フィッシエルルート
リボンを取りに戻ると、ヤミュエルの変わりにフィッシエルがいた。
「…天使長ヤミュエールより頼まれた」
「ありがと」
「そのリボンは高品質の素材を使ってあるな」
フィッシエルは何気なくそれを見ただけで判断できたようだ。
否、誰から見ても、ビスティエが普段から身に付けているのが高いものと解るものなのだろう。
「始めに管理の男といた時には、お前はただの下級悪魔と判断していた」
「えっ私フツーに下級悪魔よ~」
正体が一般の悪魔ではなく、貴族だとバレてしまったら、フィッシエルのような陰湿眼鏡は確実に通達をする。
ビスティエはそう考えて、焦りから必死になる。
「そういう事にしておいてやる…ただし、またここに」
「わかったわよ来ないから黙ってて」
「…何を勘違いしているんだ
こき使ってやるから手伝いに来い下級悪魔」
他人から下級と言われると、腹が立つ。
ビスティエは納得いかない顔でフィッシエルをじっと見た。
「今日は帰れ」
「いわれなくても帰るわ!」
ビスティエはフィッシエルがなぜそんなことを言い出したのか、理解に苦しむ。
ただ、天界に来られる口実が出来て、なんとも言えなかったのだ。
私は天界に来て、さっそくフィッシエルの手伝いをすることになった。
手伝いを終わらせたらヤミュエルに会えるだろうか。
「ではこれに手をかざして、力を放出しろ」
フィッシエルは部屋の中心、天井と床を貫く円柱の鉄のカタマリを差した。
これはなんなのか、気になるがとりあえず言われた通りに、手をかざした。
なんらかの装置に力を込めてみると、少しフワフワとした感覚がくる。
力を抜かれているのに、疲れはしないのが不思議。
「案外やれば出来るものじゃないか」
フィッシエルが、屈託のない顔で笑った。
「これに魔力を込めてどうするのよ」
「しるか」
「なんで知らないの!?眼鏡のクセに馬鹿なの!?」
「なんだと!?」
フィッシエルは怒って部屋を出た。
私は装置から離れて室内の椅子に腰かけた。
しばらくしてフィッシエルが部屋に戻ってくる。
「あんた!人に手伝わせておいてキレるなんてどういう了見よ!!」
「うるさいな!僕に指図するな!」
暫く言い争いをしていたところ、背後から誰がの気配がする事に気がついた。
振り向くと、そこにはヤミュエルがいた。
「なぜここに…」
私は気がついてしまった。
フィッシエルは上司のヤミュエルに許可なしで私を呼んだんだ。
私はてっきりヤミュエルが指示を出した思っていた。
どうして規則にうるさそうなアイツが――――
「すみません天使長、報告を怠りました」
「この装置は…」
ヤミュエルはそれは特に気にしていないようで、訝しげに目の前の機械をみている。
「悪魔から魔力を抜き、天使に変える装置です」
「え!?」
(私、天使にされる所だったの!?)
「ちょっとそれどういうこと!?」
「お前と会った刻、装置を試せそうな丁度良い下級悪魔が見つかったと思った」
「誰がこんな装置を、造れと言ったフィッシエル!」
「自分の意思ですよ」
フィッシエルは、独断で悪魔を天使に変える装置を造った。
それを試そうと、私に手伝いをさせた。
「勘違いするな、初めから天使長の申し出とは一言も言っていない、そしてお前は何も聞かずに自分から協力をしただけだろう」
確かにそうだが、悪魔を騙す天使なんて最低。




