アルセルend
「で、アルセルたちはここでなにしているの?退屈?」
まさかずっと小屋でじっとしているなんてことは…。
「基本的に自由だよ、その辺りを歩いても楽しくないから」
この周りは寂れた白い建物ばかり、たしかにつまらなそうだ。
「たまに遠出するけど」」
「ふーん、それでアルセルは毎回違う女とデートしてるんでしょ」
アルセルをチラチラ見ている堕天使の女達から視線を感じる。
(何みてんのよ!アンタらは神を愛してるんだから、神の肖像でも見てなさいよ!!)
天使は神以外を愛してはいけないらしい。
彼等が堕天使になったのは新しい神のせいと聞くが、別の対象に恋をしたらそれは堕天使になって当然ではないか。
と言っても悪魔の私には関係のないことだ。
「あ、そうだ今日はオレと白の森に行かない?」
「ハーレム達はほっといていいの?」
それとも皆で一緒に行くのだろうか。
だったら私のほうがアルセルとのデートを期待しているみたいで、嫌だ。
「君と二人で行きたいんだ
いいだろビスティエ」
「私はいいけど」
滅茶苦茶睨まれている。
白の森なんていうから白い葉を想像していたが、天界にある植物と同様に緑色だ。
「やっぱり気に入らない?」
「魔界とは趣味が違うと思っていたのよ」
魔界は黒ばかりで、色味で言えば天界に敵わない。
「人間界にも天界と同じような植物があるよ」
「ふーん、人間界はどんなところ?」さすがに見に行くことはしないが、天界や魔界とどう違うのか、気になる。
「とても、綺麗で醜いところだった」
「綺麗なのに醜いって、どういうこと?」
アルセルは遠い目をした。
「オレは生まれたときは天使じゃなかったんだ」
アルセルは自身の過去を語る。
人であったが、創造神カミュレットの導きによって天使と成ったことを。
天界へ迎え入れられた人間は天使へ変わり、老いや死とは遠い存在へと変わる。
彼は人であったとき、ある少女に淡い感情を抱いていたが、天使と成り、人間の持つ感情と言う概念は無くなる。
アルセルは人であること、家族、友人、自分の心さえも人間の住む地上に捨て、天へと登りつめたのだと、まるで下にある人間界を眺めるかのように、うつむいていた。
人間が天使になれることは知らなかった。
私はアルセルに何も言えなかった。
アルセルは別に悲しんでいるわけではないだろう。
人間が天使に選ばれたことを凄いと言うべきだろうか。
アルセルは人間だったときに好きだった子が、今でも忘れられないのだろう。
慰めるでもなく、同情とも違うような、とにかく言いたいことがある。
「今からでも人間界に行けば?」
「え?」
「人間だし、その子が生きてるわけないけど、墓くらい見てきたら」
私がそういうと、アルセルは笑った。
「今から一緒に行こうか」
「ちょっとなんで!?」
アルセルは私の手を引いて、人間界のゲートへ向かった。
私はこの先にある未知の領域に、心を踊らせるのだった。




