チェギスend
パーティー会場は、薄紫のライトで照らされて、いかにも魔界らしい雰囲気をかもしだしている。
しかしライトのせいでせっかくの美肌が紫になっているのが残念だ。
そう思っていると、すぐにライトが消え、通常の灯りに切り替わった。
シャンデリアは黒いのに、灯りは黒くないのが不思議である。
「キャー!チェギス様~」
「わたくしと踊って~」
チェギスが会場に入ると年増達はあいつにぞろぞろ群がった。
別に私はあいつと踊りたくて来たわけではない。あいつが囲まれているのも、予想通りでつまらない。
「はいはい皆、順番~」
アイツなに浮かれちゃってんのよ。超ムカつく。
「おや、コンビフス嬢ではありませんか」帰ろうとしていたら、見知った男に遭遇した。
「貴方は、レウス=フォルゾイ?」
本ばかり読んで外に出ないタイプだと思っていたのに、パーティーに来ているなんて意外だ。
「数百年生きて2、3程度ですが、退屈だったので」
「へー」
「君こそ、屋敷の外を滅多に出ないと聞きますが、今日はどうしてここに?」
「なんとなく…」
ふとチェギスは何処だろうと気になり、ちらりと、探してみる。
すぐに見つかったがやはり女達に囲まれている。
まるで囲んでいる女達はドーナツのようだ。
きっとダンスの曲がかかるまで、ずっとあのままなんだろう。
「なるほど…よかったら僕と踊りますか?」
「いいわ…他の女たちの視線が怖いから」
背景にいる女の中には同格の侯爵家もいるようで、波風を立てたくない。
レウスの誘いを流して、一人で彷徨き、遠目でチェギスを観察。
位置が変わっただけで、女のドーナツ状態は変わらない。
「あ、そこのかわいいお嬢さんオレと踊ろーよ」
「いやおれと!」
そろそろダンスが始まるようで、あいつ程じゃないけど、男達がこぞって集まってきた。
「結構よ」
「いーじゃんー」
私は滅多に外出しないのでおそらくコイツ等は侯爵家とは気がついていないだろう。
あまりにしつこく食い下がられる。
「だから踊ないって…」
「彼女は俺と踊るんだ」
いきなり誰かが私の手を引いて、曲が始まると同時にダンスを始めた。
「チェギス!?」
ドーナツはどうしたのだろう。
「来るなら言ってくれればいいのにな~」
取り澄ましていればそれなりなのに台無し。
「別にあんたと踊るために来たわけじゃないから!」
チェギスがじっと見てくるので視線をそらした。
「じゃあ今日はどうして来たんだ」
「…ドーナツを見に来たのよ!」
「ドーナツ?」
「どうせ私が終わったらあの子達と踊るんでしょ」
私は彼女等のようなチェギスの大勢の中の一人になりたくはない。
「踊らない、だからずっとお前が相手してくれ」
「まったく!!今日だけよ!」
明日からはただの幼馴染み、なんだから――――。




