと小屋でじっとしているなんてことは…。


「基本的に自由だよ、その辺りを歩いても楽しくないから」

この周りは寂れた白い建物ばかり、たしかにつまらなそうだ。


「たまに遠出するけど」」

「ふーん、それでアルセルは毎回違う女とデートしてるんでしょ」

アルセルをチラチラ見ている堕天使の女達から視線を感じる。

(何みてんのよ!アンタらは神を愛してるんだから、神の肖像でも見てなさいよ!!)


天使は神以外を愛してはいけないらしい。

彼等が堕天使になったのは新しい神のせいと聞くが、別の対象に恋をしたらそれは堕天使になって当然ではないか。

と言っても悪魔の私には関係のないことだ。


「あ、そうだ今日はオレと白の森に行かない?」

「ハーレム達はほっといていいの?」

それとも皆で一緒に行くのだろうか。

だったら私のほうがアルセルとのデートを期待しているみたいで、嫌だ。


「君と二人で行きたいんだ

いいだろビスティエ」

「私はいいけど」

滅茶苦茶睨まれている。



白の森なんていうから白い葉を想像していたが、天界にある植物と同様に緑色だ。


「やっぱり気に入らない?」

「魔界とは趣味が違うと思っていたのよ」

魔界は黒ばかりで、色味で言えば天界に敵わない。


「人間界にも天界と同じような植物があるよ」

「ふーん、人間界はどんなところ?」さすがに見に行くことはしないが、天界や魔界とどう違うのか、気になる。


「とても、綺麗で醜いところだった」

「綺麗なのに醜いって、どういうこと?」

アルセルは遠い目をした。


「オレは生まれたときは天使じゃなかったんだ」


アルセルは自身の過去を語る。

人であったが、創造神カミュレットの導きによって天使と成ったことを。

天界へ迎え入れられた人間は天使へ変わり、老いや死とは遠い存在へと変わる。


彼は人であったとき、ある少女に淡い感情を抱いていたが、天使と成り、人間の持つ感情と言う概念は無くなる。


アルセルは人であること、家族、友人、自分の心さえも人間の住む地上に捨て、天へと登りつめたのだと、まるで下にある人間界を眺めるかのように、うつむいていた。


人間が天使になれることは知らなかった。

私はアルセルに何も言えなかった。

アルセルは別に悲しんでいるわけではないだろう。

人間が天使に選ばれたことを凄いと言うべきだろうか。


アルセルは人間だったときに好きだった子が、今でも忘れられないのだろう。

慰めるでもなく、同情とも違うような、とにかく言いたいことがある。


「今からでも人間界に行けば?」

「え?」

「人間だし、その子が生きてるわけないけど、墓くらい見てきたら」

私がそういうと、アルセルは笑った。


「今から一緒に行こうか」

「ちょっとなんで!?」


アルセルは私の手を引いて、人間界のゲートへ向かった。


私はこの先にある未知の領域に、心を踊らせるのだった。

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